インピーダンスとは? わかりやすく解説

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インピーダンス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/20 01:23 UTC 版)

インピーダンス: impedance)は、オリヴァー・ヘヴィサイドの造語で、交流回路における電気抵抗と同等の位置づけを持つ[1]

直流回路ではその部分の電圧降下は、その部分の導線の電気抵抗電流で一意に決まり、オームの法則で表せるが、交流回路においてはコンデンサやコイルが電気振動による電磁場の影響を受けるため、単純に電圧降下電流が決まらず、その回路の電圧電流の変化には時間差が生じる。そのため交流回路では位相の変化を伴う電圧降下が生じる。この効果も考慮した比例定数がインピーダンスであり、複素数で表される。単位は直流回路の電気抵抗と同じオーム(単位記号はΩ)が用いられる。

電気回路におけるインピーダンス

インピーダンス
impedance
量記号 Z
次元 M L 2 T −3 I −2
種類 複素数[2] あるいは ガウス平面上のベクトル[3][4]
SI単位 Ω
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電気回路におけるインピーダンスは、交流回路におけるフェーザ表示された電圧と電流の(電圧/電流)である。インピーダンスの逆数をアドミタンスという[2]。 インピーダンスの実部をレジスタンス、虚部をリアクタンスということがある。

ある電気回路からの出力とその次の電気回路の入力を接続する場合、前者と後者のインピーダンスが一致した場合に最も効率よく信号のエネルギーを伝達できる。無線機とアンテナの場合など、整合が取れていない場合は、エネルギーが出力(この例の場合、電波)に効率良く変換されないわけであるが、そのような状態を、不整合(インピーダンス不整合)により信号が反射されているなどと言う。オーディオ機器などで効率を問題としない接続の場合は、接続の簡便性を優先し、いわゆる「ロー出しハイ受け」(機器の出力インピーダンスはごく低く、入力インピーダンスは高めに)とし、信号をもっぱら電力ではなく電圧で伝達する。他方、電力ではなく電流で伝達するものがMIDIテレタイプ端末で使われているカレントループで、回路構成は面倒になる。

以下では電気電子工学の慣例に従い、虚数単位として

この節は、初学者のインピーダンス (Z) の概念への誤解を防止するために、正確な定量的議論をあえて避け多少の理論的矛盾は許容してインピーダンスの理解を助けるために設置されたものである。

本来の電気インピーダンスは、電気回路交流特性を示す尺度である。抵抗 (R) の電位差は電流と同相であり、それらの比は一定であるのでスカラー量又は絶対値だけ単純な議論で足りる。それに対し、コイル(以下、L)、キャパシタ(以下、C)を含む回路では電圧と電流とに位相差が生じる。また、抵抗 (R) は電圧・電流の積に由来してエネルギー消費が生じるが、交流RLC回路では電圧・電流に位相差があるため、その積は一定ではない。このため、各値を複素平面でベクトル表現(複素数表現)することが便利なのである。

交流回路における電圧と電流との比という電気インピーダンスの定義は、波動の圧力と流量との比として一般の波動・振動現象に拡張することができる。この場合の振動は、電気振動に限らず、電磁波、機械振動、音波(音響)、光、地震、水面の波などの多くの波動・振動現象に適用できると考えられる。電気インピーダンスの概念は、電気振動以外の波動・振動現象の説明にも便利なために、今では様々な分野で利用されている。

例えば、音波は空気の振動であるが、木、コンクリート、金属では音の伝わり方が異なる。医学で用いられる超音波エコー装置は、生体組織界面のインピーダンスの差による反射波を観測している。

インピーダンスはしばしば「インピーダンス = 伝わりにくさの指標」と誤解される。値が低いから波動が伝わりやすい、又は高いから伝わりにくいということは、エネルギー消費を伴う抵抗(実数成分としてのレジスタンス)では正しくても、インピーダンスでは正しくない。高周波伝送に用いられる600 Ω平行線路よりも52 Ω同軸ケーブルが伝わりやすいというのは、全くの間違いである。例えば、真空、純水、アクリル(ガラスより透明度が高く沖縄美ら海水族館の大水槽で使用されている)は光の伝播において透明という点では同じであり、理想的には減衰はないがそれらの界面では反射・屈折が生じる。高校物理ではこれを屈折率の違いによるものと説明しているが、別の観点では界面のインピーダンスの相違による反射波と透過波と表現することができる。小区間の海岸線付近での直正面からの波の進行もインピーダンスの概念で説明することができる。

脚注

出典

  1. ^ ポール・J・ナーイン『オリヴァー・ヘヴィサイド』海鳴社、2012、p.121
  2. ^ a b "インピーダンス". デジタル大辞泉,百科事典マイペディア,世界大百科事典 第2版,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,日本大百科全書(ニッポニカ),精選版 日本国語大辞典. コトバンクより2021年1月4日閲覧
  3. ^ 平山博『電気学会大学講座 電気回路論』 オーム社、1995年、ISBN 4-88686-103-2、pp.51-58
  4. ^ 内山喜之『電気学会大学講座 電気・電子基礎数学』 オーム社、1995年、ISBN 4-88686-104-0、p.1
  5. ^ インピーダンス | 用語集[リンク切れ] - KDDI 2016年3月31日(2018年3月26日閲覧)

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