モジュラー性定理とフェルマーの最終定理への応用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 09:49 UTC 版)
「楕円曲線」の記事における「モジュラー性定理とフェルマーの最終定理への応用」の解説
詳細は「谷山–志村予想」を参照 モジュラー性定理は、以前は谷山志村予想としても知られていたが、Q の上の全ての楕円曲線 E はモジュラーであるということであり、言い換えると、楕円曲線のハッセ・ヴェイユのゼータ関数はウェイト 2 でレベル 1 のモジュラー形式のL-関数であるということを言っている。ここに N はアーベル多様体 E の導手(英語版)である。(導手とは、E の判別式 Δ(E) として同じ素数により割ることのできる整数を言う。)言い換えると、Re(s) > 3/2 に対し、L-関数を L ( E ( Q ) , s ) = ∑ n > 0 a ( n ) n − s {\displaystyle L(E(\mathbf {Q} ),s)=\sum _{n>0}a(n)n^{-s}} の形に書くと、 ∑ a ( n ) q n , q = exp ( 2 π i z ) {\displaystyle \sum a(n)q^{n},\qquad q=\exp(2\pi iz)} はウェイト 2 でレベル N の双曲モジュラー形式の新形式(英語版)(newform)を定義する。N を割らない素数 ℓ に対して、モジュラー形式の係数 a(ℓ) は ℓ に等しい、つまり法 ℓ での最小多項式の解の個数に等しい。 判別式(と導手)が 37 である楕円関数 y 2 − ″ y ″ = x 3 − x {\displaystyle y^{2}-''y''=x^{3}-x} の例は、モジュラー形式 f ( z ) = q − 2 q 2 − 3 q 3 + 2 q 4 − 2 q 5 + 6 q 6 + ⋯ , q = exp ( 2 π i z ) {\displaystyle f(z)=q-2q^{2}-3q^{3}+2q^{4}-2q^{5}+6q^{6}+\cdots ,\qquad q=\exp(2\pi iz)} に関係付けられている。 ℓ を 37 とは異なる素数とすると、係数の性質を比較することができる。従って、ℓ = 3 とすると法 3 の方程式の解は (0, 0), (0, 1), (2, 0), (1, 0), (1, 1), (2, 1) であり、a(3) = 3 − 6 = −3 である。 この予想は1950年代に主張され、1999年にアンドリュー・ワイルズのアイデアを用いて完全に証明された。彼は1994年に大きな楕円曲線の族についてこの予想を証明した。 予想には様々な定式がある。これらが同値であることを示すことは難しく、20世紀の後半の数論の主要なテーマであった。導手 N の楕円曲線 E のモジュラーリティは、モジュラー曲線 X0(N) から E への、Q 上に定義された非定数の有理写像が存在することも表すことができる。特に、E の点はモジュラー関数によりパラメトライズされる。 例えば、曲線 y 2 − ″ y ″ = x 3 − x {\displaystyle y^{2}-''y''=x^{3}-x} のモジュラーパラメータ化は により与えられた。 x ( z ) = q − 2 + 2 q − 1 + 5 + 9 q + 18 q 2 + 29 q 3 + 51 q 4 + … y ( z ) = q − 3 + 3 q − 2 + 9 q − 1 + 21 + 46 q + 92 q 2 + 180 q 3 + … {\displaystyle {\begin{aligned}x(z)&=q^{-2}+2q^{-1}+5+9q+18q^{2}+29q^{3}+51q^{4}+\ldots \\y(z)&=q^{-3}+3q^{-2}+9q^{-1}+21+46q+92q^{2}+180q^{3}+\ldots \end{aligned}}} ここでは、上記のように q = exp(2πiz) とする。関数 x(z) と y(z) はウェイト 0 でレベル 37 のモジュラー関数で、言い換えると、それらは上半平面 Im(z) > 0 で定義された有理型で、関数等式 x ( a z + b c z + d ) = x ( z ) {\displaystyle x\left({\frac {az+b}{cz+d}}\right)=x(z)} を満たす。また同じことが、ad − bc = 1 かつ 37|c となる全ての整数 a, b, c, d と y(z) について成り立つ。 別な定式化は、一方では楕円曲線に、他方ではモジュラー形式に関連するガロア表現の比較に依拠している。モジュラー形式に関係付けられた定式化は予想の証明に使用された。形式のレベルを扱うこと(と曲線の導手との関係)は特に微妙である。 予想の最も重要な応用はフェルマーの最終定理(FLT)の証明である。素数 p > 5 に対して、フェルマー方程式 a p + b p = c p {\displaystyle a^{p}+b^{p}=c^{p}} は、零ではない整数解を持つとする、つまり、フェルマーの最終定理の反例であるとすると、判別式 Δ = 1 256 ( a b c ) 2 p {\displaystyle \Delta ={\frac {1}{256}}(abc)^{2p}} の楕円曲線 y 2 = x ( x − a p ) ( x + b p ) {\displaystyle y^{2}=x(x-a^{p})(x+b^{p})} は、モジュラーではありえない。従って、楕円曲線のこの族(ヘレゴーチ・フライ曲線(Hellegouarch–Frey curves)と呼ぶ)の谷山志村予想の証明は、フェルマーの最終定理を意味する。2つのステートメントを結び付ける証明は、ゲルハルト・フライの1985年のアイデアを基礎にしていて、難しくテクニカルである。1987年にケン・リベットにより出版された。
※この「モジュラー性定理とフェルマーの最終定理への応用」の解説は、「楕円曲線」の解説の一部です。
「モジュラー性定理とフェルマーの最終定理への応用」を含む「楕円曲線」の記事については、「楕円曲線」の概要を参照ください。
- モジュラー性定理とフェルマーの最終定理への応用のページへのリンク