フォーミュラ・ルノー3.5とは? わかりやすく解説

フォーミュラ・ルノー3.5

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/12 13:10 UTC 版)

フォーミュラ・ルノー3.5の車体(ダラーラ・T12

フォーミュラ・ルノー3.5Formula Renault 3.5)とは、かつて開催されたヨーロッパの各国を転戦するフォーミュラカーレース選手権である。

概要

2005年ワールドシリーズ・バイ・ニッサンフォーミュラ・ルノーV6・ユーロカップが合併して設立された選手権で、正式名称は“World Series Formula Renault 3.5”である。「ワールドシリーズ・バイ・ルノー」と呼称されることが多いが、正式には「ワールドシリーズ・バイ・ルノー」はこの選手権の通称であると同時に、サポートレースのユーロカップ・メガーヌ・トロフィーユーロカップ・フォーミュラ・ルノー(FIAでは「ワールドシリーズF/ルノーV6」に分類している)の両選手権を含めたイベント全体の名称である。

「フォーミュラ・ルノー」の名が用いられている他のシリーズとは異なり、このカテゴリはF3F1の中間に位置付けられ、GP2等と同格とされる。使用される車体(シャシー)やエンジンなども他のフォーミュラ・ルノーで使用されるそれとは大きく異なる高性能なものが使用される。F3や他のミドルフォーミュラが成績によって自動的にスーパーライセンス発行の対象となるのに対し、従来本シリーズにはそのような規定が存在しなかったが、2007年より本シリーズのチャンピオンにも自動的にスーパーライセンスが発給されることになった。

このシリーズの出身でF1ドライバーとなった主な者は、初年度2005年のチャンピオンであるロバート・クビサ、2006年・2007年途中まで参戦したセバスチャン・ベッテル、2008年チャンピオンのギド・ヴァン・デル・ガルデ、2012年シリーズ2位のジュール・ビアンキ、2013年チャンピオンのケビン・マグヌッセン、2014年チャンピオンのカルロス・サインツJr.がいる。

しかし国際自動車連盟(FIA)が2015年にスーパーライセンス取得条件にポイント制を導入した際、明らかにマシンのスペックが劣る欧州F3よりも獲得ポイントが下とされ、フォーミュラのピラミッド構造を整理したいFIAの冷遇が明らかになった[1]。さらに2015年シーズンをもってルノーのスポンサー契約が終了し、2016年からはハイメ・アルグエルスアリの父が代表を務めるRPM-MKTGが運営を引き継ぎ「フォーミュラV8 3.5」として再出発することになった[2]フランス西部自動車クラブ(ACO)と提携してヨーロッパ以外も転戦するシリーズになったが、出走台数の大幅な落ち込みから2017年をもって消滅、ワールド・シリーズ・バイ・ニッサンから数えて20年の歴史に幕を下ろした[3]

車体

前身であるワールドシリーズ・バイ・ニッサンで使用されていた各シャシーや他のフォーミュラ・ルノー選手権で使われているシャシーを参考にダラーラが新たに設計した、ダラーラ・T05が用いられ、日産自動車フェアレディZ(350Z, Z33型)に搭載されているエンジンをベースとした排気量3.5LのVQ35を搭載する(ゆえに「Formula Renault 3.5」)。公称425馬力を出力するこのエンジンは、ダラーラと日産自動車が共同製作したギアボックス及びフォーミュラ・ルノーのセミオートマチックトランスミッションとつながれ、F1同様、シフトチェンジはステアリングの裏にあるパドルで行われ、クラッチペダルによるクラッチ操作は不要となっている。

2012年から、ザイテックが開発した530馬力を発生する3.4L V8エンジンを搭載した[4]ダラーラ・T12 を採用した。また新たにドラッグリダクションシステム(DRS)が搭載された。

この様にF1など、より上のカテゴリーへのステップアップを容易にするため、ギアシフトやペダル操作はF1カーのそれと統一され、他にもカーボンブレーキ、DRSの採用など、仕様はF1との共通性を多分に持たせたものとなっている。また参戦コストはGP2よりも安価であり、人気の原動力でもあった。

歴代チャンピオン

チャンピオン
2017年 ピエトロ・フィッティパルディ
2016年 トム・ディルマン
2015年 オリバー・ローランド
2014年 カルロス・サインツJr.
2013年 ケビン・マグヌッセン
2012年 ロビン・フラインス
2011年 ロバート・ウィケンズ
2010年 ミカエル・アレシン
2009年 ベルトラン・バゲット
2008年 ギド・ヴァン・デル・ガルデ
2007年 アルバロ・パレンテ
2006年 アレックス・ダニエルソン
2005年 ロバート・クビサ

チャンピオンドライバーには2015年までルノーF1チーム、2016年以降はLMP1のテストドライブの権利が与えられていた。

主なシリーズ参戦ドライバー

ドライバー 参戦年 主な成績 F1参戦歴
ロバート・クビサ 2005 2005年チャンピオン 2006-2010, 2019, 2021(BMWザウバールノーウィリアムズアルファロメオ
セバスチャン・ベッテル 2006-2007 2006年15位、2007年5位 2007-2022(BMWザウバー、トロ・ロッソレッドブルフェラーリアストンマーティン
マルクス・ヴィンケルホック 2005 2005年3位 2007(スパイカー
ハイメ・アルグエルスアリ 2009 2009年6位 2009-2011(トロ・ロッソ)
カルン・チャンドック 2005 2005年29位 2010-2011(HRTロータス
パストール・マルドナド 2005-2006 2005年25位、2006年3位 2011-2015(ウィリアムズ、ロータス
ジェローム・ダンブロシオ 2006 2006年36位 2011-2012(ヴァージン、ロータス)
ダニエル・リカルド 2009-2011 2009年34位、2010年2位、2011年5位 2011-(HRT、トロ・ロッソ、レッドブル、ルノー、マクラーレンアルファタウリRB
ジャン=エリック・ベルニュ 2010-2011 2010年8位、2011年2位 2012-2014(トロ・ロッソ)
シャルル・ピック 2008-2009 2008年6位、2009年3位 2012-2013(マルシャケータハム
ギド・ヴァン・デル・ガルデ 2007-2008 2007年6位、2008年チャンピオン 2013(ケータハム)
ジュール・ビアンキ 2009, 2012 2009年NC、2012年2位 2013-2014(マルシャ)
マックス・チルトン 2009 2009年40位 2013-2014(マルシャ)
ケビン・マグヌッセン 2012-2013 2012年7位、2013年チャンピオン 2014-2020, 2022-(マクラーレン、ルノー、ハース
ウィル・スティーブンス 2012-2014 2012年12位、2013年4位、2014年6位 2014-2015(ケータハム、マルシャ)
カルロス・サインツJr. 2013-2014 2013年19位、2014年チャンピオン 2015-(トロ・ロッソ、ルノー、マクラーレン、フェラーリ)
ロベルト・メリ 2014-2015 2014年3位、2015年14位 2015(マルシャ)
アレクサンダー・ロッシ 2010-2012 2010年NC、2011年3位、2012年11位 2015(マルシャ)
ストフェル・バンドーン 2013 2013年2位 2016-2018(マクラーレン)
エステバン・オコン 2014 2014年23位 2016-2018, 2020-(マノーフォース・インディアレーシング・ポイント、ルノー、アルピーヌ
ピエール・ガスリー 2014 2014年2位 2017-(トロ・ロッソ、レッドブル、アルファタウリ、アルピーヌ)
ブレンドン・ハートレイ 2009-2011 2009年15位、2010年10位、2011年7位 2017-2018(トロ・ロッソ)
セルゲイ・シロトキン 2012-2014 2012年35位、2013年9位、2014年5位 2018(ウィリアムズ)
ニコラス・ラティフィ 2014-2015 2014年20位、2015年11位 2020-2022(ウィリアムズ)
ニック・デ・フリース 2015 2015年3位 2022-2023(ウィリアムズ、アルファタウリ)

フォーミュラ・ルノーV6・ユーロカップ

フォーミュラ・ルノーV6・ユーロカップFormula Renault V6 Eurocup)とは、2003年に創設されたフォーミュラ・ルノー選手権。2003年、2004年の2年開催したのみでワールドシリーズ・バイ・ニッサンと統合され、2005年から「フォーミュラ・ルノー3.5」となった。

車体

イタリアのタトゥース(Tatuus)社製のシャシーを使用し、エンジンは、ルノー製の排気量3.5L V6エンジン、ルノーV4Y RSを搭載した(370馬力)[5]

歴代チャンピオン

チャンピオン
2004年 ジョルジオ・モンディーニ(Giorgio Mondini)
2003年 ホセ・マリア・ロペス(Jose Maria Lopez)

類似カテゴリ

フォーミュラV6・アジア・バイ・ルノー

タトゥース・FRV6

フォーミュラV6・アジア・バイ・ルノーFormula V6 Asia by Renault)は、ルノー・スポールの協力の下、AFOS(アジアン・フェスティバル・オブ・スピード)によって主催され2006年に初開催された選手権である。

初年度となる2006年は、マレーシアインドネシア中華人民共和国の3ヵ国で5イベント全12戦の日程で開催された。2007年については、これら3ヵ国に加え、日本・オートポリスで開催された。

車体

シャシー及びエンジンは、2004年をもって開催が終了したユーロカップ・フォーミュラ・ルノーV6選手権のものを流用している。

歴代チャンピオン

チャンピオン
2009年 ハマド・アル・ファルダン
2008年 ジェームズ・グランウェル
2007年 ジェイムス・ウィンスロー
2006年 カルン・チャンドック

脚注

  1. ^ F1ライセンス制にルノーが抗議。政治的変更との声も”. オートスポーツweb. 2015年1月10日閲覧。
  2. ^ “フォーミュラ・ルノー3.5:『フォーミュラV8 3.5』として再スタート”. F1-Gate.com. (2015年10月20日). http://f1-gate.com/formula-renault-35/news_28860.html 2015年11月8日閲覧。 
  3. ^ 金丸悠参戦のフォーミュラV8 3.5が20年に及ぶ歴史に幕。2018年の開催見送り
  4. ^ ZRS03 (3.4-litre)”. GIBSON TECHNOLOGY LIMITED. 2022年9月20日閲覧。
  5. ^ Technical Data”. Renault sport. 2007年 10 月14 日閲覧。

関連項目

外部リンク

公式サイト





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