下篇
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 00:44 UTC 版)
下篇は、日本の問題について論じ、「東亜のモンロー主義」「日本帝国と支那分割」「日本と支那分割の方略」「日本と支那分割の究竟的利害」「日本帝国百年後の運命」「日本の教育」「日本の産業」「日本の陸海軍」「日本の外交」「日本の憲政」「世道人心の一大危機」「日本帝国民の覚悟」の各章にわたって、日本への提言を語っている。 斗南は、西欧列強による支那分割は対岸の火事ではなく「我が日本将来厄運の始なり、百害あって一利なし」とし、支那分割の危機に際して日本が西欧側に付いてそのお零れに与ろうが与るまいがどちらも日本に不利であるとしている。そして、それに対処すべき方策は唯一日本国力の充実これあるのみだと提言している。 たとい我が日本甘んじて白人の牛後となり、二三省の地を割き二三万方里の土地四五千万の人民を得るも、何ぞ黄人の衰滅に補あらん。又何ぞ白人の横行を防げん。他年煢々(けいけい)孤立、五州の内を環顧するに一の同種の国なく一の唇歯輔車倚より相扶くる者なく、徒らに目前区々の小利を貪りて千年不滅の醜名を流さば、豈(あに)大東男児無前の羞に非ずや。 — 中島端『支那分割の運命』 ここには、東亜の禍福、すなわち日本の将来に大いに関わる「支那分割の運命」において急務となるのは、我が国の政治の刷新や自主的外交の展開であるという以前からの斗南の持論(著書『日本外交史』)と同様の国権思想が述べられている。 一旦分割の禍ありて我も亦た白人の列に立たば彼の我を怨み我を憎むこと長く消ゆる期なく、最後黄人の相食み相傷ふは終にやむ時なけん。(中略)もし我をして絶大の果敢、絶大の力量、絶大の抱負あらしめば、我は進んで支那民族分割の運命を挽回せんのみ。四万々生霊を水火塗炭の中に救はんのみ。蓋(けだ)し大和民族の天職は殆ど之より始まらんか。(中略)もし我に後来白人を東亜より駆逐せんの絶大理想あり。(中略)余重ねて断じて曰ふ、後来支那を統一せんの絶大理想あり。 — 中島端『支那分割の運命』 この時代には、明治時代から培われていた日本人のアジア認識や、白人列強への対立意識が徐々に高まり、当時の日本では中国蔑視と同時に、欧米の黄禍論に対抗する「白禍」論(アングロサクソン中心の利己的支配への反発)的な潮流もあり、アジアの連帯意識も生まれていた
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