デフレーション懸念
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 16:28 UTC 版)
「日本のTPP交渉及び諸議論」の記事における「デフレーション懸念」の解説
「輸入デフレ論#貿易自由化」も参照 中野剛志は「TPPに参加するための農業構造改革」はデフレをさらに悪化させるので問題があり、たとえ効率性を上げるための改革に着手するにせよ、デフレを悪化せさないためにも、日本経済全体がデフレを本格的に脱却してからにすべきだとしている。また、2011年現在ある自由貿易の国際ルールや主流派経済学は、貿易自由化がデフレを悪化させるという事態を考慮に入れておらず、「デフレが懸念される場合、関税を上げてよい」という柔軟な国際ルールはできそうにもないとしている。 中野は「関税を撤廃し自由に取引すれば、その結果については全てフェアである」という主張に対しては、売り手と買い手で合意した値段が常にフェアであるとはかぎらず、市場で取引される値段とは違う「フェアな価格」があると反論している。これが普通の価格という社会的な合意、常識的な合意があり、それから逸脱した価格には人間は不快感や不公平感を覚えるとしている。 川崎研一は「価格効果の面では、関税撤廃に比べて為替レートの変動の影響の方が大きい」と指摘している エコノミストの片岡剛士は「貿易自由化を進めることで、デフレから脱却することや円高を是正する可能性は低い。デフレ対策を進めることで、円高を是正することによる輸出促進効果はあるとはいえ、デフレは貿易自由化で期待される相対価格の歪み是正とは異なる問題である。デフレ対策をやらないのであれば短期的には何をやっても意味はないというのは、貿易自由化の効果が大きくはなく、かつ長期に渡り効いていくと考えられることからも正しい。しかしデフレから脱却できなければ何を行っても無駄というのではなく、デフレ脱却と貿易自由化の相乗効果から緩やかなインフレーションをともないながら成長力(生産性)の強化にもコミットすることが、むしろ必要である」と指摘している。 若田部昌澄早稲田大学教授は「現在(2011年)の円高はデフレとコインの裏表の関係にあり、TPPに入っても為替が円高に振れるならば元も子もない。TPPの利点を最大限に生かすためにも円高を是正すべきである。しかし、円高対策のほうが重要であるからといって、TPPの問題が重要でないということにはならない。ここで念頭に入れておくべきは『政策割り当ての原理』であり、これは原則として二つ望ましい政策目標があれば、二つの政策手段で対応するのが合理的とする考え方である。もちろん、デフレ脱却、円高是正を進めることで関税撤廃やルール交渉に影響が生じるのならば別の話である。しかし、TPP反対論者の多くはデフレと円高が進んでいるところでTPPを推進するのはおかしいといっているのだから、デフレ脱却、円高是正政策を推進することに何ら反対する理由はないはずである」と指摘している。 原田泰は「物価は金融政策で決まる。日本銀行は2%の物価上昇率目標を指示し、それを日銀に守らせる協定を結ぶという、インフレ目標政策を採用している。この政策によって日本はデフレから脱却できる。TPPがデフレをもたらすという議論の誤りが事実によって証明されるだろう」と指摘している。
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