シヴァ祠堂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 14:28 UTC 版)
一辺110メートルである内苑と中央祠堂群は、3つの寺苑のなかで最も神聖であり、そこは四方の基点それぞれに石門を持つ正方形の石壁に囲まれた方形の基壇となる。この最も神聖な寺苑は、8基の主要祠堂などにより構成されている。トリムルティ(三神一体)と称される3基の主要祠堂は、創造神ブラフマー、維持(救済)神ヴィシュヌ、破壊(再生)神シヴァの三大神に捧げられている。 シヴァ祠堂(チャンディ・シワ)は、全高47メートル、幅34メートル四方で、プランバナンのロロ・ジョングラン寺院複合体のなかで最大であり、最も高い建造物である。正面の階段は東側に位置し、この祠堂の基壇にある幅2メートルの回廊の欄干(欄楯〈らんじゅん〉)ならびに5段の角塔それぞれの頂部には、塔形飾り(宝冠、ラトナ、梵: rátna)が施されている。また、シヴァ祠堂の回廊は、欄干内壁に刻まれた『ラーマーヤナ』の物語を伝える浅浮彫りの装飾によって囲まれている。その物語を順序通りにたどるには、東側より入り、右饒(うにょう〈プラダクシナ、pradakshina〉) つまり右回り(時計回り)に周行(英語版)していく。この『ラーマーヤナ』の浮彫り(レリーフ)は、ブラフマー祠堂の回廊の欄干に続いている。 シヴァ祠堂は中央に位置し、祠堂内には四方の側室4室と、中央部にある主室1室からなる5つの部屋がある。東正面の側室からは、高さ3メートルの最高神シヴァ・マハーデーヴァ(シワ・マハデワ、尼: Siwa Mahadewa)像を安置するプランバナン最大の祠堂中央の主室に通じている。この像には、冠にある髑髏(どくろ、頭蓋骨)と三日月(鎌)、額の第三の目など、シヴァの属性ないしシンボル (Lakçana) があり、また、4本の腕には、シヴァを象徴する数珠、払子(ほっす)などを持ち、三叉槍(トリシューラ)を脇に立て掛ける。このシヴァのマハーデーヴァ(「偉大な神」の意)として描写された像は、王ピカタンの肖像とも、王バリトゥンをシヴァの生まれ変わりとして神格化したものであったともされる。シヴァ・マハーデーヴァ像は、台座の北側に蛇ナーガの彫刻が施されたヨニ(英語版)の台座にあるハス(スイレン)の上に立っている。 そのほか3房の側室には、それぞれシヴァと関係の深いヒンドゥー教の神像があり、南の側室に聖仙(リシ)アガスティヤ(またはバターラ・グル(英語版)〈シヴァの化身〉とも)、西の側室にガネーシャ(シヴァの息子)、北の側室には女神ドゥルガー(シヴァの妻、「寄りつけぬ者」の意)像が安置されている。ドゥルガ・マヒサスラマルダニ(Durga Mahisasuramardani〈マヒシャースラマルディニー、「マヒシャ・アスラを殺す者」の意〉)像は、魔王マヒシャが取り憑いた(化身)牛を負かして背上に立つドゥルガーが描写される。このドゥルガー像は、王女ロロ・ジャングランのジャワ伝説に由来するロロ・ジャングラン像とも呼ばれる。
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