ヴァニタスの歴史と寓意とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > ヴァニタスの歴史と寓意の意味・解説 

ヴァニタスの歴史と寓意

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 22:42 UTC 版)

ヴァニタス」の記事における「ヴァニタスの歴史と寓意」の解説

人生はかなさというテーマは、中世ヨーロッパ葬祭用の美術工芸品、特に彫刻においてはよくみられるテーマであった15世紀頃まで、このテーマ極めて悲観的かつ自明のものとして描かれており、死や衰退対す当時強迫観念強く反映していた。これは15世紀前半書かれ死にあたって心構え説いた書『アルス・モリエンディ(Ars moriendi, 往生術)』や、死の普遍性説く絵画である『死の舞踏Danse Macabre)』、あるいは重複するモチーフであるメメント・モリMemento mori, 死を想え)にも同様にみられるルネサンス期以後こうしたモチーフ直接的にではなく間接的に比喩的に描かれるようになってゆく。 古典古代学問芸術復興し始めると同時に15世紀頃から絵画において視覚的リアリズム復活しはじめ、それまで信心のために画面を見つめていた人々は、本物そっくり魅力的に描かれた人物物体描写を楽しむようになる静物画というジャンルヨーロッパ北部人気博し日常生活品物贅沢品などが描かれるうになる。 しかし静物画ジャンルとしては宗教画など歴史画比べて格が低いとみられており、キリスト教的な内容比喩的に取り入れることで静物画の格を高め同時に魅力的感覚的な絵画を描くに当たって道徳的な正当化行おうとする試みなされた聖母象徴するバラや、清らかさ象徴である水の入ったコップなどは代表的なモチーフである。ヴァニタス呼ばれる静物画ジャンルは、生のはかなさ快楽空しさ、死の確実さ観る者に喚起するためのジャンルであり、旧約聖書の「コヘレトの言葉」の内容呼び覚ます絵画であったが、やはり一方で絵画画面心地よさを享受する当たって正当化という側面もあった。 ヴァニタスにおける象徴物には、頭蓋骨(死の確実さ意味する)のほかに、爛熟した果物加齢衰退などを意味する)、シャボン玉遊びに使う麦わら貝殻や泡(人生簡潔さや死の唐突さを意味する)、煙を吐きだすパイプランプ人生短さ意味する)、クロノメーター砂時計人生短さ意味する)、楽器人生刹那的簡潔なさまを意味する)などがある。果物、花、なども同様の意味を持たされことがある。皮を剥いたレモン海草は、見た目には魅力的だが味わうと苦いという人生側面を表す。 こうした明白な象徴物をあしらわない静物画中に、どの程度の量や真剣さでヴァニタステーマ表現されているかについては、美術史家らの間でもしばしば議論となる。道徳的な風俗画多くと同様、ヴァニタスにおいても、物体感覚的な描写快楽と、道徳的なメッセージとが、画面の中で衝突起こしせめぎ合っている。

※この「ヴァニタスの歴史と寓意」の解説は、「ヴァニタス」の解説の一部です。
「ヴァニタスの歴史と寓意」を含む「ヴァニタス」の記事については、「ヴァニタス」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ヴァニタスの歴史と寓意」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ヴァニタスの歴史と寓意」の関連用語

ヴァニタスの歴史と寓意のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ヴァニタスの歴史と寓意のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのヴァニタス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS