ルネサンス期の錬金術
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16世紀ルネサンス期に錬金術は最盛期を迎えた。錬金術師が増え、印刷術により先人の書物が広まった。 ルネサンス期の有名な医師・錬金術師にパラケルススがいる。彼はアリストテレスの四大説を引き継ぎ、アラビアの三原質(硫黄、水銀、塩)の結合により、完全な物質であるアルカナが生成されるとした。なお、ここでいう塩、水銀、硫黄、金などの用語は、現在の元素や化合物ではなく象徴的な表現と解釈する必要がある。彼を祖とする不老長生薬の発見を目的とする一派はイアトロ化学(iatrochemistry)派と呼ばれた。またゲオルク・アグリコラが「キミア(chymia)」の語を広範に用いたことで、錬金術は秘教的な実践を指すようになり、薬剤や経験主義の長い伝統の「化学」と区別されるようになった。 神聖ローマ皇帝ルドルフ2世は身分や国籍を問わず錬金術師を厚遇した。プラハの宮殿にはヨーロッパ各地から錬金術師、科学者、占星術師、魔術師、芸術家が集まり、小さな大学のような雰囲気だった。宮廷を訪ねた錬金術師は予備試験に合格すると皇帝の前に通され、そこで珍しい実験を実演すると相応の褒賞が与えられた。イギリス人のジョン・ディーとエドワード・ケリーもプラハに滞在した。錬金術師たちはヨーロッパ中を駆け巡ったが、捕らえられ、錬金術の秘密を告白するよう拷問されて死んだものもいた。この時代を代表する動きはドイツではじまった薔薇十字団の活動である。薔薇十字団は『友愛団の名声(1614年)』『友愛団の告白(1615年)』という文書を発表。ともに賢者の石による金変成を「偽金作り」と糾弾し、真の錬金術の目標は病人を治療する新しい医療化学、人々を叡智に導き、神と人間の世界を改革することとされた。『クリスチャン・ローゼンクロイツの化学の結婚(1916年)』は団の開祖とされるローゼンクロイツを主人公とする錬金術的幻想小説である。 16世紀は偽の錬金術師も急増した。錬金術書を偽造する、偽の金を売りさばく者があらわれた。何より彼らは実験に成功することなく具体的な成果を上げられず、徐々に錬金術は疑惑の目にさらされるようになった。
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