フランス風序曲とは? わかりやすく解説

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バッハ:フランス風序曲(パルティータ)

英語表記/番号出版情報
バッハ:フランス風序曲(パルティータOuverture(Partita)  BWV 831作曲年1734年  出版年1735年  初版出版地/出版社Weigel 

作品概要

作品解説

2007年6月 執筆者: 朝山 奈津子

 1735年の『クラヴィーア練習曲集 第II部』においてバッハは、フランスイタリアの二大様式を対決させることを意図した。この当時すでに、ふたつの様式差異決まり文句のように言われるだけで、実際に互いにかなり近づいていた。バッハそれだけに一層、両者の特徴明確になるよう注意払った。この《フランス風序曲》では、曲種の選択配列序曲形式にそれが顕著である。古典的な鍵盤組曲A-C-S-(挿入舞曲)-Gという定式放棄された。古めかしいアルマンド省き序曲にはクーラントがつづく。サラバンドとの間にガヴォットパスピエ挿入されジーグの後にエコー置かれている。こうした自由な配列は、バッハ自身4つ管弦楽組曲にもみられ、従ってこの《フランス風序曲》は――鍵盤組曲ではなく――管弦楽ジャンル二段鍵盤チェンバロにうつしかえたものということができる。(同じくクラヴィーア練習曲集II部』に含まれるイタリア協奏曲》は合奏協奏曲モデルとする。ちなみに、《イタリア協奏曲》のヘ長調と《フランス風序曲》のロ短調3つの全音を含む減5度、すなわち全音階上もっとも遠隔な調関係にあることも、両者対比象徴している。)
 冒頭序曲は、緩‐急‐緩の伝統的な形式踏まえている。両端緩徐部分はまったく同じ長さそれぞれ20小節ずつで、特徴的な付点リズム回帰する。《パルティータ 第4番》の冒頭楽章を「序曲 Ouverture」と呼びながら緩徐部分再現放棄したことを考えればバッハはここで、より厳格に形式従おうとしている。
 フランス風序曲演奏する際、一般には、付点四分音符長めに、ほとんど複付点として演奏すべきであると言われている。これに関し、『バッハ鍵盤音楽』(邦訳小学館2001)において鍵盤作品網羅的とりあげたデイヴィッド・シューレンバーグは、テンポアーティキュレーション誤解に基づく無用の議論であると主張している(第2章、および該当作品の項目)。序曲には遅いテンポ指定されることはほとんどなく、多く場合アラ・ブレーヴェ記譜されている。すなわち、適切なテンポをとり、付点前後明瞭なアーティキュレーション施されるなら、付点と複付点演奏大きな差はない。むしろテンポにこそ注意を払うべきで、序曲不必要にゆっくりと弾いてしまうと、生気失われて退屈になってしまう。
 荘重な序曲に続くのは、どれも小規模リズムはっきりした舞曲である。(《パルティータ》のように様式化進めるよりも、各舞曲典型明確に示そうとする意図窺える。)クーラントは2分の3拍子でゆったりとしたフランス風のもの。ガヴォットパスピエはいずれ長短調一対ダ・カーポ指定がある。ジーグのあとに置かれエコーでは、鍵盤切替を表す「forte」と「piano」の指定多数書き込まれており、ここに至ってようやく二段鍵盤特性活かす楽章登場する


フランス風序曲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/05 08:27 UTC 版)

フランス風序曲(フランスふうじょきょく)またはフランス式序曲(フランスしきじょきょく)とは、バロック音楽で幅広く用いられた楽曲形式(演奏形態としての「序曲」に留まらない、普遍的な作曲技法としての形式)を指す。


  1. ^ フランソワ・クープラン『新しいコンセール』第4番「劇場風のコンセール」など
  2. ^ J.S.バッハは、独奏用の作品にもフランス風序曲の形式を用いており、チェンバロのためのフランス様式による序曲パルティータ、オルガンのための前奏曲 変ホ長調「聖アン」BWV 532-1(いずれも『クラヴィーア練習曲集』に含まれる)のほか、無伴奏チェロ組曲#第5番ハ短調 BWV1011(もしくは同曲を移調編曲した無伴奏リュート組曲 第3番BWV995)といった作品がある。またゴルトベルク変奏曲の後半部分の開始に小規模なフランス風序曲を用いている。
  3. ^ ヘンデルのオラトリオ『メサイア』冒頭シンフォニアなど
  4. ^ J.S.バッハのカンタータ第110番、第119番の冒頭曲は、典型的なフランス風序曲形式を取り、ヴィヴァーチェ部分に合唱が加えられている。
  5. ^ 前掲・ヘンデル『メサイア』の冒頭シンフォニアが好例
  6. ^ ヘンデル『水上の音楽』、前掲『メサイア』の冒頭シンフォニアなど
  7. ^ J.S.バッハ『管弦楽組曲』の第1番序曲は合奏協奏曲トリオソナタ形式、同第2番は独奏協奏曲的形式を取り入れた好例


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