ロール回転モーメントの方程式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 06:08 UTC 版)
「九一式魚雷」の記事における「ロール回転モーメントの方程式」の解説
最初にロール回転モーメントの方程式が立てられた。それは次のロール角度 ν の t に関する連立2階微分方程式に単純化される。 I 2 ( d 2 ν / d t 2 ) = − K − M ( d ν / d t ) ⋯ ( E q . 7 ) ( d 2 ν / d t 2 ) + M / I 2 ( d ν / d t ) = 0 ⋯ ( E q . 8 ) {\displaystyle {\begin{array}{lclr}I_{2}(d^{2}\nu /dt^{2})&=&-K-M(d\nu /dt)&\cdots (Eq.\ 7)\\(d^{2}\nu /dt^{2})+M/I_{2}(d\nu /dt)&=&0&\cdots (Eq.\ 8)\end{array}}} ここで、最上部中立点での角運動を解析するために、初期条件を次のように設定する。 t = 0 で dν/dt = ω0,ν = 0 すると、Eq. 7 と Eq. 8 は次のとおり単純化される。 d ν / d t = − ( I 2 / M ) ( K / I 2 ) + ( ω 0 + K / M ) e − ( M / I 2 ) t ⋯ ( E q . 9 ) ν = − ( K / M ) t + ( I 2 / M ) ( ω 0 + K / M ) ( 1 − e − ( M / I 2 ) t ) ⋯ ( E q . 10 ) {\displaystyle {\begin{array}{lcll}d\nu /dt&=&-(I_{2}\,/\,M)\,(K\,/\,I_{2})\,+\,(\omega _{0}\,+\,K\,/\,M)\,e^{-(M/I_{2})t}&\cdots (Eq.\ 9)\\\nu &=&-(K/M)t\,+\,(I_{2}/M)\,(\omega _{0}\,+\,K/M)\,(1\,-\,e^{-(M/I_{2})t})&\cdots (Eq.\ 10)\end{array}}} ここで、K と M は次式で定義される:K = −(1/2) C2 ρV2 S2 a M = (1/2) × 57.3 C1 S3 (b22 / 12)ρV 上式中の各記号は次の定数と変数を表す:ρ : 空気密度 V : 魚雷速度 (定数) C2 : 両側の安定舵の空気流れベクトルについての 22.5° での揚力係数 a : 2個の安定舵の揚力の空気力学的中心間の長さ S2 : 1個の安定舵の面積(脱落式木製安定翼) b2 : 尾部の空中安定板の横幅 C1 : 尾部の空中安定板の空気流れベクトルについての角度 1° ごとの揚力係数 S3 : 尾部の安定板の面積総和、ただし箱型形状「框板」には S3 / 4 が使われる。 I2 : 魚雷の重心での揚力モーメントについての慣性係数 ν : 魚雷の長軸周りの回転角度 実際の解析における繰返し処理では、ある角度値 ν° を Eq. 10 に設定して t の値を得て、その t を Eq. 9 に代入することによって、最上部中立点を通り過ぎるときの角速度を求めることができる。 数値解析自体は見栄えがしなくて一般の理解を得にくいので、広田少佐は航空魚雷開発チームの部外者に対しては、その代りに当て舵に関する Eq. 7 についての非常に簡単な定性的な説明を行い、理解を得た。それは多くの数値解析の結果から得られるロール角度に関する方程式の挙動性質についてだった。Eq. 7 は魚雷のロール角速度の変化を表し、時間に関する2次微分である。 ロール安定制御器をもつ魚雷は、Eq. 7 の係数 K と M によって、魚雷の揺れの大きなロール回転モーメントを、小さな左右にゆききする揺れローリング動作に収束させる。この加速度制御は 0 にはならない。 特に、Eq. 7 は、右辺の K を変化させることで大きなロール回転モーメントを小さく左右に揺れるローリング動作に収束させる。これは、実際にはロール安定制御器が、次に示すようにロール角速度の大きさ、向き、および傾き検出角度に応じて適応的に、両脇の安定舵をひねり操舵しロール回転モーメントを発生させることで実現している。 ロール角度が ±10° の範囲を超えると、Eq. 7 の K は常に正として、安定舵を操舵する。ロール角度が ±10° の範囲内に戻ってくると、 Eq. 7 の最初の項 K は値の符号を負に切り替えて当て舵操舵をする。 他方で、 Eq. 7 の右辺第2項の M は、木製の尾部安定板の特性を表し、常にロール回転モーメントを減衰させる。 このようにして、九一式魚雷は、空中を落下している間も、水面下を走行している間も、ロール回転モーメントによるロール回転、揺れ振動を収束可能にしている。
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