グラーフのピアノ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/30 23:05 UTC 版)
「コンラート・グラーフ」の記事における「グラーフのピアノ」の解説
当時のピアノには典型的であったが、グラーフの楽器に使用された金属製の補強はかなり少なかった。唯一金属を用いた構造部はギャップ・スペーサーであった。これは弦がアクションと上部で交差する位置に生じる隙間の構造を補強するもので、それ以外の構造は全て木製であった。弦は真っ直ぐ、すなわち現代のピアノのように低音部の弦が高音部と交差するのではなく全ての弦が平行に張られていた。音域はC1からf4またはg4までをカバーした。3本から4本のペダルが備えられており、標準的なサステイン・ペダルの他にソフト・ペダル、バスーン・ストップ、ピアノとピアニッシモの調節器、トルコ音楽の演奏に用いるジャニサリー・ストップなどがあったものと思われる。 金属製フレームを使用していなかったにもかかわらず、グラーフのピアノは高い強度を誇った。ワイスは次のように説明している。「フレームの素材には5層構造の薄く加工したオークやトウヒを貼り合わせて使用し、各接続部とベリーレールを煉瓦のようにかみ合わせることで並外れて頑丈なフレームを生み出したのである。」ケースにも薄板が貼り合わせてあり、現代のグランドピアノに一般的な多層構造で出来上がっていた。この丈夫な構造により、グラーフの時代には弦の本数や張力が増加すると常に問題になっていた歪みを防止することができた。 グラーフを含むウィーン式のピアノは鍵盤が解放された後の効果的な消音によって知られていた。グラーフは様々な方法を用いてこれを実現した。ダンパーは低音側で大きくなるようサイズ分けされており、高音側では羊毛、低音側では皮革というように素材も分けられていた。ダンパーの重量も調節されており、低音側がブナなどの重い木材で作られる一方、高音側はライムでできていた。最低音の13から17のダンパーには鉛で重しがされていた。 グラーフの一部のピアノの興味深い点は第2響板の存在である。これはブリッジを持たず、弦の上部に浮いているだけのものだった。ワイスによると、第2響板の目的は音を「より豊かにし、より混ざり合わせる」ことだったという。右の写真の楽器にはそうした響板が確認できる。 外装は大部分が装飾を施さない状態で残され、それによってクルミ材やマホガニーでできた突板の木目の合わせの美しさが強調された。写真の楽器では木目の合わせが線対称となっている様がわかる。白鍵には象牙、黒鍵にはコクタンを使用するのが標準であった。 作りが頑丈であったため、グラーフのピアノは長く残ることができた。60台を超える楽器が今日現存しており、その多くをヨーロッパやアメリカ合衆国の楽器博物館で目にすることが出来る。 1つの例外を除いて、現存するグラーフのピアノはグランドピアノである。例外とは1829年製作のピラミッド・ピアノのことであり、委嘱を受けて製作されたこの楽器はカリアティード、装飾用の瓶、その他の彫刻で贅沢に飾り付けられている。この楽器はデン・ハーグの市立美術館(英語版)に収蔵されている。
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