ブロードアローカフェので謀殺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/29 14:01 UTC 版)
「ポートアーサー事件」の記事における「ブロードアローカフェので謀殺」の解説
ブライアントは食事を終え、カフェの中に歩いて入り、ドアを開けてくれた人も含め、数人に手伝ってもらいながらトレーを返した。ブライアントはバッグをテーブルのうえに置き、中からコルト製スコープと30発のマガジンが装着されたAR-15を引き出した。このバッグには、他の物とともにデビッド・マーティンを刺したナイフもあった。コルトのマガジンの一部はシースケープでの銃撃のために空っぽであったと考えられている。 カフェはたいへん小さく、テーブルどうしは密接していた。当日はとりわけ忙しく、多くのひとが次のフェリーを待っていた。以下の出来事はきわめて迅速に起こった。ブライアントはライフルをモー・イェー・(ウィリアム)・ングとソウ・レン・チュンに向けた。彼らはマレーシアから訪れており、ブライアントのそばのテーブルについていた。彼は2人ともを近距離から撃ち、2人は即死した。ブライアントはそれからミック・サージェントをねらって撃ち、銃弾は彼の頭皮をかすり、彼は床に倒れた。ブライアントは4発発砲し、サージェントのガールフレンド、ケート・エリザベス・スコット(21歳)の後頭部を撃って殺した。 ニュージーランドのワインメーカー、ジェーソン・ウィンター(28歳)は忙しいカフェのスタッフを手助けしているところだった。ブライアントがウィンターの妻ジョアンナと息子ミッチェル(15歳)の方を向いたとき、ウィンターはブライアントをねらって食事トレーを投げ彼の気を散らせようとした。ジョアンナの父親が、娘と孫息子をそれぞれ床とテーブルの下に押し倒した。 アンソニー・ナイチンゲール(44歳)が、最初の何度かの銃撃音ののち立ち上がったが、移動する余裕はなかった。ナイチンゲールは、ブライアントが武器を自分に向けたとき、「やめろ!こんな所で!」("No, not here!")と叫んだ。ナイチンゲールは、身体を前にかがめたとき、首と背骨を致命的に撃たれた。 隣のテーブルには10人の集団がいたが、一部はちょうどテーブルを離れ食事トレーを返し、ギフトショップを訪れるところであった。ブライアントは1発、発砲し、ケヴィン・ヴィンセント・シャープ(68歳)を殺した。2発目はウォルター・ベネット(66歳)に当たり、身体を貫き、ケヴィン・シャープの弟レイモンド・ジョン・シャープ(67歳)に当たり、二人とも死亡した。3人はブライアントに背を向けており、何が起きているか気づかなかった――彼らは初めだれかが爆竹を鳴らしていると考えていた。うち1人が最初の数発が聞こえたのち「これは笑いごとじゃない」("That's not funny")と評した。銃撃はすべて近距離からで、頭部に突き付けて撃ったか、あるいは数インチ離れたところからであった。ジェラルド・ブルーム、ゲイ・フィドラー、彼女の夫ジョンは、全員銃弾の破片に打たれたが生き延びた。 ブライアントはそれからトニー・キスタン、サラ・キスタン、アンドリュー・ミルズの方を向いた。男は2人とも、最初の何回かの銃撃で立ち上がったが、動き去る時間はなかった。アンドリュー・ミルズは頭部を撃たれた。トニー・キスタンも頭部を2メートルの距離から撃たれたが、撃たれる前にどうにか妻を押しやることができていた。サラ・キスタンはそのときまでテーブルの下にいたため、ブライアントからは見えなかったと考えられる。 セルマ・ウォーカーとパメラ・ローは破片で負傷し、それから友人ピーター・クロスウェルに地面をひきずられ、3人はテーブルの下に難を逃れた。またパトリシア・バーカーも、これらの銃撃の破片によって負傷した。 そのときになってようやく、カフェ内の大部分の人々は何が起きているのか、銃撃はヒストリカルサイトの歴史を再現する劇による物ではないと悟った。この時点で大混乱が起きたが、ブライアントがメインの出口にいたため、多数の人は無策であった。 ブライアントは軽く数メートル移動して、グラハム・コルヤー、キャロライン・ラフトン、そして彼女の娘サラがついていたテーブルをねらって撃ちはじめた。コルヤーはあごに重傷をおい、あやうく自分の血液で窒息死するところであった。サラ・ラフトンは母のほうへ駆け寄り、母はすでにテーブルの間に隠れていた。キャロライン・ラフトンは娘の上に覆いかぶさった。ブライアントは、キャロライン・ラフトンの背中を撃った。彼女の鼓膜は、耳のそばで発砲された銃声で破裂した。彼女は負傷したものの生き延びたが、後に外科手術したサラがすでに頭部を撃たれて命を落としていたことを知った。 ブライアントは身体の向きを変え、座っていたマーヴィン・ハワードを撃った。弾丸は彼を、そしてカフェの窓を貫き、外のバルコニーのテーブルに当たった。ブライアントはすばやくつづけてマーヴィン・ハワードの妻メアリーの首を撃った。ブライアントはそれから、空の折りたたみ式のベビーカーの上に前かがみになり、銃を彼女の頭部に向け、ふたたび撃った。ハワード夫妻の負傷は致命的であった。 ブライアントは出口のそばにいて、人々が自分の横を走り抜けて逃げるのを妨いだ。ブライアントは、カフェを横切りギフトショップエリアのほうへ移動した。ディスプレーエリアを通って外のバルコニーに通じる出口ドアが1つあったが、施錠されており、鍵でしか開けられなかった。ブライアントが移動したとき、ロバート・エリオットが起ち上がった。彼は腕と頭部を撃たれ、暖炉にぐったりともたれたが、生きていた。 これらの事は、ングを殺した最初の弾丸から、約50秒間かかった。その間、ブライアントは17発、発砲し、20人を殺し、さらに10人を負傷させた。
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