柳崎貝塚
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/30 20:14 UTC 版)
遺物
1967年の佐藤達の調査で出土資料として水戸市立博物館に保管されている遺物は以下のとおりである。
自然遺物
- 貝類
貝類は全部で8種類が出土し、生息域毎に見ると以下のようになる[20][21]。
淡水 | オオタニシ、イシガイ | |
汽水 | ヤマトシジミ | |
海水 | 潮間帯~浅海の砂泥底 | ハマグリ、オオノガイ、アサリ、ウバガイ |
岩礁帯 | マガキ |
- 骨等
シカの骨、イノシシの歯が出土資料として保管されている(但し出土地点不明)[20]。
- 岩石
A貝塚の貝層下の褐色土層より、チャート礫2点、チャート剥片1点が出土[20]。
人工遺物
- 石棺
遺跡から蓋の無くなった泥岩石製の石棺が露出しているのが見つかっている。佐藤はこれが茨城県西南部で多くある雲母片岩で造られた箱式石棺に類似している、としている。封土を有したかどうかは不明[18]。
- 土器
A貝塚からは93片の土器片が、C貝塚からは貝層を含む部分から83片の土器片が、貝層外の部分から71片の土器片が出土しており、表面採集で7片の土器が採集されている[22]。市毛はこれらを次の5群に分類し、比定できる土器形式を示した[23]。
- 1群
柳崎貝塚が形成された後の縄文時代中期の阿玉台式土器に比定できる土器群。C貝塚の表土から10センチメールの層から出土している。
- 2群
貝塚が形成された縄文時代前期の関山式土器に比定できる縄文を有した土器群。多数出土している。
- 3群
条痕文を持った土器群で貝塚形成以前の土器群。形式により次の3類に細分類。
- 3群1類
条痕文に併せ隆起線や、口唇部に刻み目などが施された土器群。芽山下層式土器に比定。
- 3群2類
条痕文だけを持つ土器群で、2群と並び多数出土している。このうち、貝殻だけを施文具として条痕文を付けた土器の出土割合がほとんどで、他にはハケ目状のもの、素材不明のもの、複数の施文具を使って条痕文を付けた土器が出土している。貝殻条痕文を付けた後、これ一部磨り消しして、装飾効果を高めた土器も出土している。このような磨り消しを行う土器の特徴から芽山下層式土器に比定。
- 3群3類
絡条体で付けられた文様(絡条体圧痕文)を持つ土器群。常世2式土器に比定。
- 4群
刺突文、沈線文を有し、繊維を含まない土器群。貝塚形成以前の田戸下層式土器に比定。
- 5群
1979年の佐藤の論文ではA貝塚の貝層下から出土した繊維を含む貝殻条痕文、又は絡条体圧痕文を有する土器、及び無文の土器を南関東の子母口式土器に比定できる、との主張をしている[8]。市毛は佐藤論文以後の日本考古学の知見から、絡条体圧痕文を有する土器は常世2式土器に、貝殻条痕文を有する土器を芽山下層式土器にそれぞれ比定する見解を示した[23]。
- 石器
- A貝塚の貝層下の褐色土層より流紋岩製の磨石が2点出土。内1点は表裏面の一部に使用した痕跡があった。
- C貝塚の貝層を含む地点の表土より50~93センチメートル下の層より、砂岩製の磨石出土。全面に使用痕があった。
- 骨角器等
骨角器2点、腹に刃を作り出し貝刃とした形跡があるハマグリ、シカの骨を磨いて作ったヤス(魚を突き刺して獲る漁具の一種)の先端部などが出土している[25]。
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注釈
出典
- ^ 『茨城県人物・人材情報リスト 2019』日外アソシエーツ、日外アソシエーツ、252頁。
- ^ 鈴木素行「佐藤次男氏の略歴-十王台式土器研究史外伝・5」『茨城県考古学協会誌 伊東重敏氏・佐藤次男氏追悼号』第22号、茨城県考古学協会、2010年5月、 9-14頁。
- ^ “佐藤,次男, 1931-”. Web NDL Authorities. 2020年3月9日閲覧。
- ^ 『一本松遺跡 2001』井上義安、一本松埋蔵文化財発掘調査会、2001年3月、161頁。
- ^ 『水戸市大串遺跡』井上義安、水戸市、1996年3月、奥付。
- ^ “井上, 義安”. Web NDL Authorities. 2020年3月9日閲覧。
- ^ 佐藤次男 1969.
- ^ a b 佐藤次男 1979.
- ^ 市毛美津子 1992.
- ^ a b 茨城県北ジオパーク推進協議会.
- ^ 「柳崎貝塚」碑(2020-2-11現地確認) (屋外設置の碑). 茨城県水戸市の千波湖南東: 水戸市教育委員会. (1995年).
- ^ 水戸市教育委員会 1999- 付録:水戸市遺跡地図2
- ^ 市毛美津子 1992, pp. 14-15.
- ^ “パンフレット「水戸・千波湖ジオサイト」 (PDF)”. 茨城県北ジオパーク構想. 茨城県北ジオパーク推進協議会. 2020年3月4日閲覧。
- ^ a b 市毛美津子 1992, p. 14.
- ^ 『茨城県人物・人材情報リスト 2019』日外アソシエーツ、日外アソシエーツ、296頁。
- ^ “宮田, 俊彦, 1908-”. Web NDL Authorities. 2020年3月9日閲覧。
- ^ a b c 佐藤次男 1969, p. 27.
- ^ 市毛美津子 1992, pp. 15-17.
- ^ a b c 市毛美津子 1992, pp. 18-19.
- ^ 市毛美津子 1992, pp. 31-33.
- ^ 市毛美津子 1992, pp. 19-31.
- ^ a b 市毛美津子 1992, pp. 33-37.
- ^ 市毛美津子 1992, p. 30.
- ^ 市毛美津子 1992, p. 31.
- ^ 市毛美津子 1992, pp. 32-33.
- ^ a b 市毛美津子 1992, pp. 37-39.
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