ヴァリオLFとは? わかりやすく解説

ヴァリオLF

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/22 02:56 UTC 版)

ヴァリオLF
VarioLF
ヴァリオLFR
VarioLFR
ヴァリオLFR.E(チェコブルノ
基本情報
製造所 アライアンスTW
製造年 2005年 -
主要諸元
軸配置 Bo'Bo'
軌間 1,000 mm1,435 mm1,524 mm
電気方式 直流600 V
架空電車線方式
最高速度 65.0 km/h
車両定員 着席33人
立席58人(乗車密度4人/m2時)
最大149人(乗車密度8人/m2時)
車両重量 21.2 t
全長 16,200 mm(連結器含)
車体長 15,100 mm
全幅 2,480 mm
全高 3,645 mm(集電装置含)
車体高 3,185 mm
床面高さ 860 mm(高床部分)
350 mm(低床部分)
(低床率36 %)
車輪径 700 mm
固定軸距 1,900 mm
台車中心間距離 7,500 mm
軸重 7.95 t
主電動機 誘導電動機、直流電動機
主電動機出力 90 kw
出力 360 kw
制御方式 VVVFインバータ制御電機子チョッパ制御
制動装置 回生ブレーキディスクブレーキ電磁吸着ブレーキ
備考 主要数値は[1][2][3]に基づく。
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ヴァリオLF(VarioLF)は、チェコ企業グループであるアライアンスTWが製造する部分低床式路面電車車両。チェコやスロバキアを始めとした各国へ向けて製造されている。この項目では、旧型車両から一部機器を流用して製造されるヴァリオLFR(VarioLFR)についても解説する[1][2][4]

概要

アライアンスTWは、チェコに本社を置く3つの企業(プラゴイメックス、クルノフ修理機械工場、VKVプラハ)によって構成される、路面電車の製造・改造を手掛ける企業グループである。設立当初はチェコスロバキア時代に導入された路面電車車両であるタトラカーの機器更新および台車や機器を流用した車両の製造を行っていたが、2004年に製造認可が下りて以降は台車も含め完全な新造車両の製造を開始した他、後年には電気機器や車体構造をこの車両に合わせた機器流用車両の製造も実施されるようになった。これがヴァリオLF(新造車両)およびヴァリオLFR(機器流用車両)である[1][5][6]

1両での運行が可能な片運転台の路面電車車両(単車)で、連結器が設置されているため、最大2両編成(付随車連結時は最大3両編成)での運用が可能である。全溶接構造を取り入れた軽量鋼製の車体は中央部が床上高さ350 mmの低床構造になっており、車内全体における36 %に該当する。この低床部分にある乗降扉は両開き式のプラグドアである一方、車体両端の高床部分(床上高さ850 mm)にも2枚引戸式の扉が存在する。座席はクロスシートで、低床部分には車椅子スペースが1箇所設置されている[1]。前面はチェコのインダストリアルデザイナーであるフランティシェク・ペリカーンチェコ語版が手掛けたデザインが用いられている[1][2][7]

台車はクルノフ修理機械工場が製造するボギー台車の「コンフォート(KOMFORT)」が使用されており、軸ばねにはゴム結合金属ばね(MEGI)が、枕ばねには衝撃吸収材を備えたコイルばねが用いられる。この台車には主電動機が2基搭載されており、自在継手ハイポイドギアを介して車軸に動力が伝わる構造となっている(垂直カルダン駆動方式)。また、コンフォートは従来のタトラカーの車軸を始めとする台車の部品を流用する事も可能な構造であり、ヴァリオLFRの製造時には旧型車両であるタトラT3の車軸などの部品が再利用されている。車体が低床構造である事から、制御装置など主要な電気機器については屋根上に設置されている[8][1][2][9]

車種

電気機器や製造工程の違いにより、ヴァリオLFおよびヴァリオLFRには以下の4種類が存在する[8][10][11][12][13]

  • ヴァリオLF.E(VarioLF.E) - 新造車。電気機器はセゲレック英語版(Cegelec)製の「TVユーロパルス(TV Europulse)」(誘導電動機VVVFインバータ制御装置)を使用。
  • ヴァリオLF.S(VarioLF.S) - 新造車。電気機器はシュコダ電気製のもの(直流電動機、電機子チョッパ制御装置)を使用。
  • ヴァリオLFR.E(VarioLFR.E) - タトラT3からの機器流用車。電気機器は「TVユーロパルス」を使用。
  • ヴァリオLFR.S(VarioLFR.S) - タトラT3からの機器流用車。電気機器はシュコダ電気製のものを使用。

導入都市

2020年現在、ヴァリオLFの導入が実施されている都市は以下の通りである[4][14]

ヴァリオLF・ヴァリオLFR 導入都市一覧
形式 導入国 都市 導入車両数 備考・参考
ヴァリオLF.E チェコ オロモウツ
(オロモウツ市電)
3両 [15][16]
ヴァリオLF.S ウズベキスタン タシュケント
(タシュケント市電)
20両 2016年の路線廃止後はサマルカンド市電へ全車譲渡[17][18]
ヴァリオLFR.E チェコ オストラヴァ
(オストラヴァ市電)
47両 [19]
ブルノ
(ブルノ市電)
32両 [20]
オロモウツ
(オロモウツ市電)
7両 [15]
ロシア連邦 モスクワ
(モスクワ市電)
1両 [21]
ヴァリオLFR.S チェコ オストラヴァ
(オストラヴァ市電)
16両 [19]
プルゼニ
(プルゼニ市電)
26両 [22]
オロモウツ
(オロモウツ市電)
10両 [15]
モスト
リトヴィーノフチェコ語版
(モスト・リトヴィーノフ市電)
2両 [23]
スロバキア コシツェ
(コシツェ市電)
1両 [24]

ギャラリー

関連形式

  • タトラT3R.PLFタトラT3R.SLF - タトラT3の機器流用形式。ヴァリオLFやヴァリオLFRと同型の部分超低床車体である一方、前面形状はT3と同型のデザインが使用されている。ヴァリオLFの車種の1つと見做される場合もある[1][2]
  • ヴァリオLF プラス - 台車を「コンフォート・プラス(KOMFORT plus)」に変更し、高床部分の床上高さをヴァリオLFから下げた改良型車両[25]

脚注

注釈

出典

  1. ^ a b c d e f g Tramvaj VarioLF”. Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
  2. ^ a b c d e TRAM VARIO” (英語). Krnovské opravny a strojírny. 2020年3月4日閲覧。
  3. ^ Vario LF2” (PDF). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
  4. ^ a b References” (英語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
  5. ^ チームで地位の強化を図るチェコのトラムメーカー」『海外鉄道技術情報 (World Railway Technology)』第10巻第1号、鉄道総合技術研究所、2019年1月、8頁、2020年3月4日閲覧 
  6. ^ Company Profile” (英語). Krnovské opravny a strojírny. 2020年3月4日閲覧。
  7. ^ Libor Hinčica (2019年7月11日). “JEDINOU ČESKOU TRAMVAJ T3R.EV S DESIGNEM „PELIKÁN“ ČEKÁ PŘESTAVBA” (チェコ語). Československý Dopravák. 2020年3月4日閲覧。
  8. ^ a b Zpráva o výsledcích šetření příčin a okolností vzniku mimořádné události (PDF) (Report). Drážní inspekce. 1 November 2012. p. 29. 2020年3月4日閲覧
  9. ^ BOGIES” (英語). Krnovské opravny a strojírny. 2020年3月4日閲覧。
  10. ^ Pragoimex VarioLF”. VKV Praha s.r.o.. 2020年3月4日閲覧。
  11. ^ В чешском Оломоуце решили модернизировать старый трамвай «Tatra T3»”. Пассажирский Транспорт (2019年5月12日). 2020年3月4日閲覧。
  12. ^ Pragoimex VarioLF” (スロバキア語). imhd.sk.. 2020年3月4日閲覧。
  13. ^ Libor Hinčica; Jan Šlehofer (2010). “Tramvaje VarioLF v Plzni”. Československý dopravák IX. (4): 34–37. 
  14. ^ Další nové tramvaje vyjedou do ulic”. Město Olomouc (2016年11月23日). 2020年3月4日閲覧。
  15. ^ a b c Olomouc Urban Transport Company” (英語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
  16. ^ Trams VarioLF.E” (英語). VKV Praha s.r.o.. 2020年3月4日閲覧。
  17. ^ Radim Klement (2016年10月20日). “NÁVRAT TRAMVAJÍ DO UZBEKISTÁNU”. Československý Dopravák. 2020年3月4日閲覧。
  18. ^ Tashkent - Samarkand Uzbekistan” (英語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
  19. ^ a b Dopravní podnik Ostrava a.s.” (チェコ語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
  20. ^ Brno Urban Transport Company” (英語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
  21. ^ TRZ - Moscow - Russia” (英語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
  22. ^ Olomouc Urban Transport Company” (英語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
  23. ^ Dopravní podnik měst Mostu Litvínova, a.s” (チェコ語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
  24. ^ Kosice Urban Transport Company (Slowakia)” (英語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
  25. ^ Tramvaj VarioLFplus”. Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。



ヴァリオLF

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 18:54 UTC 版)

オストラヴァ市電」の記事における「ヴァリオLF」の解説

アライアンスTW展開する車体中央部分低床構造となっている部分超低床電車そのうちオストラヴァ市電導入され車両タトラT3機器流用した「ヴァリオLFR」と呼ばれる車種で、電気機器異な2形式(ヴァリオLFR.E:47両、ヴァリオLFR.S16両)が2005年以降導入されている。 「ヴァリオLF」も参照 登場当初塗装2007年撮影) 新塗装2019年撮影

※この「ヴァリオLF」の解説は、「オストラヴァ市電」の解説の一部です。
「ヴァリオLF」を含む「オストラヴァ市電」の記事については、「オストラヴァ市電」の概要を参照ください。

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