インドネシア国軍 インドネシア国軍の概要

インドネシア国軍

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 01:57 UTC 版)

インドネシア国軍
Tentara Nasional Indonesia
派生組織

インドネシア陸軍(TNI AD)

インドネシア海軍(TNI AL)

インドネシア空軍(TNI AU)
指揮官
共和国大統領[1] ジョコ・ウィドド
司令官 ユド・マルゴノ
国防大臣 プラボウォ・スビアント
総人員
適用年齢 18-49
-適齢総数
2008年
60,543,028、年齢 18-49
-実務総数
2008年
52,000,000、年齢 18-49
-年間適齢
到達人数
2008年
2,000,000
現総人員 400,000
財政
予算 47.4億ドル
軍費/GDP 0.8%
関連項目
歴史 インドネシア独立戦争
スマラン事件
イリアンジャヤ紛争
東ティモール紛争
アチェ紛争
フィリピンにおける不朽の自由作戦
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かつてはインドネシア共和国国軍(インドネシアきょうわこくこくぐん、インドネシア語: Angkatan Bersenjata Republik Indonesia 略称:ABRI "Republic of Indonesia Armed Forces")と称していた。

概要

インドネシアは、東南アジアに広がる世界最多数の島嶼に次ぐ世界第4位の人口が散在して生活しており、国土と領海排他的経済水域およびその上空の防衛負担は大きい。また、インドネシアにおいては、その民族宗教などの多様性や、人口経済力政治力の集中するジャワ島ジャワ人への反発もあって、いくつかの民族紛争を抱えていることから、国内治安維持も国軍の重大な任務である。また、スハルト政権下でインドネシア軍は、国家を防衛するとともに、これを監督するものとして位置づけられていた。実際、9月30日事件においては、国軍とインドネシア共産党が対立する構図が背景となっている。スハルト政権の多くの閣僚が軍人としての経歴を有していて、このことは、社会全体に軍の影響力をおよぼすこととなり、多様な民族・宗教を有する同国の統一に益することとなった。しかし、この方針は同時に、政府の軍に対する統制を弱体化させることとなった。インドネシア軍は、9月30日事件直後のインドネシア共産党の物理的解体など、複数の重大な人権侵害事案を主導または関与したとして、国際的な非難を受けている。

インドネシア国軍は、インドネシア独立戦争の最中にゲリラ戦部隊として誕生した。1945年8月17日オランダによる植民地支配からのインドネシアの独立直後の同22日、人民治安団(Badan Keamanan Rakyat)が政府布告によって結成され、さらに10月5日には、より軍事組織としての性格を強めた人民治安軍(Tentara Keamanan Rakyat)が結成されている。これらは、第二次世界大戦下の日本の占領下で現地軍として編成されていた郷土防衛義勇軍や蘭印軍などの将兵を糾合し、急速に体制を整備していった。また、その過程において多数の残留日本兵が国軍の創設を援助していたことが知られている。

2000年1月までは警察も国軍の管轄下に置かれていたが、民主化に伴う改革の一環として同月以降は国軍から分離され、国家警察本部として再編された。

現在のインドネシアは志願制度である[2]兵器体系は、かつてはアメリカに準じていたが、東ティモール問題のために禁輸措置を受けてからは、東側の兵器も導入されている。なお、禁輸措置は2005年に解除された。

陸軍

陸軍の紋章
国産のPindad SS1自動小銃を手にする兵士

インドネシア陸軍の兵力は30万40人[2]。40万人の予備役を有しており、インドネシア国軍における最大勢力である。

基本的には軽装備の歩兵部隊であり、多彩な小火器とともに、軽戦車榴弾砲・多連装ロケット砲などといった少数の重装備によって武装している。

編成

陸軍は、12の軍管区担当司令部(Kodam)と複数の機能別軍によって構成されている。それぞれの軍管区司令部は、複数の歩兵大隊と、場合により1個の騎兵大隊、また、砲兵および工兵の分遣隊を有しており、この他に、地域の保安を担当する部隊と訓練部隊がある。現在の陸軍の基本戦術単位は大隊で、作戦単位としての師団制は採用されていない。また、機能別軍としては、特殊作戦軍Kopassus)と戦略予備軍(Kostrad)、航空作戦軍の3つがある。

装備

国産のPindad Panser装甲車

小火器としては国営企業PT Pindadが製造したPindad SS1自動小銃FN FNCのコピー)を主力小銃として使用している。PT Pindad社製品では他にもPindad P1拳銃Pindad SM-2およびPindad SM-3機関銃、Pindad SPR狙撃銃を使用している。外国製小火器ではSIG SAUER P226H&K MP5M16ステアーAUGH&K G36AK-47特殊部隊が使用する。

インドネシアは、領土に近接する脅威がなく、また、島嶼国家という特性にもかかわらず洋上・航空輸送力が貧弱であるため、従来は主力戦車を保有していなかった。したがって、陸軍の機甲火力の主眼は軽戦車に置かれており、AMX-13スコーピオンPT-76を合計で200両前後保有している。2011年にはAMX-13の近代化改修とともに、韓国斗山社とインドネシアが共同で、斗山社のブラックフォックス装輪装甲車にCSE-90砲塔コッカリルMk.3 90mm低圧砲)を搭載した火力支援車を開発し、調達する計画が公表された[4]ほか、同年11月にはドイツ製のレオパルト2A6主力戦車100両の導入計画が公表された[5]

また、遠戦火力としては、アメリカ製のM101 105mm榴弾砲ロシア製のBM-14 ロケット砲などといった古典的ベストセラーのほか、新型のシンガポールFH-88 155mm榴弾砲FH-2000 155mm榴弾砲チェコスロバキアRM-70 ロケット砲なども導入している。

また、陸軍は航空作戦軍の指揮下に小規模な航空隊を保有している。保有機は、Mi-35攻撃ヘリコプター×8機、MBB Bo 105軽汎用ヘリコプター×17機、ベル 412汎用ヘリコプター×28機、Mi-17輸送ヘリコプター×16機などである。


  1. ^ 「大統領は、陸軍、海軍及び空軍の最高司令権を有する」(憲法第10条)(インドネシア共和国憲法 日本国法務省
  2. ^ a b c d e 日本国外務省インドネシア共和国(Republic of Indonesia)基礎データ「軍事力」が引用する国際戦略研究所(IISS)『ミリタリーバランス』2021年版
  3. ^ 「民間人」予備兵部隊が発足 インドネシア/人権団体「差し迫った危機ない」市民弾圧の過去 乱用警戒毎日新聞』朝刊2021年11月6日(国際面)2021年11月24日閲覧
  4. ^ Defense Studies (2011年2月24日). “Pussenkav Ujicoba AMX-13 Upgrade” (インドネシア語). 2011年11月29日閲覧。
  5. ^ Parwito - detikNews (2011年11月11日). “TNI AD Akan Beli 100 Tank Leopard & 8 Heli Apache Baru” (インドネシア語). 2011年11月13日閲覧。
  6. ^ 韓国大宇造船、インドネシアに潜水艦1隻引き渡しへ”. 中央日報 (2018年4月27日). 2018年5月6日閲覧。
  7. ^ “東南ア3カ国が合同警備開始 比ミンダナオ島沖、対ISで協力”. 『日本経済新聞』朝刊. (2017年6月20日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM19H9M_Z10C17A6FF1000/ 
  8. ^ 平成24年版 防衛白書
  9. ^ Indonesia showcases CH-4 UAVs at military parade”. ジェーン・ディフェンス・ウィークリー (2019年10月7日). 2019年10月10日閲覧。
  10. ^ Indonesia acquires four Wing Loong I UAVs from China”. IHS Jane's 360 (2018年2月25日). 2018年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年3月10日閲覧。
  11. ^ 米国、F15をインドネシアに売却 南シナ海対応を強化”. 日本経済新聞 (2023年2月11日). 2023年6月1日閲覧。


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