乾式燃料貯蔵設備
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「福島第一原子力発電所における放射性廃棄物の処理と管理」の記事における「乾式燃料貯蔵設備」の解説
増設貯蔵施設として、共用プールと同時期に乾式燃料貯蔵設備(乾式キャスク貯蔵施設とも)が建設された。1991~1992年度にかけ、電力共通研究として『使用済燃料の乾式キャスク貯蔵の安全性に関する研究』を実施しており、東京電力はこの研究結果を元に施設の設計・建設を進めた。乾式燃料貯蔵設備は、4号機と6号機の使用済み燃料貯蔵に割り当てされた。使用済容器はプラント規模の違いを考慮して下記の2種 中型容器:使用済燃料37体を貯蔵。4号機用に4基設置し、合計で炉心装荷燃料の約28%を保管可能。 大型容器:使用済燃料52体を貯蔵。6号機用に5基設置し、合計で炉心装荷燃料の約35%を保管可能。 が選定された。使用済み燃料は8×8型を想定し、タイプを問わず燃料交換時に炉心から外れて4年以上冷却期間を経たものが貯蔵対象とされている。4年間の冷却期間を経ることで、燃焼度が40000MWD/tu以下となっていることが前提である。 乾式キャスク自体は燃料輸送用のものが既に実用されていたが、この施設で使用する容器は長期保管用であるため、輸送用に比較し、次のような相違点がある。 蓋を2重構造化し、ガスケットは輸送用容器で使用されているゴム製から金属製に変更した 2重蓋の間にヘリウムガスを充填加圧し、金属ガスケットが劣化等により漏洩を生じても容器内のガスが外部に漏出することを防止している 容器内も熱伝導性が良く不活性なヘリウムを充填している。 容器本体の構成は次のようになっている。 胴板、底板:鍛造炭素鋼製(耐圧部材、ガンマ線遮蔽の役割を果たす) 一次蓋:鍛造炭素鋼製(ガンマ線遮蔽、胴板・底板に対応する部材) 二次蓋:ステンレス鋼製。中性子遮蔽材を内蔵 中性子遮蔽材:レジン製 伝熱プレート、外筒 容器内部はバスケットと呼ばれるボロン添加アルミニウム合金で格子状に仕切られ、各使用済燃料を所定位置に収納する。円筒状の容器は横置きして保管するため、トラニオンと呼ばれる円筒支持部材で固定され、キャスク支持架台と一体化している。容器については耐震性の面からも検討が加えられ、原子炉建屋の使用済み燃料プール同様、Asクラスの耐震性を有する。製造は神戸製鋼、三井造船にて実施した。 キャスク保管建屋は新設せず、使用済み燃料輸送容器を保管していた建屋を改造した。建屋は大きく保管棟と検査棟に分かれ、検査棟には天井クレーンが備えられている。保管中は貯蔵容器監視装置が放射線、圧力、温度等を監視している。保管建屋は容器自体がAsクラスの耐震性を持ち、建屋内で開封を行わないことからCクラスとして設計されている。ただし、S2地震動に対して安全上支障ないことは確認している。 使用済燃料の初装荷作業は6号機分が1995年9月~11月、12月~1996年1月に4号機分を実施した。装荷作業は各原子炉建屋内で、IAEAの監視下での実施し、最後にIAEAの封印がなされた。
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