もうひとつの100年以上待ちわびた勝利
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/23 10:15 UTC 版)
「2016年のワールドシリーズ」の記事における「もうひとつの100年以上待ちわびた勝利」の解説
沿道でパレードを見守る観衆のなかに、ラグビーユニオンのニュージーランド代表 "オールブラックス" の姿があった。なぜ彼らがそこにいたかというと、翌5日にソルジャー・フィールドでアイルランド代表とテストマッチを行うためである。オールブラックスの宿舎はミシガン通りの近くにあり、ジュリアン・サヴェアら一部の選手はカブスが優勝を決めた瞬間もテレビ中継で観ていたという。パレードへ出かけるとアーロン・スミスやサム・ケインらは野球ごっこに興じ、オールブラックスの前をカブス一行が通過する際には、TJ・ペレナラとワイサケ・ナホロがそれぞれサヴェアとオーウェン・フランクスに肩車してもらって光景を視界に収めた。今回のオールブラックス北半球遠征スコッドのうち、ここに名前の挙がった選手たちは2015年のワールドカップで優勝を経験している。彼らは10月31日の決勝戦に勝利すると、開催地イングランドから地球の裏側にある母国に帰り、この日のカブスからちょうど1年前の11月4日に同国最大都市オークランドでパレードをしていた。そんな彼らにとっても、今回のカブス優勝記念パレードは強く印象に残るものとなった。ペレナラは「うちの国の総人口より多い人数がここに来てるのか」「桁違いだな」と感嘆していた。 アイルランド代表はその日の朝、パレードによって大通りが塞がっていたため、ソルジャー・フィールドへ練習に向かうのに警察の先導で地下道を通らなければならなくなった。主将のローリー・ベストは午前の練習を終えると、トランプ・インターナショナル・ホテル・アンド・タワー内の宿舎に戻り、17階からパレードを見下ろして「信じられない」と漏らした。しかし外に出て見に行くことはせず、パレードの最中に記者会見に臨み「オールブラックスには敬意を払わねばならないが、かといって戦意を喪失したり怖気づいたりしてもいけない。フィールドに出たら俺たちのゲームプランを試合終了まで貫いて、最後は彼らに勝たないと」と意気込みを語った。両国のテストマッチは、1905年11月の初対戦以来これまでに28試合が行われ、オールブラックスが27勝1分と圧倒している。今回はカブスが108年ぶりの優勝を決めた直後にカブスの本拠地都市で対戦するということで、次はアイルランド代表111年目の初勝利なるかとファンの期待が高まっていた。代表HCのジョー・シュミットも、そのことに「いやぁ、私は迷信を信じるような人間じゃないんだ。1908年と1905年、確かに似ているがそれだけだよ」と否定的ながらも言及した。 テストマッチ当日、ソルジャー・フィールドには6万2300人の観衆が集まった。その多くはアイルランド代表のファンで、場内の雰囲気はベストが「第二のホーム」と表現したほどだった。試合は午後3時に始まり、アイルランド代表は開始3分で3点を先制すると、前半だけで3トライを挙げるなど試合を優位に進め、25-8でハーフタイムを迎える。後半に入るとオールブラックスが反撃に転じ、64分には33-29と4点差にまで追い上げるが、アイルランド代表は残り5分でロビー・ヘンショーがトライを決めて突き放し、40-29で勝利を手にした。試合後にロブ・カーニーは「この試合に全力を尽くした我々は勝利に値すると思う。カブスが勝ったあとのこの週末、シカゴには何かが起こりそうな空気があった」と、本拠地にも敵地にもない独特の雰囲気を指摘した。オールブラックスHCのスティーブ・ハンセンは「あの500万人パレード、うちの選手もほぼみんな見に行ってたよ。それが翌日の試合に負けた主な原因かどうかはわからないが、普段ならテストマッチ前日にやるようなことではないのは確かだ」と、カブスに気を取られて試合に集中していなかった選手の存在を認めた。
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