『教会との関係における国家』
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「ウィリアム・グラッドストン」の記事における「『教会との関係における国家』」の解説
下野して時間に余裕ができたグラッドストンは改めて宗教問題に関心を寄せた。1830年代はオックスフォード運動の影響で宗教問題がイギリスで盛んになっていた時期だった。 この頃、エディンバラ大学神学教授トーマス・チャーマーズは「国家は宗教の真理を定める義務を負っているが、全体像だけ決めればよく、細部は神学者に任せるべきである」という主張を行っていたが、グラッドストンはこれに強く反発した。また自由主義者による無宗教の風潮、アイルランド国教会廃止を狙う勢力の台頭にも脅威を感じ、国教会を守るための執筆を行う決意を固めた。 そうして書きあげた『教会との関係における国家 (The State in its Relations with the Church)』を1838年秋に出版した。この著作の中でグラッドストンは「国家は人間と同じく一つの宗教を良心として奉じなければならず、それはローマ教会よりも純粋なキリスト教であるイングランド国教会以外はありえない。だから国家は国教会を優遇して援助しなければならない。アイルランド人にも彼らが好むと好まざるとに関わらず、唯一の真理である国教会を信仰させなければならない。教義の比較検討は、チャルマーズが言うような"細部"にあたるものではなく重要なことである。国家はその宗教的良心に照らし合わせて、各教義を比較検討し、真理と虚偽を峻別する義務を負っている。」と主張した。この本は保守派から好評を博したが、自由主義派からは一顧だにされなかった。保守党党首ながら自由主義的なところがあるピールも「こんな下らない本を書いていたら、彼は政治生命を台無しにしてしまうぞ」と述べて心配したという。 [先頭へ戻る]
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