与圧装置・空調装置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/12 20:56 UTC 版)
気圧が低い高空を飛行する機体では、乗員乗客に快適で安全な環境を提供するために人員が乗る機内の空気の圧力を外気より高めに維持する必要がある。このため、機体全体が圧力に耐えられる構造となっており、搭乗口にはシールが、機体の継ぎ目にはシーリングコンパウンドが塗られている。この与圧は高度12,000mで周囲が0.19気圧でも機内は高度2,400m程度や1,500m程度に相当する気圧に保たれる。与圧と同時に内部の空気は少しずつ入れ替えられ、操縦室は2-3分で、客室は3-4分ですべてが入れ替わる量が機外から取り込まれて排出される。機外の空気は高度10,000mではマイナス40-50℃と冷たいため、ジェットエンジンの圧縮機からの抽気を流量調節弁で加減しながら空気調和装置とも呼ばれるエアサイクル空調装置に導き、内部のタービンを回すことや低圧段からの抽気や外気と混合することで温度を下げてから除湿を行い、ダクトで機内各部の天井部から送風している。排気は床の左右からダクトで集められ、与圧調整のために流量調節弁(アウトフローバルブ)で加減しながら機外に放出されるが、1980年代からはエアフィルタを通した機内の再循環空気を送風量の1/3-1/2程度混ぜることでエンジン抽気で失われるエネルギー量を減らしている。また、内圧より外圧が高くなると機体の強度が低下するので、与圧装置の故障時でも安全のためにセーフティバルブとダンプバルブで常に内外の圧力差が逆転しないようになっている。21世紀現在では、空気圧供給、与圧空気系統、防除氷系統をまとめてECS(環境制御系統)と呼ばれる。バイパス比の高いジェットエンジンでは抽気による損失が大きくなるため、新型旅客機では抽気を用いずに与圧用の電動の空気圧縮機を持つものもある。また、搭載している電子装置類の冷却も空調装置の重要な仕事である。
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