東鹿越駅
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/01 07:07 UTC 版)
東鹿越駅 | |
---|---|
駅舎(2017年8月) | |
ひがししかごえ Higashi-Shikagoe | |
◄T34 金山 (13.2 km) (4.0 km) 幾寅 T36► | |
所在地 | 北海道空知郡南富良野町字東鹿越 |
駅番号 | ○T35 |
所属事業者 | |
所属路線 | ■根室本線 |
キロ程 | 94.8 km(滝川起点) |
電報略号 | ヒコ |
駅構造 | 地上駅 |
ホーム | 1面2線 |
開業年月日 | 1941年(昭和16年)12月29日[1] |
廃止年月日 | 2024年(令和6年)4月1日 |
備考 |
無人駅 路線廃止に伴う廃駅 |
|
歴史
当駅の付近では鉄道開通間もない明治30年代末ごろから、石灰石の採掘が行われており、1908年(明治41年)には現在の東鹿越駅付近で王子製紙(以下、王子)による鉱山経営が始まった[3]。この王子の鉱山から産した石灰石の出荷は、1924年(大正13年)に完成した馬車軌道(のちにガソリン機関車や蒸気機関車も使用)によって運搬し、隣駅の鹿越駅から発送していた[3][4]。しかし、1941年(昭和16年)の太平洋戦争開戦を受け、特に製鉄用[注 1]としての石灰石の増産命令が政府から出され、同年には石灰石発送のための専用線と、それを分岐する信号場を根室本線上に設置することとなった[4]。これが当駅の起源である。ここで産された石灰石は日本製鐵(初代、現在の日本製鉄の前身のひとつ)輪西製鉄所(現:日鉄北日本製鉄所室蘭地区)で使用され、1943年(昭和18年)には鉱山の経営も王子から日鉄傘下企業の日鉄鉱業に移っている[3]。
東鹿越信号場は、その後仮乗降場として旅客の取り扱いも行うようになったが、日鉄鉱業の鉱山開発・発展に伴う乗降人員の増加により、仮乗降場としての取り扱いでは支障をきたすようになり、日鉄鉱業、北海道農材工業[注 2]、地元住民の運動により、1946年(昭和21年)には正規の駅となった[5][4][3]。それに際して日鉄鉱業は、駅舎・ホーム・宿舎を建設し、国鉄に提供している[3]。
その後石灰石は、製鉄のほか製糖[注 3]、パルプ製造[注 4]向けに発送が続いたが、1997年(平成9年)に釧網本線中斜里駅に隣接したホクレン中斜里製糖工場向けの貨物列車が終了し、旅客列車のみの発着となった。
2016年(平成28年)には利用客僅少により廃止の検討がされていたが[新聞 1]、同年8月31日に発生した台風10号による災害の影響で、根室本線は当駅 - 上落合信号場( - 新得駅)間で鉄道運行を休止したことにより、当駅は代行バスと列車の乗り継ぎ拠点となったため存続していた[JR北 1]。しかし新得方面はその後も復旧のめどが立つことなく、2024年(令和6年)4月1日の富良野駅 - 新得駅間の鉄道営業廃止に伴い当駅は路線と共に廃駅となった[6][JR北 2]。
年表
- 1941年(昭和16年)12月29日:国有鉄道の東鹿越信号場として鹿越駅 - 幾寅駅間に新設[4]。当信号場自体は貨物を扱わず、接続する専用線発着貨物に限って取り扱いを開始[1]。その後時期不詳であるが、仮乗降場として旅客の扱いも開始する[4]。
- この時、貨物については運賃計算上、鹿越駅発着として営業キロを計算した[7]。
- 1946年(昭和21年)3月1日:一般駅に昇格し、東鹿越駅となる[5]。
- 1949年(昭和24年)6月1日:公共企業体日本国有鉄道(国鉄)に移管。
- 1959年(昭和34年)10月:専用線に貯鉱槽を新設し、貨車積みを効率化[3]。
- 1982年(昭和57年)11月15日:荷物、専用線発着を除く車扱貨物の取り扱いを終了[8]。
- 1987年(昭和62年)4月1日:国鉄分割民営化に伴い、北海道旅客鉄道(JR北海道)並びに日本貨物鉄道(JR貨物)の駅となる[1]。
- 1994年(平成6年)4月1日:釧路支社管轄から本社鉄道事業本部直轄に変更。
- 1997年(平成9年)3月22日:当駅に停車する貨物列車が運行終了。同時に完全無人化。
- 2016年(平成28年)
- 2017年(平成29年)3月28日:代行バスを当駅 - 落合駅・新得駅の運行とする[JR北 3]。
- 2024年(令和6年)4月1日:富良野駅 - 新得駅間の廃止に伴い廃駅[6][JR北 2]。
-
駅前に停車する列車代行バス(2021年9月)
駅名の由来
かつての隣駅であった鹿越駅の東方に所在するため。
駅構造
廃止時点では島式ホーム1面2線と木造駅舎を有する地上駅であった。跨線橋はなく、駅舎とホームは構内踏切で連絡していた。無人駅であった。ホーム上には「石灰石」と書かれた大きな岩がある。
のりば
番線 | 路線 | 方向 | 行先 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1 | ■根室本線 | (使用停止中) | ||
2 | 上り | 富良野・滝川方面 | ||
下り | 新得方面 | 使用停止中 |
-
待合室(2021年9月)
-
構内踏切(2017年8月)
-
ホーム(2012年10月)
注釈
- ^ 高炉製鉄においては、高炉に鉄鉱石や燃料のコークスと共に石灰石を投入する。これによりシリカやアルミナなどの不純物が石灰石と反応して鉄より先に溶融し分離し、鉄鋼スラグとなる。
- ^ 当鉱山の石灰石を用いて当地で炭酸カルシウム肥料を製造し、当駅より発送。
- ^ てんさいから絞られた粗糖汁に消石灰を投入し、タンパク質、ペクチン等を凝集させ、さらにそこに炭酸ガスを吹き込むことで、炭酸カルシウムを生じさせ、非糖分凝集物を吸着する。
- ^ パルプは木材を苛性ソーダを含む液で煮ることで製造される。この際生じる苛性ソーダを含んだ廃液を燃焼処理後に水に溶解させ、生石灰を投入すると、苛性ソーダ溶液と炭酸カルシウムとなり、苛性ソーダを回収することが可能である。
出典
- ^ a b c 石野哲 編『停車場変遷大事典 国鉄・JR編 II』(初版)JTB、1998年10月1日、876頁。ISBN 978-4-533-02980-6。
- ^ 日本国有鉄道営業局総務課 編『停車場一覧 昭和41年3月現在』日本国有鉄道、1966年、232頁。doi:10.11501/1873236 。2022年12月10日閲覧。
- ^ a b c d e f 『南富良野村史』南富良野村役場、1960年5月10日、532-535, 538頁。doi:10.11501/3449181 。
- ^ a b c d e f g 『南富良野村史』南富良野村役場、1960年5月10日、574-575頁。doi:10.11501/3449181 。
- ^ a b 大蔵省印刷局, ed (1946‐02-28). “運輸省告示 第55号”. 官報 (国立国会図書館デジタルコレクション) (5736). doi:10.11501/2962244 .
- ^ a b 『北海道旅客鉄道株式会社の鉄道事業の一部を廃止する届出及び本届出に係る公衆の利便の確保に関する意見の聴取について』(PDF)(プレスリリース)国土交通省北海道運輸局、2023年3月31日。 オリジナルの2023年3月31日時点におけるアーカイブ 。2023年3月31日閲覧。
- ^ 鉄道省運輸局 編『貨物営業粁程表 昭和17年5月31日現在』大日本教化図書、1942年、232頁。doi:10.11501/1124899 。
- ^ “日本国有鉄道公示第168号”. 官報. (1982年11月13日)
- ^ 宮脇俊三、原田勝正 著、二見康生 編『北海道630駅』小学館〈JR・私鉄各駅停車〉、1993年6月20日、110頁。ISBN 4-09-395401-1。
- ^ a b c 『南富良野村史』南富良野村役場、1960年5月10日、741頁。doi:10.11501/3449181 。
JR北海道
- ^ a b c 『一連の台風による石勝線・根室線の災害復旧の状況について』(PDF)(プレスリリース)北海道旅客鉄道、2016年10月13日。 オリジナルの2018年9月5日時点におけるアーカイブ 。2018年9月5日閲覧。
- ^ a b 『根室線(富良野・新得間)の鉄道事業廃止届の提出について』(PDF)(プレスリリース)北海道旅客鉄道、2023年3月31日。 オリジナルの2023年3月31日時点におけるアーカイブ 。2023年3月31日閲覧。
- ^ “根室線 東鹿越駅〜新得駅間 バス代行輸送の実施について” (PDF). 北海道旅客鉄道 (2017年3月22日). 2017年5月16日閲覧。
- ^ “駅別乗車人員(2016)” (PDF). 線区データ(当社単独では維持することが困難な線区)(地域交通を持続的に維持するために). 北海道旅客鉄道株式会社. p. 2 (2017年12月8日). 2018年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年8月17日閲覧。
- ^ “根室線(富良野・新得間)” (PDF). 線区データ(当社単独では維持することが困難な線区)(地域交通を持続的に維持するために). 北海道旅客鉄道. p. 3 (2018年7月2日). 2018年8月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年8月18日閲覧。
- ^ “根室線(富良野・新得間)” (PDF). 線区データ(当社単独では維持することが困難な線区)(地域交通を持続的に維持するために). 北海道旅客鉄道. p. 3 (2019年10月18日). 2019年10月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月18日閲覧。
- ^ “根室線(富良野・新得間)” (PDF). 地域交通を持続的に維持するために > 輸送密度200人未満の線区(「赤色」「茶色」5線区). 北海道旅客鉄道. p. 3 (2020年10月30日). 2020年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月4日閲覧。
- ^ “駅別乗車人員 特定日調査(平日)に基づく”. 北海道旅客鉄道. 2022年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月14日閲覧。
- ^ “駅別乗車人員 特定日調査(平日)に基づく”. 北海道旅客鉄道. 2022年9月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月3日閲覧。
- ^ “駅別乗車人員 特定日調査(平日)に基づく”. 北海道旅客鉄道. 2023年11月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月10日閲覧。
新聞記事
固有名詞の分類
- 東鹿越駅のページへのリンク