消費者庁 所管法人、財政、職員

消費者庁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/02 06:10 UTC 版)

所管法人、財政、職員

内閣府の該当の項を参照

歴代担当大臣

歴代長官

氏名 就任日 退任日 主要な経歴
初代 内田俊一 2009年9月1日 2010年8月11日 内閣広報官内閣府事務次官
2代目 福嶋浩彦 2010年8月11日 2012年8月10日 中央学院大学教授我孫子市市長
3代目 阿南久 2012年8月10日 2014年8月10日 全国消費者団体連絡会事務局長
4代目 板東久美子 2014年8月10日 2016年8月9日 文部科学審議官
5代目 岡村和美 2016年8月9日 2019年7月9日 法務省人権擁護局長
6代目 伊藤明子 2019年7月9日 2022年7月1日 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官補
7代目 新井ゆたか 2022年7月1日 (現職) 農林水産審議官

幹部職員

2024年4月1日現在、消費者庁の幹部(指定職以上)は以下のとおりである[7]

消費者庁長官 新井ゆたか
次長 吉岡秀弥
政策立案総括審議官 藤本武士
食品衛生・技術審議官 中山 智紀
審議官 相本裕志
審議官 真渕博
審議官 植田広信
審議官 依田学

設置の経緯と諸課題

設置までの経緯

消費者庁設置前の消費者行政は、製品や事業ごとに所管が多数の省庁にまたがり、こうした縦割り行政が、こんにゃくゼリー窒息事故中国製冷凍餃子中毒事件パロマ湯沸器死亡事故渋谷温泉施設爆発事故などについて、行政上の対応の遅れを露呈した。このことから、消費者行政の一元化が急務となった。

消費者庁は、2008年(平成20年)1月18日に、内閣総理大臣 福田康夫第169回国会(常会)で行った施政方針演説の中で示した、「消費者行政を統一的、一元的に推進するための、強い権限を持つ新組織」の構想を具体化した行政機関であり、福田康夫の宿願とも言われた政治主導案件である。

福田は「消費者行政の司令塔として、消費者の安全、安心にかかわる問題について幅広く所管し、消費者の視点から監視する強力な権限を有する消費者庁を来年度に立ち上げ、早急に事務作業に着手する」[8] として、各省庁に対する是正勧告権を新機関に附与する考えを明らかにした。さらに「消費者庁創設は行政組織の肥大化を招くものであってはならない。各省の重複や時代遅れの組織の整理にもつながるものでなければならない」[9] との方針を表明し、消費者庁の職員は他省庁から振り替えることで行政の肥大化を防ぎ、同時に縦割り行政の弊害解消や小さな政府の実現を目指すよう指示した。

(略)国民に新たな活力を与え、生活の質を高めるために、これまでの生産者・供給者の立場からつくられた法律、制度、さらには行政や政治を国民本位のものに改めなければなりません。国民の安全と福利のために置かれた役所や公の機関が、時としてむしろ国民の害となっている例が続発しております。私は、このような姿を本来の形に戻すことに全力を傾注したいと思います。
今年を「生活者や消費者が主役となる社会」へ向けたスタートの年と位置付け、あらゆる制度を見直していきます。現在進めている法律や制度の「国民目線の総点検」に加えて、食品表示の偽装問題への対応など、各省庁縦割りになっている消費者行政を統一的・一元的に推進するための、強い権限を持つ新組織を発足させます。併せて消費者行政担当大臣を常設します。新組織は、国民の意見や苦情の窓口となり、政策に直結させ、消費者を主役とする政府の舵取り役になるものです。既に検討を開始しており、なるべく早期に具体像を固める予定です。(略)

— 内閣総理大臣福田康夫君による施政方針演説(平成20年1月18日)

消費者庁の設置により、主務業務に影響が及ぶことを畏れた各省庁は設置には概ね冷ややかであり、中には設置の必要はないというアピールとも取れる行動に動いた省庁も幾つかみられた。たとえば、2009年(平成21年)6月2日山口県美祢(みね)市ホテルで死者1名を出した、ボイラー不完全燃焼による修学旅行児童らの集団一酸化炭素中毒事故では、経済産業省原子力安全・保安院職員及び専門家からなる原因究明チームを組織し、現地へ派遣して事故原因の特定に速やかにあたり、事故5日後には調査の結果をまとめた[10]。また、翌月の7月31日付けで各自治体宛てにホテル・旅館の緊急調査の実施を依頼する通達を出す一方(緊急調査の調査票は原子力安全・保安院が作成した)[11]、翌年の2010年1月には安全・再発防止対策についての報告書を作成している[12]。この件以外にも、穀物輸送船の酸欠労災事故に農林水産省が職員を急派するなど、通常では例のない迅速な対応がとられたケースがあり、マスコミも注目せざるを得なかった。

法案化の過程

内閣総理大臣が随時開催する消費者行政推進会議(2008年2月8日閣議決定により設置)において、その組織・所管法令の内容等について検討された。同会議は座長の佐々木毅以下11名の委員により組織され、会議の庶務は内閣官房に置かれた消費者行政一元化準備室が行うものとされた。会議は、委員のほか政府からの出席者も交えて、月に2回のペースで行われた。

同会議は、同年4月23日の第6回会合の後に「消費者庁(仮称)の創設に向けて」と題して、消費者庁の所管、位置づけなど「6つの基本方針」と国民本位の行政実現など「守るべき3原則」をまとめた文書を発表し、同年6月13日に最終報告書となる「消費者行政推進会議取りまとめ ~消費者・生活者の視点に立つ行政への転換~」を発表した[13]福田内閣は同月末に報告書の内容をもとにした「基本計画」を閣議決定し、同年9月29日、麻生内閣第170回国会(臨時会)に「消費者庁設置法案」および関連法案を提出した。同国会では同法案は成立に至らず、会期末において継続審議とされた。

同法案は、第171回国会(常会)衆議院消費者問題特別委員会において審議された。この結果、委員会では消費者委員会を設置するなどの共同修正案が提出され、2009年(平成21年)4月16日に共同修正案を全会一致で可決、翌17日には委員長報告のとおり衆議院本会議でも共同修正案を全会一致可決した。法案を送付された参議院でも消費者問題特別委員会で審議され、同年5月28日に委員会の全会一致で可決、翌29日には参議院本会議でも全会一致で可決成立した。

諸課題

2010年6月、消費者庁の初年度実績について、通報された消費者事故情報の9割に対応できていなかったことが報じられた。消費者庁側は深刻な人員不足が原因としている[14]

一方で、諸課題が山積しているのが現状である。たとえば、学校教育法第135条に基づかずに大学大学院を名乗ることは違法となるが、民間の教育施設だけではなく、自治体が経営する生涯学習センター等でも大学・大学院を名乗るケースが相次いでいる。同法第146条では「第135条の規定に違反した者は、十万円以下の罰金に処する」としているが、文部科学省ディプロマミルの潜在的脅威が指摘されているにも関わらず、私立大学並みの年間授業料を徴収して起業を教えるとする無認可大学[15] についても是正措置をとらないままでいる。

これを消費者庁も所管法の所掌にないことを理由に黙認できるのかといった諸課題に加え[注釈 2]、「原子力 明るい未来のエネルギー」という謳い文句は景表法に違反しないのかと言った指摘などもある。また、開運ブレスレットと称した商品を申し込むと高額な祈祷料を払わされる「開運商法」や、内容をともなわない法外な受講料を徴収する"起業セミナー"など[16]、相変わらず悪質または詐欺的な商法が次々と出現しているのが現状である。

事故調査機関の在り方に関する検討会

2010年(平成22年)8月20日、事故調査機関の在り方に関する検討会が設置された。

消費者事故等の調査機関の在り方については、消費者庁関連法案の審議の際の附帯決議(参議院)において、「消費者事故等についての独立した調査機関の在り方について法制化を含めた検討を行う」とされ、また、本年3月に閣議決定された「消費者基本計画」においては「消費者庁は、消費者事故の独立した公正かつ網羅的な調査機関の在り方について検討します」「22年度に検討を開始し、23年度のなるべく早い時期に結論を得ます」とされているところである。また、これまでも、責任追及の観点からの刑事手続とは別に、事故原因究明と再発防止の観点から必要な権限を有する事故調査機関の必要性が指摘されているところであり、さらには、被害者への配意の重要性についても指摘があるところである。 以上のような経緯を踏まえながら、有識者や被害者遺族関係者等からなる本検討会においては、現行の関連制度・機関と新たな機関・機能との関係の整理、事故調査機関にとって必要な条件・機能等の論点整理など、今後の具体的な制度設計を進めていくために必要となる検討を行うこととする。 — 事故調査機関の在り方に関する検討会について(案)-消費者庁消費者安全課

関連項目:事故調査


注釈

  1. ^ 消費者庁及び消費者委員会設置法、消費者庁及び消費者委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律、消費者安全法の三法。
  2. ^ ディプロマミルが広く問題視されたイオンド大学は日本語の大学名称をやめ、IOND University の名称を用いるようになったが、学校案内では大学であるかのような表示を行っている。

出典

  1. ^ 行政機関職員定員令(昭和44年5月16日政令第121号)(最終改正、令和6年3月29日政令第87号) - e-Gov法令検索
  2. ^ 令和6年度一般会計予算 (PDF) 財務省
  3. ^ a b 消費者庁“実動部隊”に警察や公取OB雇用へ 捜査ノウハウに触手 (2/2ページ) - MSN産経ニュース産経デジタル、2008年11月18日。
  4. ^ “消費者庁“実動部隊”に警察や公取OB雇用へ 捜査ノウハウに触手 (1/2ページ)”. MSN産経ニュース (産経デジタル). (2008年11月18日). オリジナルの2009年5月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090511070419/http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081118/plc0811180037000-n1.htm 2009年9月13日閲覧。 
  5. ^ 消費者庁組織令第3条で設置する参事官。消費者庁の所掌事務に関する重要事項についての企画及び立案に参画し、関係事務に関し必要な調整を行う。
  6. ^ 消費者庁組織規則第8条で設置される企画官。参事官の職務のうち特定事項の調査、企画及び立案を助ける。
  7. ^ 幹部名簿(令和6年4月1日現在)”. 消費者庁. 2024年4月1日閲覧。
  8. ^ 「福田首相が「消費者庁」創設を表明」政治も‐政局ニュース:イザ!』産経デジタル、2008年4月23日。
  9. ^ 消費者庁を創設、09年度から…首相が正式に表明 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)讀賣新聞、2008年4月23日。[リンク切れ]
  10. ^ 山口県美祢(みね)市の宿泊施設において発生した一酸化炭素中毒事故に係る現地調査の結果について(2011/12/06アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project- 2009年(平成21年)6月8日 経済産業省 原子力安全・保安院。
  11. ^ ホテル、旅館における簡易ボイラー等使用時の一酸化炭素中毒事故防止に関する緊急調査結果の回収・集計について(依頼)(2010/06/08アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project - 2009年(平成21年)7月31日 経済産業省 原子力安全・保安院。
  12. ^ 山口県における液化石油ガス一酸化炭素中毒事故原因調査及びこれを契機とした安全・再発防止対策について” (PDF). 経済産業省 原子力安全・保安院 (2010年1月). 2016年5月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年9月14日閲覧。
  13. ^ 「消費者行政推進会議取りまとめ ~消費者・生活者の視点に立つ行政への転換~」 (PDF) - 消費者行政推進会議、2008年6月13日。
  14. ^ “消費者庁、通知された事故情報の9割を放置”. 日テレNews24. (2010年6月5日). https://web.archive.org/web/20100628034239/http://news24.jp/articles/2010/06/15/07161112.html 
  15. ^ ワタミ“ブラック”批判を洞察する…「社会貢献もどき」に走る人たちが学ぶべきこと 2013年7月12日 Business Journal。
  16. ^ 起業セミナー 運営会社経営者ら関係者5人逮捕 福岡県警 - 毎日新聞 2016年11月15日 アーカイブ
  17. ^ 政府関係機関の地方移転にかかる今後の取組について (PDF) 2016年9月1日 まち・ひと・しごと創生本部決定
  18. ^ 徳島は研究拠点に 2019年8月19日 日本経済新聞
  19. ^ 消費者庁、徳島に新拠点 コロナ禍のデマも研究”. 日本経済新聞 (2020年7月30日). 2020年7月30日閲覧。
  20. ^ 消費者庁・強権路線の破綻? 特商法国会審議に影響も、?天下り要求?火消しに走る 2016年4月21日 週刊通販新聞。
  21. ^ 消費者庁・天下り〝新事実〟(上) 2017年1月26日, 消費者庁・天下り〝新事実〟(中) 2017年2月15日, 消費者庁・天下り〝新事実〟(下) 民進党、国会で追求へ ついに消費者庁に飛び火 2017年2月15日, 週刊通販新聞。
  22. ^ マルチ商法被害拡大 官僚OB関与か 処分遅れ ジャパンライフ問題 大門氏が追及”. しんぶん赤旗. 日本共産党中央委員会 (2017年4月6日). 2018年1月14日閲覧。
  23. ^ 月刊「FACTA」編集部「消費者庁「天下り先」に手心疑惑 元課長補佐を雇ってくれた「ジャパンライフ」は、業務停止命令中に客を勧誘するも不問に。」『FACTAオンライン』ファクタ出版株式会社(FACTA)、2017年8月。2018年1月14日閲覧。
  24. ^ 消費者庁、シンボルマークを公表”. レスポンス (2011年3月6日). 2022年6月19日閲覧。
  25. ^ 消費者庁シンボルマーク管理規程” (PDF). 消費者庁 (2012年4月1日). 2023年6月22日閲覧。
  26. ^ “消費者庁シンボルマークが商標権侵害?…修正へ”. 読売新聞. (2011年7月13日). オリジナルの2013年8月28日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/ZejEb 2011年7月13日閲覧。 
  27. ^ 消費者庁・WorldCatシンボルマーク類似問題(長官記者会見)”. 科学技術振興機構 (2011年7月26日). 2023年6月22日閲覧。
  28. ^ “茶のしずく問題を消費者庁放置、昨年1月から被害情報”. 読売新聞. (2011年12月10日). オリジナルの2012年11月30日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20121130230535/http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20111210-OYS1T00444.htm 2012年3月25日閲覧。 
  29. ^ 虫の忌避効果を標ぼうする商品の販売業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について (PDF) . 消費者庁プレス・リリース.(平成27年2月20日)
  30. ^ 「吊るすだけ」虫よけ剤に裏付け根拠なし 蚊は対象外、に怒りのコメント多数. Jcastニュース.(2015年3月7日)
  31. ^ a b c d 断熱フィルムめぐる消費者庁の措置命令に執行停止. 日本経済新聞.(2015年4月24日)
  32. ^ 窓用断熱フィルムへの措置命令「妥当」 東京地裁平成27年(行ウ)第161号措置命令取消等請求事件
  33. ^ 措置命令取消等請求事件
  34. ^ カンニング竹山、松平健との寸劇で啓発「高齢者詐欺被害を防ごう」. お笑いナタリー.(2015年12月3日)
  35. ^ 巣鴨地蔵通り商店街を練り歩くカンニング竹山ら(右端が板東長官)


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