ジョゼフ・パップ版
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「ペンザンスの海賊」の記事における「ジョゼフ・パップ版」の解説
1980年、ジョゼフ・パップ(英語版)とニューヨークのパブリック・シアターが、ウィルフォード・リーチ演出、グラシエラ・ダニエレ振付により、『ペンザンスの海賊』をセントラル・パークのデラコート劇場で上演した。これは毎年夏に行われるシェイクスピア・イン・ザ・パークの一環であった。音楽監督とアレンジはウィリアム・エリオットがつとめた。この公演はプレビュー10回、本公演35回上演された。その後ブロードウェイに移り、1981年1月8日に開幕した後、ユーリス劇場とミンスコフ劇場でプレビュー20回、本公演787回上演された。この『ペンザンスの海賊』は熱狂的な好評で迎えられた。トニー賞に7部門でノミネートされ、最優秀リバイバル賞、リーチの最優秀ミュージカル演出賞、ケヴィン・クラインのミュージカル主演男優賞の3部門で受賞を果たした。ドラマ・デスク・アワードでも8部門で候補になり、最優秀ミュージカル賞や演出賞を含めた5部門で受賞した。 伝統的な上演に比べると、パップの『ペンザンスの海賊』では海賊王やフレデリックがより賑やかに剣戟で暴れ回り、歌唱やユーモアもおおらかでミュージカル風であった。リブレットはそれほど変更されていなかったが、オーケストレーションやアレンジは新しいもので、キーの変更、繰り返しの追加、ダンス音楽の延長などのほか、譜面に細かい変更も加えられていた。ギルバート・アンド・サリヴァンの他のオペラである、『ラディゴア』の3人で歌うパターソングと『軍艦ピナフォア』の"Sorry her lot"が途中に挿入された。このプロダクションはギルバート・アンド・サリヴァンがニューヨーク初演用に最初に準備したエンディングを使用しており、第2幕のフィナーレで少将の歌の反復がある。リンダ・ロンシュタットがメイベル役、レックス・スミスがフレデリック役、ケヴィン・クラインが海賊王役、パトリシア・ラトリッジがルース役(ブロードウェイにトランスファーした後はエステル・パーソンズに交替)、ジョージ・ローズが少将役、トニー・アジトが巡査部長役であった。クラインがトニー賞を受賞した他、スミスがシアター・ワールド賞を、クラインとアジトがドラマ・デスク・アワードを受賞した。ブロードウェイでの上演中には何回かキャスト替えがあり、ジェームズ・ベルーシが海賊王を演じたこともある。1981年にはロサンゼルスでも上演され、バリー・ボストウィックが海賊王を、アンディ・ギブがフレデリックを演じた。 パップ版のロンドンでの上演が、ドルリー・レーンのシアター・ロイヤルで1982年5月26日に始まり、おおむね好評で601回上演された。ジョージ・コールやロナルド・フレイザーが少将を、パメラ・スティーヴンソンがメイベルを、マイケル・プレイドやピーター・ヌーンがフレデリック、ティム・カリー、ティモシー・ベンティック、オリヴァー・トバイアス、ポール・ニコラスが海賊王を、クリス・ランガムが巡査部長を、アニー・ロスがルースを、ボニー・ラングフォードがケイトを、ルイーズ・ゴールドがイザベルを演じた。 オーストラリア版は、1984年1月にジョン・フェラーロ演出、ジョン・イングリッシュが海賊王役で、メルボルンのヴィクトリアンアーツセンターで開幕した。パップ版の影響で、ドイツなどヨーロッパ中で英語以外の言語による上演も行われた。 パップ版は1983年に映画化された。ブロードウェイで上演された際の主要キャストの多くが同じ役柄で出演したが、ルース役はエステル・パーソンズではなくアンジェラ・ランズベリーが演じた。端役はブロードウェイ版に倣ってイギリスの俳優が起用された。パップ版の成功のせいでオペラ『ペンザンスの海賊』をヒントにした別の映画『パイレーツ・ムービー』が1982年に作られ、ブロードウェイでの上演中に封切られた。 伝統的なオーケストレーションや譜面を採用する場合であっても、パップ版のプロダクションデザインを模倣する『ペンザンスの海賊』の上演が増加した。しかしながら、こうしたパップの影響下にあるリバイバル全てが1980年版のオリジナルほど熱狂的な好評を得られたわけではなく、1999年のUKツアーは辛い批評も受けた。パップ版のために作られたデザインと楽曲アレンジは著作権で保護されている。パップのロンドン版が上演される前にダブリンで1982年に上演された無許可のプロダクションは、訴訟によってロンドンへのトランスファーが差し止められた。
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