ニュージーランドの鉄道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/21 09:50 UTC 版)
ニュージーランド | |||
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ミッドランド線で1600トン石炭列車を牽く重連のDXクラスディーゼル機関車 | |||
運営 | |||
施設保有機構 | オントラック | ||
主要事業者 | トランツ・メトロ、トランツ・シーニック、ベオリア | ||
統計 | |||
乗客数 | 1,290万人 | ||
貨物輸送量 (トンキロ) | 38億5200万トンキロ | ||
距離 | |||
総延長 | 3,807 km | ||
複線距離 | 231 km | ||
電化距離 | 506 km | ||
軌間 | |||
主な軌間 | 1,067 mm | ||
1,067 mm | 3,807 km | ||
電化方式 | |||
主電化方式 | 交流25kV50Hz | ||
交流25kV50Hz | 411 km | ||
直流1500V | 95 km | ||
設備 | |||
トンネル数 | 1,787 | ||
橋梁数 | 150 | ||
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設備
鉄道網の所有
鉄道網の所有権は、国有企業であるオントラック(ONTRACK、旧ニュージーランド鉄道 New Zealand Railways Corporation)に与えられている。実際の鉄道の営業は、民間企業によって行われている。最も大きな運営会社はオーストラリア資本のトール・レール(Toll Rail)とその子会社トランツ・メトロ(Tranz Metro)、トランツ・シーニック(Tranz Scenic)であり、他にオークランドの通勤鉄道を運営しているベオリア(Veolia)がある。
1993年から2004年までは、線路を含む鉄道網は、民間企業のトランツ・レール(Tranz Rail、正式名ニュージーランド鉄道 New Zealand Rail Limited)が所有していた。鉄道網はその後再国有化されている。
線路
ニュージーランドの鉄道網は全長およそ3,898kmあり、そのうち約500kmが電化されている。内陸の山がちな地形を通じて建設するコストを抑えるために、日本同様に1,067mm狭軌が採用されている[1]。複雑な地形は、ラウリム・スパイラル(Raurimu Spiral)に代表される土木技術の粋を集めた数々の施設を生み出した。合計で1,787の橋梁と150のトンネルがある。鉄道網は、1952年に最大の5,700kmに達している。
鉄道網は、過去に何度も大規模な改良工事がなされてきている。代表的なものとしては、1937年6月19日に開通したタワ・フラット線(Tawa Flat deviation)、1955年11月3日に開通したワイララパ(Wairarapa)へのリムタカトンネル(Rimutaka Tunnel)、1978年9月12日に開通したベイ・オブ・プレンティ地方のカイマイ線(Kaimai Deviation)などがある。これらはどれも大規模なトンネル工事が行われており、後の2つはいずれも8kmに達している。重要なインフラストラクチャーの更新は北島のノース・アイランド本線に対しても1980年代中盤に行われており、このうち一部は電化工事を含むものであった。
現在は改良計画として、オークランドの郊外網の電化が進められており、またマースデン・ポイント(Marsden Point)の港湾への連絡鉄道の計画がある。
機関車
1950年代まで、ほとんどの機関車は蒸気機関車であった。その当時は全部で3区間(ウェリントン郊外、クライストチャーチ - リトルトン、アーサーズ・パス(Arthur's Pass) - オティラ(Otira))の電化区間があり、1500V直流で電化されていたが、このうち現在も電化されているのはウェリントン区間のみである。ディーゼル化は1940年代後半から入換用の機関車から始められ、最初の本線用の機関車DFクラスは1954年から導入された。1967年までに実質的に北島から蒸気機関車が消滅し、南島でも1971年に消滅した。1983年から私有の蒸気機関車やディーゼル機関車が特別列車を運行することができるようになっている。1988年、パーマストン・ノース(Palmerston North) - ハミルトン間のノース・アイランド本線の25kV交流電化が完成している。
運営
貨物
貨物輸送はニュージーランドにおいて、鉄道事業収入の圧倒的な割合を占めており、その大半はばら積み輸送となっている。一般貨物はほとんどコンテナ化、あるいはパレット化されたものに限定されている。ばら積み貨物は、石炭、石灰、鉄、木材、木材製品、パルプ、牛乳、自動車、肥料、穀物などである[1]。貨物営業はトール社(Toll)によって行われている。
ほとんどの貨物輸送は輸出産業向けとなっており、輸送能力を重視している。例えば、ミッドランド線(Midland Line)での石炭輸送では、DXクラスディーゼル機関車の重連で牽引され、30両の石炭車からなる1600トン運転が行われている。
かつての鉄道事業者、トランツ・レールは、貨物を道路輸送に追いやったと非難されている。2002年に、トランツ・レールは固定編成のコンテナ車で大半の貨物をコンテナ化して輸送する、議論を呼んだコンテナ化計画を実行した。コンテナ積み降ろし設備は主な貨物ターミナルに設置された。結果として、2003年に鉄道網が再国有化されたことから、政府はトール社が最低限の貨物輸送量を維持しなければ独占的に線路を利用して貨物営業する権利を与えないことになった。
貨物輸送の水準は、現在ではかつて鉄道が事実上の独占をしていた1983年以前と同水準に達している。1980年には鉄道貨物輸送は1180万トンであったが、1994年には940万トンに減少し、1999年までに1290万トンまで回復して、これは1975年のピークよりもわずかに大きい[2]。1982年の規制緩和後、貨物輸送に対して大胆な合理化が実施され、小さな駅や操車場は閉鎖され貨物列車のスピードアップ、輸送能力向上が行われるとともに、1987年には車掌車の連結廃止、さらに古い車両、特に二軸車の淘汰が進められた。
近年、貨物輸送はかなり成長しており、ばら積み以外の分野でも成長し始めている。オークランドとパーマストン・ノースの間では、2006年から2007年にかけて貨物輸送量の39%の伸びを記録した。667kmの路線に毎日運行される5本の貨物列車により、並行する道路を走るトラックは毎日120台分削減されている[3]。
長距離旅客輸送
旅客鉄道輸送の最盛期であった1950年代から1960年代にかけては、多くの地方で旅客鉄道輸送が行われていた。1965年には2500万人の旅客が鉄道を利用していたが、1998年には1170万人に減少した[2]。現在ではわずかに4つのルートで長距離旅客輸送が残っているのみである。
- オーバーランダー(Overlander) — オークランド - ウェリントン間(2006年9月に廃止予定であったが、減便されて存続している、2012年6月末からノーザンエクスプローラー(Northern Explorer)に改称)
- キャピタル・コネクション(Capital Connection) — ウェリントン - パーマストン・ノース間(平日のみ運転)
- トランツコースタル(TranzCoastal) — ピクトン - クライストチャーチ間(毎日1往復運転だが、クライストチャーチ地震による利用客の減少で冬季運休あり)
- トランツアルパイン(TranzAlpine) — クライストチャーチ - グレーマス(Greymouth)間(毎日1往復運転)
長距離旅客輸送はトールの子会社であるトランツ・シーニックによって運営されている。ワイララパ・コネクション(Wairarapa Connection)も長距離旅客輸送に分類されることがあるが、これはウェリントンの通勤鉄道事業者であるトランツ・メトロによって運営されている。
オークランドからタウランガまでのカイマイ・エクスプレス(Kaimai Express)、ロトルア(Rotorua)までのガイザーランド・エクスプレス(Geyserland Express)、ネーピアまでのベイ・エクスプレス(Bay Express)は2001年に、クライストチャーチとダニーデン、インバーカーギル(Invercargill)を結ぶサザーナー(Southerner)は2002年に、オークランドとウェリントンを結ぶ夜行列車のノーザナー(Northerner)は2004年に、それぞれ廃止された。
近郊旅客輸送
ウェリントンとオークランドには近郊鉄道輸送がある。クライストチャーチとダニーデンにもかつては存在していたが、政府による支援が不足していたため廃止された。
ウェリントンは1930年代にクライストチャーチに続いて2番目に電気鉄道による旅客輸送を開始した。トール社はトランツ・メトロを子会社として所有しており、この会社がウェリントン地区の近郊旅客輸送を行っている。5つの路線があり、アッパー・ハット(Upper Hutt)からマスタートン(Masterton)までのワイララパ・コネクション以外は全て電化されている。トランツ・メトロは電車を使用し、また非電化区間ではディーゼル機関車牽引の列車を使っている。
トランツ・メトロは長らくニュージーランド最大の都市であるオークランドでも近郊旅客輸送を営業していた。全ての列車はディーゼル運転で、気動車またはディーゼル機関車の牽引するプッシュプル方式で運転されていた。2004年半ば、コネックス社(Connex)(現在のベオリア・ニュージーランド)が運営権を獲得し、トランツ・メトロはこのときには応札しなかった。
近年、オークランドの近郊鉄道は劇的な変化を遂げた。廃止された路線の再開、既存路線のヘレンズビル(Helensville)への延長)とブリトマート駅の建設、路線の電化、新線の建設などが行われた。運営はフランスのトランスデヴ社が担当している。駅や線路、車両の所有はオークランド地域輸送公社(ARTA: Auckland Regional Transport Authority)である。
保存鉄道
保存鉄道としては、レールウェイ・エンスージアスト・ソサエティ(Railway Enthusiasts Society)、スティーム・インコーポレイテッド(Steam Incorporated)、メインライン・スティーム(Mainline Steam)、タイエリ・ゴージ鉄道(タイエリ峡谷鉄道、Taieri Gorge Railway)がそれぞれ独自の車両と本線で運行可能な蒸気機関車またはディーゼル機関車を所有している。これらの団体は、1978年以降ニュージーランド鉄道網での特別列車の運転を行ってきており、また1983年以降はこれらの列車を牽引するために独自に用意した適切な機関車を使用することが認可されている。他にも数グループが、保存鉄道として、あるいは公共旅客輸送用に本線運転できる機関車を整備している。
- ^ a b Churchman, Geoffrey B., and Hurst, Tony (1991 reprint). The Railways of New Zealand: A Journey Through History. HarperCollins Publishers (New Zealand)
- ^ a b “Statistics New Zealand - Long term data series - Transport”. 2008年3月25日閲覧。
- ^ Rail freight figures up - The New Zealand Herald, Friday 17 August 2007
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