タイタニック号のSOS
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1912年4月15日、ホワイト・スター・ラインの「タイタニック号(RMS Titanic)」が沈没した際には、同船のマルコーニ局MGYが遭難信号CQDを発信し、後になってSOSも打った。同船のSOSが世界初という説もあるが後述の通り誤解である。 タイタニック号のマルコーニ局MGYの無線通信士、ジャック・フィリップスは命を落としたが、ハロルド・ブライド通信士は救助され、4月18日夕方、ニューヨーク港に生還した。そしてニューヨーク・タイムズ紙の記者がブライド通信士に独占インタビューし、その証言を翌日掲載した。 遭難信号の送信に関する部分を記事"THRILLING STORY BY TITANIC'S SURVIVING WIRELESS MAN: Bride Tells How He and Phillips Worked and How He Finished a Stoker Who Tried to Steal Phillips's Life Belt" The New York Times (1912年4月19日 Page1)より下表左に引用する。またこのニューヨーク・タイムズの記事の日本語訳をジャック・ウィノカー著 佐藤亮一訳 『SOSタイタニック号』(1991年 恒文社 pp395-396)から下表右に引用する。 これがタイタニック号の遭難信号の扱いに関し、船長と通信士の間でどんなやり取りが行なわれたかを世界で最初に報じた新聞記事である。 "Send the call for assistance," ordered the Captain, barely putting his head in the door."What call shoud I send?" Phillips asked."The reguration international call for help. Just that." Then the Captain was gone. Phillips began to send "C.Q.D." He flashed away at it and we joked while he did so. All of us made light of the disaster.Joked at Distress Call. We joked that way while he flashed signals for about five minutes. Then the Captain came back."What are you sending?" he asked. "C.Q.D.," Phillips replied.The humor of the situation appealed to me. I cut in with a little remark that made us all laugh, including the Captain."Send 'SOS.," I said. "It's the new call, and it may be your last chance to send it."Phillips with a laugh changed the signal to "S.O.S." 「救助信号を送れ」と、船長はドアから顔を突っ込むなり、いきなり命令した。「なんの信号を送るのですか?」とフィリップスが尋ねた。「規定の国際救助信号だ。それだけだ」 そう言って船長は姿を消した。フィリップスは「CQD」を送りはじめた。信号を送りながらもわれわれはまだ冗談に興じていた。みんな災害を軽くみていたのだ。冗談を言いながら遭難信号 われわれは冗談を言いながら、約五分間、信号をつづけた。そのとき、船長がやって来た。「なんの信号を送っているのか?」と尋ねた。 「CQDです」とフィリップスが答えた。その場の雰囲気はなごやかで、私もちょっと口をはさみたくなった。私の言葉には、船長を含めて、みんなが笑った。「SOSを送れ。新しい信号だ。二度とこれを送るチャンスはないかもしれないからね」と私は言った。フィリップスは、笑いながら信号をSOSに変えた。 ブライド通信士の証言をもとにしたこの記事によると、船長が国際救助信号(The reguration international call for help)の発信を命じたにもかかわらず、フィリップス通信士は(1906年のベルリン国際無線電信会議で採択され、1908年7月1日に発効したSOSではなく)、マルコーニ社の社内規定によるCQDを使用した。そのあとでブライド通信士がフィリップス通信士にSOSを使ったらどうかと提案し、それが実行された。しかしあくまで結果論だが、タイタニック号の救助に駆け付けたキュナード・ラインの「カルパチア号」もまた遭難信号をCQDとするマルコーニ局(呼出符号MPA、使用周波数1,000kHz/2.7MHz)であった。 このブライド通信士の証言によるニューヨーク・タイムズの記事は多くの書籍や映画の出典資料として長年利用され続けている。その都度、引用者による独自の補足や脚色が付け足されるため、いろんな派生系がみられ、誤解釈されていることもある。
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