【戦略爆撃】(せんりゃくばくげき)
敵国の工業力を低下させ治安を悪化させる目的で、敵国の工場、補給路、都市機能などを破壊する爆撃。
現代ではミサイルや誘導爆弾を用い、要人を公然と暗殺し政府を転覆させる手段の一つとして用いられている。
正面戦力を攻撃するわけではないので即効性に欠けるが、敵国の後方を乱して士気を落とし、継戦能力を奪う事ができる。
戦略爆撃の思想は、イタリアの軍事学者ジュリオ・ドゥーエが第一次世界大戦の戦訓を元に提唱した理論に始まる。
ドゥーエは航空戦力の第一の目標は敵国の都市・産業であると定め、そのために爆撃機を重要視する。
この思想は全世界の軍事学者に多大な影響を与え、後の第二次世界大戦において戦略爆撃が多用される事となる。
ただし、この思想は第二次世界大戦を見ないまま死去した人物の個人的考察であり、多くの主張は現代までに通用しなくなっている。
戦略爆撃についても、国家総力戦が常識であった当時には許容されていたリスクが、今日では重大な法的制約となっている。
「都市と産業に対する戦略爆撃」は第二次世界大戦では奨励されていたが、現代の紛争では明らかに戦争犯罪である。
少なくとも、現代の民主主義国家が「数十万人の民間人を殺害したり破産させたりする合法的な理由」を用意するのは事実上不可能に近い。
純軍事的に見た場合でも、戦略爆撃にどれだけの価値があるかについては大いに疑問の余地がある。
航空優勢を獲得したなら、その有利が保たれているうちに軍事目標を撃破し、敵戦力を削ぎ、さらなる有利を得るべきである。
敵軍の備蓄資材が尽きるほどの長期戦を想定していない限り、そこで敵国の工業生産力に爆撃機を振り向ける意味はない。
そして長期に渡る国家総力戦は、大量破壊兵器の脅威が迫る現代においては断じて採用すべきでない決断となっている。
とはいえ、非対称戦争においては暗殺の手段としての戦略爆撃が已然として有効性を保っている。
非対称戦争における小国側はそもそも兵器の自給体制を整えていない事が多く、都市の生産力に対する戦略爆撃はやはり有効でない。
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