バイキングによる生物探査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 08:39 UTC 版)
「火星の生命」の記事における「バイキングによる生物探査」の解説
詳細は「バイキング計画」を参照 1970年代中盤に行われたバイキング計画の主要な目的は、火星の土壌中の微生物を検出する実験を行うことだった。4つの実験が行われたうち、放射性同位体で標識した元素を用いた実験だけが有意な結果を出し、14CO2の濃度の上昇が見られた。科学者はこのバイキングの実験から2つの事実について合意を得た。1つは、検出された14CO2はこの実験で使われた元素から生成したこと、もう1つは、ガスクロマトグラフ質量分析計は有機分子を検出しなかったことである。しかし、これらの事実をどう解釈するかについては、大きな違いがあった。 実験の計画者の1人であるギルバート・レヴィンは、実験の結果は火星の生命の確定的な証拠だと信じていた。しかしこの結果は、土中の活性酸素によって生物なしでも同じことが起こりうるとする多くの科学者によって異議を唱えられた。またガスクロマトグラフ質量分析計は天然有機物を検出するために設計され、有機分子を検出するものではなかったため、この実験のデータは生命の証拠として合意を得ることはなかった。火星の生命に関するバイキングのミッションの結果は、専門家からはせいぜい決定的ではないものと評価されている。 火星は約40億年前に磁気圏を失ってしまったため、火星の電離層は太陽風や放射線を遮ることができず、これらは表面の土壌と直接反応するため、生物は存在できない。また、低い気圧と温度のせいで、一部で極僅かな期間を除いて、生命や代謝に不可欠な液体の水が火星の表面に存在できず、表面から見つかってもいない。 2007年、カーネギー研究所のセミナーで、ギルバート・レヴィンの実験の再評価がなされた。彼は自分の元のデータが正しいと信じ続けており、対照実験も整えていた。 土壌学者のロナルド・ペプは欧州地球科学連合会議で、近年火星の土壌からケイ酸塩鉱物が発見され、これは火星の表面全体で土壌生成が行われている証拠であるという発表を行った。ペプの説は、何十億年にも渡り火星の表面全体に水が存在し、植生や微生物の活動が存在したことを示唆した。 ラファエル・ゴンザレスに率いられたソーク研究所の研究チームは、バイキング計画で有機分子探査に用いられたガスクロマトグラフ質量分析計は、生物の低レベルの痕跡を探すには十分な感度がなかったと結論づけた。サンプルの取り扱い方が単純化されたお陰で、ガスクロマトグラフ質量分析計は将来の生物探査でも標準的な手法になると考えられているが、ゴンザレスらは将来の探査計画には他の検出手法も取り入れるべきだと主張している。
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