ドイツ福音主義教会の法的地位
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「ドイツ福音主義教会」の記事における「ドイツ福音主義教会の法的地位」の解説
1949年に制定されたドイツ連邦共和国基本法はキリスト教会の法的地位に関して、その140条で簡潔に「1919年8月11日のドイツ憲法136条、137条、138条、139条そして141条の規定は、この基本法の構成部分とする」と謳っている。この基本法の条文において、ドイツ連邦共和国基本法は1919年のドイツ憲法、いわゆる「ヴァイマル憲法」において定められたキリスト教会の法的地位をそのまま踏襲することを宣言している。キリスト教会に関する法的地位に関して、ヴァイマル憲法137条が重要である。 ドイツには国教会(Staatskirche)は存在しない。 各宗教団体は市民法の範囲内で国家から独立する。 宗教団体は以前と同様に「公法上の社団」である。 公法上の社団たる宗教団体は、ラント法の規定によって教会税を徴収する権利を有する。 1919年以降のドイツは君主を教会法上の首長(Summus Episcopus)とする国教会制の存続を否定している。ドイツのキリスト教会は国教会としての地位を失ったが、「公法上の社団」としての法的地位を獲得した。これによって、国教会ではないが国教会的特権を維持するというドイツの教会制度が確立した。その代表的特権は教会税の徴収である。ヴァイマル憲法138条で教会財産の保障、ラント法による宗教団体への公金給付、139条で宗教上の祝日設定、149条で公立学校での宗教授業の実施が規定されており、この特権的地位はドイツ連邦共和国におけるキリスト教会にも継承されている。教会税の徴収はドイツ連邦政府の徴税システムに組み込まれており、信徒は税務申告時に所属教会(ローマ・カトリック教会か福音主義教会の選択)を登録すると自動的に徴収される。公法上の社団としての法的地位を持つローマ・カトリック教会と福音主義教会の教会活動に対して、連邦政府や州政府から教会税とは別な補助金が多額に交付されている。国立大学には福音主義神学部が置かれ、聖職者と宗教教育教員の養成が公費によっておこなわれている。公立学校において宗教科教員による宗教教育が実施されている。その宗教教育の主目的は聖体拝領、堅信礼を受けるための教育であり、キリスト教の洗礼前教育が公費によっておこなわれている。以上のようにドイツのキリスト教会は第一次世界大戦後、公法上の社団として国教会的権利を維持しながら、国家からの監督、干渉(かつては宗務局という官庁によって国家の統制下にあった)を排して独立した存在になった。ヒトラー政権成立後、ドイツの福音主義教会は告白教会を結成し、教会の独立と信仰の自由を守るためにナチズムに対峙した。 第二次世界大戦後、ドイツの福音主義州教会はドイツ福音主義教会(EKD)として再出発した。1948年に制定されたドイツ福音主義教会(EKD)教憲35条で、「公法上の社団としてのドイツ福音主義教会(EKD)は、ドイツ福音主義教会連盟(DEKB)およびドイツ福音主義教会(DEK)の権利義務の担い手である」と法的地位の継続を謳った。つまり、ヴァイマル憲法によって得た公法上の社団としての地位を継承し、福音主義教会としての活動を以前と同様に継続することを決定したのである。その翌年の1949年にドイツ連邦共和国基本法によって、福音主義教会の公法上の社団としての地位は追認されたのである。その背後にキリスト教徒を支持基盤とするドイツキリスト教民主同盟(CDU)のアデナウアー政権の存在があった。
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