ダム技術と堆砂対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/24 18:54 UTC 版)
大井川は流域が糸魚川静岡構造線に沿っている事から山地の崩壊が激しく、土砂流出が多い。このため流域のダムは堆砂が進行しており、支流の寸又川上流に建設された千頭ダムは堆砂率98.1%と全国一である。長島ダムにとって、堆砂の進行は特に治水機能に重大な影響を及ぼすため、建設当時から堆砂対策が重要な課題となっていた。 建設省は、長島ダムの上流部に大規模な砂防ダムを建設し、貯留した堆砂を定期的に除去する事でダムの堆砂を防除する対策を採った。こうして建設されたのが長島貯砂(ながしまちょさ)ダムである。この貯砂ダムは長期供用されるダムとしては日本で初の施工例となるCSG工法を採用した砂防ダムである。 CSG(Cemented Sand and Gravel、直訳すると「セメントで固めた砂礫(されき)」)とは、河床砂礫や掘削土砂をセメント・水と混ぜて出来たセメント系固化材を台形状に形成して建設する方式のダムである。日本で開発された型式であるが、長島ダムではこの貯砂ダムのほか、ダム上流部の仮締切(ダム建設時に河水を転流させる際、ダム本体へ水が来ないようにせき止める堰堤)でも同様の型式が採用されている。経済性にも優れ、コンクリート製のダムに比べ総工費を5%程度圧縮する事に成功した。なお長島貯砂ダムのCSGは、外部コンクリートにレディミクストコンクリート(生コン)を使用したことや骨材の岩級区分行われたため、本来のCSG工法ではなく、RCD工法用のコンクリートを改良したものとされる(日本初の台形CSGダムの施工例は、大保ダムの脇ダム沢処理工である)。 貯砂ダムは満水時には完全に水没して見えなくなるが、それ以外では姿を現す。こうした貯砂ダムに加え、海砂採取に使う特殊エジェクターという設備を利用した新しい堆砂技術を近年導入している。この特殊エジェクターは高圧水によって排砂管内部に真空を発生させ、その圧力を利用して堆砂を吸収しダム下流や土捨場に排出するというものである。間組と京都大学が開発したものであるが、砂密度90%以上の堆砂も吸収できることから新たな堆砂対策として期待されている。
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