シェイクスピアの『ハムレット』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 17:57 UTC 版)
「ローゼンクランツとギルデンスターン」の記事における「シェイクスピアの『ハムレット』」の解説
『ハムレット』の登場人物の多くが古典的な(ギリシャ・ローマ的な)名前を持つのに対し、ローゼンクランツとギルデンスターンは「デンマーク人にありふれた」名前である。こういった名前はフレデリク2世やクリスチャン4世の宮廷に、またヴィッテンベルク大学(ハムレットが学んだ場所であり、彼はローゼンクランツとギルデンスターンを「2人の学友」と呼ぶ)にもよく見られた。 ローゼンクランツとギルデンスターンは第2幕第2場にて初登場する。王位を簒奪したハムレットの叔父クローディアスの命に従い、慇懃な言葉でおべっかを使って幼馴染ハムレットの信頼を得、その実は彼の内心を探ろうとする。ハムレットは「大親友」として2人を歓迎しつつも彼らの装いを見破り、密命を受けた彼らと自分とが「正直につきあう」ことはできないと述べる。彼の周囲にはホレイショーを除けば味方がいないのを悟り、2人に向かって「自然の傑作たる人間」について語る。 第3幕に入るとハムレットはもはや見せかけの友情を捨て去り、第2場では冷徹に2人を突き放す。これは、彼が劇中唯一"Royal We"(尊厳の複数)を使用している場面である。第4場ではハムレットは母に対し「(ローゼンクランツとギルデンスターンは)俺にとってはマムシだ」と述べる。 ハムレットがポローニアスを殺した後、クローディアスはハムレットにイングランドへの外遊を命じ、ローゼンクランツとギルデンスターンを供につける。そして、ハムレットの殺害を指示するイングランド王宛ての手紙を2人に預けるが、シェイクスピアは明示していないものの2人はその手紙の内容を知らないようである。旅の途中、疑い深いハムレットは手紙を見つけ出し、ローゼンクランツとギルデンスターンを殺させるように書き換える。船が海賊に襲撃されたのを利用してハムレットはデンマークに舞い戻るが、ローゼンクランツとギルデンスターンはそのまま死出の旅を続ける。第5幕第2場で、ハムレットは「奴らは俺の良心にかすりもしない。奴らの破滅は奴ら自身が招いたことだ」と述べ、その後イングランドの使者が「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」と告げる。 2人は宮廷に巣食う小悪党としてハムレットとクローディアスの対立を盛り上げる。ハムレットの復讐に巻き込まれ、自分たちの死をもたらす手紙をそうと知らずにイングランドへ届けるという哀れな役回りだが、それもクローディアスの陰謀に加担したことへの報いとして、シェイクスピアは彼らの死を観客の求める勧善懲悪の枠内に収まるものと考えている。2人は劇中ほとんど一緒に行動しているが、ファースト・フォリオ(第一・二折版)の第4幕第3場のみ、ギルデンスターンがローゼンクランツに4行遅れて登場している。
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