ピンホール径
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/06 01:02 UTC 版)
波動光学により、理想的な(径が無限に小さい)点状のピンホールであっても、それを通った光が作る像は点ではなく、光線の回折によりエアリーディスクになる。そのため、ピンホールカメラをはじめ各種の光学系では、理想的な場合でも解像度に限界がある。顕微鏡などの性能の検討においては各種の理論式があるが(分解能の記事を参照)、ここではピンホールカメラの工作の目安程度として議論する。なお前述のようにピンホールカメラでは、その画角についてピンホールからフィルム面までの距離が、レンズを使った場合の焦点距離に相当するので、以下では便宜上その距離を「焦点距離」と呼ぶことにする。 被写体は無限遠であるとし、光の波長を λ、ピンホールの半径を r、焦点距離を b とすると、 b = r 2 λ {\displaystyle \mathbf {} {\rm {b={\frac {\rm {r^{2}}}{\lambda }}}}} の関係にあるとき、最も鮮明な画像となる(この議論では省いているが、係数が存在するはずでその値については議論があると思われる。本当に理想的なピンホール径を実際に求めるのであれば、実験的に行うことになろう。しかし、ピンホール径と「焦点距離」の間には、このような2乗(逆側から見ると平方根)に比例するという関係がある、という点については確かと見てよい)。 次に、近距離の被写体に対しては、以下の公式となる。この公式での、「c」は、焦点距離、「u」は、ピンホールから被写体までの距離、とする。 c = u b u − b {\displaystyle \mathbf {} {\rm {c={\frac {\rm {u{\rm {b}}}}{\rm {u-{\rm {b}}}}}}}} λを400nmとすると(これはかなり短い。理論的には、視覚に与える影響が大きいとされ、両端である赤と紫の中間である緑の波長で計算することも考えられる)、ピンホールの直径(mm) - 焦点距離の長さ(mm) は、0.2 - 25、0.3 - 56、0.4 - 100、0.5 - 156、0.6 - 225、0.7 - 306、0.8 - 400、0.9 - 506、1.0 - 625となる。 さらに前述のような、ピンホール径と「焦点距離」の関係があることから、次のような議論が成り立つ。幾何的に、イメージサークルの径は焦点距離に比例する。一方で理想的なピンホールの径は焦点距離の平方根に比例するのであるから、ピンホールの径が理想的であるとすると、 より大きなカメラで大きな像を得ようとするほど、像は暗くなるが解像度は上がる 小さなカメラで小さな像を得た場合、(撮像素子の解像度は相応程度には高い必要はあるが)像の解像度は下がるが明るい像が得られる というトレードオフがある(得た像の引伸しは理想的にできるものとする)。前者の理由により、作品づくりを探求するピンホール写真家はブローニー判やシートフィルムなど大きな感光材料を使うが、その場合(コストや取扱いの面倒さは置くとして)代償として長い露光時間か明るい被写体を必要とする。その逆が超小型ビデオカメラの類で、(ピンホールレンズ等と俗称しているものはレンズを併用しているが)NTSCでは走査線は525本であるなど解像度はたいして必要なく、撮像素子もフィルムカメラのイメージサイズに比べて極めて小さい一方、1コマあたりの露光時間が限られるため明るい像が必要なわけであるが、そういった条件にうまく一致する。詳細は注のリンク先を参照のこと。 カメラを大型にした側の極北としては、太陽観測専用に、焦点距離4m・ピンホール直径2.6mmとした例が知られている。
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