アナモルフ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/05/18 19:30 UTC 版)
キリノミタケのアナモルフはKumanasamuha geaster の学名で呼ばれる(後述)が、ジャガイモ=ブドウ糖寒天培地その他の上では分生子を形成せず、ワイツマン=シルヴァ=ハンター氏の寒天培地(WSH培地:硫酸マグネシウム7水塩1 g、リン酸二水素カリウム 1 g、硝酸ナトリウム 1 g、クェーカー社製オートミール10 g、寒天20 gを蒸留水1000 mlに加えて加熱・滅菌する)を用いる必要がある。この培地上に、滅菌したイチイガシ・ツクバネガシ・アラカシ (Quecus glauca Thunb.)・ウラジロガシ (Quercus salicina Blume)・シラカシ(Quecus myrsinifolia Blume)などの葉の断片を載せて25℃前後で培養すれば、葉面にK. geaster の集落が形成され、分生子が作られる。集落は黒褐色を呈し、ビロード状に毛羽立ち、キリノミタケの子実体が発生した木材表面に形成されたものと区別がつかない。また、K. geaster は、キリノミタケの子実体の発生地で集められた樹木の枯れ葉(あるいは生葉)を用い、表面殺菌処理の後で素寒天培地に植えつけることによっても培養することができ、ホソバタブ(Machilus japonica Kosterm.)やアラカシあるいはハナガガシ(Quercus hondae Makino)などの常緑樹の葉面に径 1 mm以下の集落を作り、多数の分生子を形成する。 K. geaster の集落は褐色・綿毛状をなし、基質の上を這う菌糸と空中に立ち上がる菌糸(気中菌糸)とからなる。これらの菌糸はともに淡褐色を呈し、その外面は不規則ないぼ状突起におおわれている。分生子形成構造(コニディオフォア Conidiophore)は気中菌糸に混在して形成され、上部で分岐し、菌糸外面は細かく不規則ないぼ状突起を備える。上部の分岐の先端に、2-15本の分生子形成細胞(上端が細まり、アンプル状ないし瓶状を呈し、暗褐色を呈するが先端部に近づくほど淡色となる)を作り、その上に分生子を形成する。個々の分生子は粘液におおわれることなく乾いており、卵状ないし楕円体状で暗褐色かつ薄壁、粗大ないぼを備え、内部に隔壁を持たない。 アナモルフの形態学的な所見に基づく所属については、Conoplea 属の一種とし、C. elegantula (Cooke) M. B. Ellis に近いものであろうとする説と、Kumanasamuha 属の一種K. kalakadensis Subram. & Bhat であると考える説とがあったが、九州におけるキリノミタケ発生地に自生する、各種の常緑樹の生葉を用いた培養試験によって得られた菌株を詳細に検討した結果Kumanasamuha 属に所属すると結論された。さらにKumanasamuha 属の他の種では、分生子形成細胞は球状ないし楕円体状をなすのに対し、キリノミタケのアナモルフにおいては、分生子形成細胞が特徴的なアンプル状を呈することから、一新種としてK. geaster H. Nagao, S. Kurogi & E. Kiyota の学名が与えられた。なお、Kumanasamuha の別の一種であるK. sundara P. Rag. Rao & D. Rao は、クロチャワンタケ科のオオゴムタケ属(Galiella)に置かれるG. javanica (Schw.) Nannf. & Korf(日本未産)のアナモルフである。
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