ユートピア思想と「迷妄」とは? わかりやすく解説

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ユートピア思想と「迷妄(Wahn)」

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/16 19:18 UTC 版)

ニュルンベルクのマイスタージンガー」の記事における「ユートピア思想と「迷妄(Wahn)」」の解説

本作描かれニュルンベルクは、政治的抑圧から「純粋に人間的なるもの」を救うため、『芸術と(による)革命』を志向していたワーグナーにとってのユートピアまたはアルカディア桃源郷)である。 劇中ユートピア実現向けて決定的な転回点となるのは、第3幕第1場の「迷妄モノローグ」である。ここでザックスは、「迷妄(Wahn)なくしてはいかなる事業起こりえない」と達観し、これを反転させて「多少侠気(Wahn)がなければ/どんな立派な企て成就するずがない」とし、理性常識節度の埒を超え出たヴァーンこそがユートピア原動力であると見なす。 この部分では、ドイツの哲学アルトゥル・ショーペンハウアー1788年 - 1860年)との関連顕著である。ショーペンハウアー著書意志と表象としての世界』では、「迷妄」は人間突き動かしてやまない盲目意志」の発露であり、「過度歓喜苦痛根底には常に迷妄がある」としており、このショーペンハウアー考えワーグナー受け継いでいる。しかし、ワーグナーショーペンハウアーペシミズムには留まっていない。 イギリスの法律家・思想家トマス・モア1478年 - 1535年)の『ユートピア』(1516年)では、ウートポス(どこにもない場所)を構想することは常識立場からすればアートポス(途方もない不条理)、すなわちヴァーンほかならないという逆説的な認識示しており、また、モア親交のあったネーデルラント神学者デジデリウス・エラスムス(1466/69年 - 1536年)も、モア献呈した『痴愚神礼讃』(1509年)の中で、モアの名前(ラテン語形 Morus)から狂気痴愚女神Moria思いついたとし、狂気ある種生産性認めていた。 ドイツ語 Wahn は迷妄狂気あるいは侠気という意味だが、本来 Wonne (歓喜)や Wunsch (希望)などと同じ「至福希望」を意味する言葉だった。のちに古高ドイツ語の wanwizzi (精神喪失)に Wahnwitz の綴り当てられたために両者混同される至った。つまり、ワーグナー知って知らずか、Wahn の古い意味を掘り起こしたことになる。 後年ワーグナーバイロイト建てた自分の邸を「ヴァーンフリート荘(de:Haus Wahnfried)」と名付けており、このモノローグワーグナー自身心情吐露であることを示唆している。

※この「ユートピア思想と「迷妄(Wahn)」」の解説は、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の解説の一部です。
「ユートピア思想と「迷妄(Wahn)」」を含む「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の記事については、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の概要を参照ください。

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