人工衛星用打ち上げロケットと弾道ミサイルの関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/29 09:03 UTC 版)
「光明星1号」の記事における「人工衛星用打ち上げロケットと弾道ミサイルの関係」の解説
人工衛星打ち上げ用ロケットと弾道ミサイルは技術的に表裏一体なので軍事転用が比較的容易である。実際、米国のNASAの「タイタン」、「アトラス」、「デルタロケット(もとはソー・ミサイル)」、中国の「長征(もとは東風5型ミサイル)」など、各国で使われている人工衛星打ち上げ用をはじめとした宇宙ロケットは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)等を基に開発されており、逆に冷戦終結後は、ウクライナの「ドニエプル(R-36Mを転用)」や「スタールト(トーポリを転用)」などのように弾道ミサイルを人工衛星打ち上げ用ロケットに転用している例もある。かつての米ソの苛烈な宇宙開発競争は、宇宙ロケット技術が核兵器を敵国へと運ぶ弾道ミサイルにそのまま転用できる事が大きく作用していた。逆に、日本は純粋に宇宙開発目的のみでロケットを開発した稀有な国とも言える。 核兵器を搭載した弾道ミサイルの開発でボトルネックとなるのは、起爆装置および再突入体の部分である。衛星軌道に乗らなかったのは再突入実験をしたためと考えることも出来るが、再突入体を北朝鮮が回収したような形跡もなくその可能性は低い。 また、たとえ今回のテポドン1号の発射が人工衛星の打ち上げを目的としていて、ロケットが高々度を通過するため国際慣行上日本への領空侵犯・主権侵害とは言えなくても、日本上空を飛翔することで日本国内にロケットの一部が落下して被害を及ぼす可能性があり、日本国民の生命と財産を脅かす行為であった事に変わりは無い。北朝鮮側の説明では、日本側の陸地を極力避けるために、理想的な打ち上げ方向の真東の方位90度から、津軽海峡上空を通過するように発射方向を方位86度に修正するとともに、2段目が日本の領海付近に落下しないよう低めの高度を飛翔する軌道を設定したとしている。しかし、例えばイスラエルは、対立する東方にあるアラブ諸国にロケットの一部が落下して紛争の火種になるのを防ぐため、地球の自転に反して西方の海向きに人工衛星打ち上げ用ロケットを打ち上げている。敵国に対してもこれだけの配慮をしている国があるのに、北朝鮮は日本に対して事前に一切の警告も無く打ち上げを行っており、最低限の配慮すら払っていないという意見がある。これに対して衛星打ち上げの事前通告は義務ではないとして北朝鮮への批判はナンセンスとする意見もある。
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