『教皇インノケンティウス10世』
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「ディエゴ・ベラスケス」の記事における「『教皇インノケンティウス10世』」の解説
1649年、ベラスケスは2度目のイタリア旅行に出かけ、ローマに2年ほど滞在している。この間に描かれた教皇インノケンティウス10世の肖像は、カトリックの最高位にある聖職者の肖像というよりは、神経質で狡猾そうな一人の老人の肖像のように見える。国王、教皇から道化師まで、どのようなモデルをも冷徹に見つめ、人物の内面まで表現する筆力はベラスケスの特長である。 椅子に座るモデルの膝から上の部分が、画面の中心に大きく描かれている。モデルの背後は緞帳により完全に閉ざされている。これにより画面のほとんどはこの緞帳か教皇が身に着けた服飾、すなわちなんらかの繊維製品により占められている。それ以外の部分には椅子の木製あるいは金属の部分と、衣装から覗くモデルの顔と手が描かれている。人物像の周囲の余白はほとんどない。特にラファエロが描いた教皇レオ10世の肖像に見られたような、侍者など他の人物の姿や小道具は描かれていない。わずかに持物として左手の紙片が確認できる。この構図により鑑賞者の視線は、画面の大部分を占める布地の色彩と質感、あるいは頭部の再現的描写の観察へといざなわれる。 色彩に関してはまず、緞帳、帽子、上着、椅子のカバーに見られる赤が支配的である。その次に広い面積を占めるのが白で、シャツと下衣に認められる。赤と白が画面のほとんどを占める中で、顔と手の肌色、椅子の金属部分の金がアクセントとなっている。 後にフランシス・ベーコンがこの肖像画をモチーフにした一連の作品を制作したことでも知られている。
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