モジュラー形式のラマヌジャン・ピーターソン予想
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「ラマヌジャン・ピーターソン予想」の記事における「モジュラー形式のラマヌジャン・ピーターソン予想」の解説
1937年、エーリッヒ・ヘッケはヘッケ作用素を導入し、モーデルがラマヌジャン予想の最初の 2つの命題を証明した際の技法をSL(2,R) の離散部分群 Γ の保型形式のL-函数へと一般化した。任意のモジュラー形式 f ( z ) = ∑ n = 0 ∞ a n q n ( q = e 2 π i z ) {\displaystyle f(z)=\sum _{n=0}^{\infty }a_{n}q^{n}\quad (q=e^{2\pi iz})} について、ディリクレ級数 φ ( s ) = ∑ n = 1 ∞ a n n − s {\displaystyle \varphi (s)=\sum _{n=1}^{\infty }a_{n}n^{-s}} を書ける。離散部分群 Γ の重さ k ≥ 2 のモジュラー形式 f(z) に対して、 an=O(nk-1+ε) であるため、φ(s) は Re(s) > k の領域では絶対収束する。f は重さ k のモジュラー形式なので、(s-k)φ(s) は整関数であり、R(s)=(2π)-sΓ(s)φ(s) は次の函数等式を満たす。 R ( k − s ) = ( − 1 ) k / 2 R ( s ) . {\displaystyle R(k-s)=(-1)^{k/2}R(s).} このことは、1929年にウィルトン(Wilton)により証明された。この f と φ の対応は 1 対 1 である(a0=(-1)k/2Ress=kR(s))。x > 0 に対して g(x)=f(ix)-a0 とすると、g(x) は次のメリン変換を通して R(s) と関係付けられる。 R ( s ) = ∫ 0 ∞ g ( x ) x s − 1 d x ⇔ g ( x ) = 1 2 π i ∫ R e s = σ 0 R ( s ) x − s d s . {\displaystyle R(s)=\int _{0}^{\infty }g(x)x^{s-1}dx\Leftrightarrow g(x)={\frac {1}{2\pi i}}\int _{Re_{s=\sigma _{0}}}R(s)x^{-s}ds.} この対応が、上の函数等式を満たすディリクレ級数を、SL(2,R) の離散部分群の保型形式に関連付ける。 k ≥ 3 である場合について、ハンス・ピーターソン(英語版)はモジュラー形式の空間のピーターソン計量(英語版)(ヴェイユ・ピーターソン計量(英語版)(Weil-Petersson metric)も参照)を導入した。この予想の名称は彼の名前にちなんでいる。ピーターソン計量の下に、モジュラー形式の空間上にカスプ形式の空間とその直交空間として直交性を定義でき、それらは有限次元を持つ。さらに、リーマン・ロッホの定理を用いて、正則モジュラー形式の空間の次元を具体的に計算できる。(モジュラー形式の空間の次元を参照) Deligne (1971)は、アイヒラー・志村同型を用いてラマヌジャン予想をヴェイユ予想に帰着し、後に証明した。より一般化されたラマヌジャン・ピーターソン予想は、重さkの指数 (k − 1)/2 を持つ同様の定式化を採るが、合同部分群(英語版)(congruence subgroup)の楕円モジュラー形式の理論における正則カスプ形式を扱う。これらの結果も同じくヴェイユ予想の系として得られるが、 k = 1である場合は例外であり、これはDeligne & Serre (1974)の結果である。 マース形式に対するラマヌジャン・ピーターソン予想は、2016年現在未解決である。これは正則である場合はうまく機能したドリーニュの方法が、実解析的な場合は機能しないことによる。
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