二笑亭の特色
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/15 05:25 UTC 版)
この建物は、閉鎖的で特異な外観を持ち、近所では「牢」「お化け屋敷」などと呼ばれていた。建物に興味を持った精神科医式場隆三郎は取壊し前に谷口吉郎と共に調査を行い、多数の写真を収録した「二笑亭綺譚」(1938年、二笑亭に関するほぼ唯一の資料)としてまとめた。 式場によれば次のような数々の奇妙な特色を持っている。 敷地95.7坪に対し、建坪は約67坪(尺や間といった建物の単位に従っていない) 木造2階建てにもかかわらず、物置と炊事場は鉄骨造 正面二階の位置に配されたはめ殺しの大きなガラス窓三枚(五角形を組み合わせた形状) 入り口に置かれた鉄製の半円形の雨よけ 裏門に、出入りの邪魔になるように置かれた菱形の枠(◇の形) 鉄棒をずらりと立てて作られた塀 ガラス入りの節穴窓を空けた室内の壁 和式洋式の風呂を隣に並べた和洋合体風呂 屋根をこえてただ単に空に伸びたはしご 傾いた違い棚 土蔵の中の床から天井に伸びる昇れないはしご 奥行きが異常に浅く使いようのない押入(家族の証言によれば、元は普通の押入だった。関東大震災後の区画整理計画を渡辺が拒み続け、建物の側面が強制取り壊しとなったことによる) 中庭の離れに置かれ、扉が下半分しかない便所 左右とも口を閉じた狛犬 虫よけと称して黒砂糖と除虫菊を練りこんだ壁 など 自らも建築道楽家である水木しげるは、「東西奇ッ怪紳士録」の中で「二笑亭主人」と題してこの建築を扱っている。 藤森照信は二笑亭の建築をダダイスムのマヴォやポストモダン建築の石井和紘などと比較して論じている。さらに、全体構造のアシンメトリー化と、逆に本来アシンメトリーな部分をシンメトリーとしている(上記の狛犬など)点を指摘している。 式場隆三郎の子息である式場隆成が「定本 二笑亭綺譚」に寄稿した文章によると、渡辺金蔵は茶道(鎮信流)の造詣が深く、二笑亭の構成にも茶道趣味の影響が見られるという。
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