ガス移動の痕跡と洞内生物相
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/12 15:06 UTC 版)
「大根島第二熔岩隧道」の記事における「ガス移動の痕跡と洞内生物相」の解説
出入口の階段を下り左右に延びるA洞は、高さ約2メートル、幅は3メートル以上はあって、右側(東側)の神溜り(洞内火口)から左方向(西側)へ溶岩の流れた痕跡が鮮明に残されている。階段下部突き当り付近のA洞の壁面には「御饌(みけ)の棚」と呼ばれる棚状の形状があり、その棚と洞窟底面との間の壁面は、洞窟形成活動中で最も低い粘度の溶岩が壁面に沿って固結したもので、美しい曲線が残されている。 A洞のその先は危険防止のために、今日は一般の立ち入りが禁止されているが、御饌の棚より30メートルほど進むと、右側の壁に円形トンネル(支洞)があって、その奥に「天台」「産屋」と呼ばれる、かつてはガス溜まりであった洞窟空間(B洞)が形成されている。A洞からB洞に通じる支洞である円形トンネルは、洞窟形成時に発生した火山性ガスの通り道になった移動路で、詳細な検証の結果、B洞(天台・産屋ガス溜まり)空洞に溜まった高圧ガスが、圧力によって円形トンネルをつくりA洞へ突き抜け、火山洞窟学用語でパラレルライン と呼ばれる溶岩鍾乳がガス圧によって押しやられ、平行線状の痕を残すガス移動の証拠となる痕跡がA洞の天井部で確認された。このパラレルラインはA洞の上流部にあたる、神溜り(洞内噴火口)方向に向かって天井部に溝状のラインとして残されている。 また、同時に行われた生物相調査により洞内で14種以上の生物群が確認されており、そのうち真洞窟生物の可能性のあるものとして、放線菌の一種(洞内全域)、ダニ目の一種(A洞奥部)、キョウトメクラヨコエビ(A洞奥部)、コムカデの一種(洞口部・A洞奥部・産屋)、トビムシ目の一種(神溜り・産屋)の5種が確認された。また、チビゴミムシ亜科の一種で本洞固有種であるイワタメクラチビゴミムシの7匹目が採集された 本洞周辺の大根島中央部付近には小規模な高台、盛り上がりが観察されるが、第二熔岩隧道のある小規模な高台の成因は、神溜り火口の形態観察により、噴火の終息時に噴出していた溶岩の盛り上がりであることが判明した。また、隣接する松江市立義務教育学校八束学園の敷地内には、ガス溜り空洞の小規模な陥没が存在しており、大根島の地中には多数の空洞、洞窟が生成されているものと考えられている。 大根島第二熔岩隧道は常時施錠されており無断で立ち入ることは出来ないが、事前に松江市観光協会八束町支部へ見学の希望を申し込むことにより、島根県自然観察指導員同行のうえ洞内の一部を見学することができる。
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