主観評価と客観評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/03/10 02:28 UTC 版)
音質を比較・管理するためには定量化する必要がある。定量化の方法として主観評価と客観評価がある。 音質を人間が実際に音を聞いて判断する方法が主観評価(subjective assessment)で、人間が感じる品質を聴覚心理実験によって直接測定する。音質は本来主観的なものであり 、 人間が直接判断するという点で音質評価の基本となる評価法である 。 主観評価法として、複数の評価者が品質を「非常に良い」~「非常に悪い」の5段階で評価し平均を求める平均オピニオン評点(mean opinion score、MOS)がよく使われる。 主観評価は品質を直接測定できるが、試験環境の違いや評価に使用する音源(音声、音楽)、評価者によって評価がばらつく欠点がある。 試験環境での周囲騒音や室内反響条件、周波数レスポンス、音圧レベルなどは同じ条件にする必要があり、例えば音圧レベルを大きくしただけでも人間の耳の特性(等ラウドネス曲線)のため低音が豊かに感じ、全く同じ機器でも評価が上がることがある。 また、評価対象になる音の組み合わせや順序にも注意する必要があり、同じ音であっても評価試験で使用する他の音の質に悪いものが多ければ評価が高くなり、逆に他の音の質が全体的に高ければ評価は低くなる。 音質の評価は使用する音の内容によっても影響を受け、評価に使用する音楽のジャンル(クラシック、ロック、ポップスなど)によって同じ環境でも評価が異なることはよく知られている。 主観評価を適切に行うためには、以下のことに留意する必要がある。 多数の評価者を用意しばらつきの影響を減らす。(国際的な品質評価試験では通常24名以上の評価者が必要) 必要に応じ、ばらつきを少なくするために評価者のトレーニングを行ったり、経験者や専門家(音響技術者など)が評価を行う。 専用の評価設備を使い、周囲騒音、室内反響条件、周波数レスポンス、音圧レベル、リスニングポジションなどを統一する。 評価に使用する音源(音声、音楽)を統一する。 主観評価は、十分な評価者数と専用の評価設備を用意することで人間の聴覚特性を反映した信頼性の高い評価結果を得ることができるが、多大な労力・時間と経費が必要になるという問題点がある。 客観評価(objective assessment)は、音のさまざまな物理的特徴から主観評価値を推定する手法で、入力となる信号から信号処理技術を用いて人間の聴感特性を考慮した特徴パラメータを抽出し、特定のアルゴリズムを用いて評価値を求める。客観評価は以下のような特徴を持つ。 多くの評価者や専用の評価設備が不要になり、時間と経費が削減できる。 同じアルゴリズムと音源(音声、音楽)を使用すれば必ず同じ評価値を得られ、また異なる場所での評価値との比較が可能。 どの物理的特徴を用いどのようなアルゴリズムで判断するかは、評価対象としたい品質(明瞭度、音の自然さ、聴感上の雑音や歪みなど)に依存するため、客観評価の方法は対象となるアプリケーションごとに異なる。 以下に主観評価と客観評価の特徴をまとめる。 主観評価客観評価総合性・汎用性 ○ × コスト × ○ 再現性 × ○ 自動化 × ○
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