ブレードの運動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 00:16 UTC 版)
フラッピング 上下方向の動きであり。ヘリコプターのメインローターが飛行中に回転している場合には、ブレードは揚力と遠心力との合力により、上方向にフラッピングしており、回転するメインローター全体の軌跡が逆円錐形になっている。この事を「コーニング」(コーン状態)と呼ぶ。上に反ったブレードの翼端と逆円錐の底面との角度をコーニング角と呼とよんでおり、機体重量が同じ場合において、メインローターの回転数が小さくなれば、遠心力が減少してコーニング角が大きくなり、メインローターの回転数が同じ場合において、揚力が小さくなれば、コーニング角が小さくなる。全関節型のローターヘッドではコーニング角に応じて上下方向にフラッピングするため、ブレードには曲げモーメントは生じないが、半関節型と無関節型のローターヘッドでは、コーニング角に応じて上下方向にフラッピングできないため、最も多く使用されている飛行状態のコーニング角に応じた角度の分だけ、ブレードを上方に角度を取って取付けており、これをプリコーニングと呼んでいる。また、その他の飛行状態でのコーニング角の変化では、ハブまたはブレードに発生する曲げモーメントによるたわみにより、対応できるようにしている。 ドラッギング 回転方向の動きであり。回転方向に個々のブレードが運動するのをドラッギング、またはリード・ラグ運動と呼び、その角度をドラッグ角と言う。エンジン始動時の起動トルクがメインローターにかかるときには最大で25°ほども、ブレードが遅れて角度が付く。通常飛行時には遅れ方向で10° - 15°程度、地上でエンジン停止時には進み方向で3°ほど、オートローテーション時には±0°となる。 フェザリング 迎角の変化。フェザリングはブレードの迎角の変化である。フラッピングとフェザリングは関係が深く、フェザリングとフラッピングの等価性と呼ばれている。これは、サイクリックピッチ操作を行うことで、ヘリコプターがホバリングから前進飛行を始める場合、回転面は操作したピッチ角だけ傾き、ブレードの前進側では、操作したピッチ角だけ迎角が減少して揚力が減少し、ブレードの後進側では、操作したピッチ角だけ迎角が増加して揚力が増加して、回転位置において揚力が不均衡の状態となる。ブレードはその不均衡を解消するため、操作したピッチ角だけ回転面が傾いた時に、ブレードの前進側ではフラッピングによるブレードの降下運動により迎角が無くなり、ブレードの後進側ではフラッピングによるブレードの上昇運動により迎角が無くなることで、回転位置での揚力が等しくなり不均衡が解消されるように出来ている。 ブレードが前後左右のいずれかの位置で常にフェザリング角が大きくなるようにすれば、そちらの側だけ揚力が増すため、メインローターの回転面が傾いてゆく。反対に前後左右のいずれかの位置で常にフェザリング角が小さくなるようにすれば、そちらの側だけ揚力が減るため、やはりメインローターの回転面が傾いてゆく。こういったことを行なうのが、サイクリック(操縦桿)に接続された、スワッシュプレートである。スワッシュプレートはローターヘッドの下部にあって、メインローター軸と一緒に回転しながらサイクリック(操縦桿)の動きにあわせて、スワッシュプレートを傾かせることでブレードのフェザリング角を常に調整している。スワッシュプレートを傾かせることによってメインローター回転面が傾くことにより飛行方向が決定されるが、実際の回転面の傾きは「ジャイロプリセッション」より、加えた力の位置から回転方向に90°遅れた方向に現れる。これにより、操縦桿を前後に操作することでスワッシュプレートが前後に傾く縦サイクリックピッチでは、ブレードが左右の位置に来た時にブレードのピッチ角(フェザリング角)が増減してメインローター回転面が前後に傾き、操縦桿を左右に操作することでスワッシュプレートが左右に傾く横サイクリックピッチでは、ブレードが前後の位置に来た時にブレードのピッチ角(フェザリング角)が増減してメインローター回転面が左右に傾くようになっている。
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