《わざわざ》の敬語
「わざわざ」の敬語表現
「わざわざ」という言葉は、普通ならそこまではしなくてもいい状況なのに、特にそれを行うさまを表します。「何かのついでではなく、特にそのためだけに行う」というポジティブな意味合いで使う場合と、「しなくてもいいことをする」というネガティブな意味合いで使う場合があります。「わざわざ」の語源は、「わざとらしい」という意味を持つ古語の「態態し(わざわざし)」とされており、本来はあまりいい意味で使用される言葉ではありませんでしたが、現在では「わざわざありがとう」のように肯定的なニュアンスで使われることも多くなりました。「わざわざ」は両義的な意味を持つ言葉であるため、目上の相手に対して使うと不快感を与えてしまう可能性があります。より丁寧な敬語表現として、「せっかく」「あえて」「ご丁寧に」などに言い換えることができます。「せっかく」には「苦労や無理をして何かをするさま」といった意味と、さらにその努力が無駄になってしまうことを残念がるという意味があり、相手の負担をねぎらうために使うことができます。「あえて」は「やりにくいことを無理に行うさま」や「特別な意図を持って」といった意味で使われ、自分の動作に対しても用いることができます。「ご丁寧に」は相手の細かい配慮や心遣いに対して敬意を表すために使える言葉です。
断りを入れる際には、ほかにも「生憎(あいにく)」を取り入れた表現を使うこともできます。「生憎」は期待や目的にそぐわないさまや、しようとするのに都合が悪いことを表す言葉です。「生憎ですが」は「せっかくですが」と同じような意味で使われます。
「わざわざ」の敬語の最上級の表現
「わざわざ」に代わる敬語の最上級の表現は、「格別の(に)」となります。「格別」は通常とは程度が格段に違うことを表す言葉で、「特別」と似た意味で使われます。「格別」には「わざわざ」が持つようなネガティブなニュアンスは含まれないため、どんな相手に対しても使いやすい表現です。「格別のお引き立て」や「格別のご高配」として副詞的に使われる場合と、「○○は格別だ」のように名詞として使われる場合がありますが、「わざわざ」を言い換える際には前者の用法となります。「わざわざ」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「わざわざ」の敬語表現を取り入れた、ビジネスメールや手紙で使用できる例文を紹介します。・せっかくお問い合わせいただいたにもかかわらず、お力になれず申し訳ありません。
・せっかくのお誘いですが、どうしても外せない用事がございますので辞退させていただきます。
・今回は企画に合わせて、あえて色味をおさえてすっきりとしたデザインにいたしました。
・素晴らしいご提案だと思います。あえて申し上げるとすれば…
・お忙しいところ、ご丁寧に連絡までいただきましてありがとうございます。
・この度はご丁寧にお知らせいただき、誠にありがとうございました。
・あいにく○○は県外へ出張中でして、本日の○時頃帰社予定となっております。
・日頃より格別のお引き立てを賜り、心より感謝申し上げます。
・平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
「わざわざ」を上司に伝える際の敬語表現
上司に対して「わざわざ」を伝える際にも、「せっかく」や「ご丁寧に」などの敬語表現を使うことができます。例えば、自分が印刷すべき資料を上司がわざわざ用意してくれたというようなケースでは、「ご丁寧に準備いただきましてありがとうございます」と言うこともできますし、「せっかくご用意いただいたのに(自分のものと重複してしまって)申し訳ありません」と言うことも可能です。ただし「格別のご高配を~」のようなフレーズはかしこまった場面で使われる表現であるため、社内の人間に対して日常的に使うことはありません。丁寧であることは間違いないですが、上司ではなく、取引先や顧客に向けた表現ということを覚えておきましょう。「わざわざ」の敬語での誤用表現・注意事項
「わざわざ」の敬語表現を使う際には、誤用や注意事項について知っておく必要があります。例えば「せっかく」という言葉の場合、「せっかくご用意いたしましたのでお召し上がりください」のように自分の行為に対して使ってしまうと、押しつけがましく相手に対して失礼な印象を与えます。また「ご丁寧に」は、場合によっては「わざわざ」と同じく「しなくていい余計なことをされた」というニュアンスで伝わってしまい、嫌味や皮肉として受け取られることがあります。「ご丁寧な○○ありがとうございます」のように言い換えると多少和らいだ印象になるため、状況に合わせて使い分けましょう。
「わざわざ」の敬語での言い換え表現
「わざわざ」はほかにも「ご足労いただき」や「遠路はるばると」、「お手間を取らせてしまい」などの具体的な意味を伴う敬語表現に言い換えることができます。例えば取引先の相手が来社した際などには、「ご足労いただきありがとうございます」「遠路はるばるお越しいただき感謝申し上げます」のような言い方ができます。相手に時間や労力をかけてしまったことを謝りたいときには、「この度はお手間を取らせてしまい申し訳ありませんでした」と言うことができます。- 《わざわざ》の敬語のページへのリンク