八機神
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 15:07 UTC 版)
人の手により造られた、最初の操兵とされる。八聖者(プル・オ・ルガティ)達の乗機であり、製造は一万年以上前に遡る。作中では「原始聖刻教会が所有していた3,000年前」、「2,500年前、白き王の帝国の時代に作られた~」と時代が混同された言及がなされており、また更に時代を遡る古代文明や操兵が存在しているため、混乱に拍車をかけている。 それぞれ龍・虎・鳳・狼の四聖獣と八門の属性を与えられている。形態としては、狩猟機型、呪操兵型、ハイブリッド型に分けられているが、得手・不得手の意味合い程度の分類であり、いずれも狩猟機と呪操兵の能力を兼ね備え、限定的(とはいえ、機体によっては仮面が無事なら半身の損傷さえたちまちに再生する)ながら自己修復能力を持つなど、現代の操兵を遥かに超越した性能を持っている。自己修復の停止したアルタシャールは工呪会が技術の粋を尽くして修復したが、仮面の自己チェックでは半分の力しか発揮できないと判定しており、隔絶した技術レベルで製作されたことが窺われる。 基本的に、八聖者の転生者である特定の操手にしか動かすことができない。また、仮面に宿る人格は一般の操兵とは比べ物にならないほど強力であり、転生者であっても自身が認めた操手でなければ受け入れない。アヌダーラは起動させようとしたガルンに強烈な苦痛を浴びせ、アルタシャールは適格者でない者が乗り込むと死に至らしめ自身の延命エネルギーに利用するほどだった。 記録に登場したのは約1,500年前となる東方歴1088年で、聖刻教会によるワースラン建国を脅威とみた東方北部の国家が連合してワースランを攻撃した(教都攻囲戦)際に、時の法王の祈りに応えて出現したとされている。この際は操手を強制的に操手槽に転移させて起動し、八騎のみで万を超える攻囲軍を瞬く間に撃退したが、操手のうち生き残ったのは2名のみで戦闘後残りの6名は死亡していたとされる(この時の生き残りが現在のクランド家とストラ家の祖であるという)。このときの機影は、教都の守護としてワースランの八つの門に刻まれている(彫刻の姿はレイヴァーティンのように正確なもの、タイクーン・ロウ・ブライマのようにまるで似通らないものまで様々である)。また、西方ではペガンズ八柱神の原型となったとも伝わる。 覚醒すれば世界を滅ぼしかねない《八の聖刻》に人間が対抗するための存在であり、八騎そろえば聖刻力そのものを無効化でき《八の聖刻》であっても封ずることが可能であるという。実際作中ではアシュギニー・アルタシャール・タイクーン・クベーラの四騎によりヴァルダ・カーンの動きが封じられた上、カーンと対峙していたヴァシュマールも同様に動きを封じられている。結果、《八の聖刻》には全く歯が立たないはずの『ただの操兵』によりカーンは討たれ、再封印が施された。 フォノ・ヤーマ・アシュギニー(火龍の操兵) オーザムの乗るヤークシャ・キランディに姿を変えて通常の操兵として延命を図っていたが、主の危機に本来の姿を取り戻した。 両腕の肘から先が龍骸になっており、先端には髭に擬した五指を備え、龍骸内部にも印手を収納している。形態としては呪操兵型だが、格闘能力と呪操兵の機能をバランス良く持つとされ、機体も頑強。武器は持たないものの背中に生えた二本の龍の尾により、接近戦では自律的に防御、攻撃を行うことができ、オーザムの経験不足を補ったが、クリシュナとの力量差を埋めるまでは到らなかった。周囲の火のエネルギーを操ることができ、広範囲の地面を溶岩化させるほどの熱量をもたやすく吸収する。カル・マヌガーヤはアシュギニーの再現を目標として建造された機体である。 ヴァルダ・カーンの封印後は「拝火の里」で修復のため眠りについていたが、ダム・ダーラの命で現れたクレイグによって強奪を受ける。 ムゥノ・ヴァシュラ・アヌダーラ(木龍の操兵) 厳重に隠蔽されたストラ家の地下の操兵霊廟に、マーナを遮断する布に覆われ休眠状態で安置されていた。元々ストラの祖先はクランド家の傍流であり北部の出であるが、この地で発見されたアヌダーラの管理のため派遣され、布教を行いながら南部に根付いたのである。 ラグ種の原種であり、バラーハの遠い祖先である。ユジックの父も実際にアヌダーラを見た上でバラーハを作り上げたという。八機神の中でも仮面に宿る意志や感情が表に出ており、今生のガルンとバラーハ同様、前世においても機体と操手の絆が深かったと察せられる。長く主を得られず心を閉ざしかけていたが、フェンの計らいでガルンと心象世界の中での対決を経て主と認め起動する。 機体は狩猟機型で、装備も判明している分は左肩に吊った大盾とそこに格納される太刀のみと簡素。1.6リート程度とかなり小型の機体でありながら、ガルンの腕も相まって敵機を受け太刀ごと両断する強力な力を発揮する。練法戦にももちろん対応しており、練法の心得の無いガルンを操手としながら、機体側で独自に木門術を行使して支援を行うことができ(これはアルタシャールも同様)、術の触媒となる植物の種子等を格納する"隠し"が設けられている。しかし、聖騎士であるガルンはそれを良しとせず、鳳騎士団との決闘時に《根生縛》の練法を発動した際には機体を叱咤して術を解除させている。 ユィノ・アビ・アルタシャール(月狼の操兵) アビ・ルーパの原型機にあたる。八機神で唯一西方工呪会が管理していた。 適応する操手が完全に覚醒しない限り機能の凍結が解除されない設定になっており、500年前に大破して操手が死亡して以降は機能停止し、工呪会の修理後も目覚めなかった。 左腕に三日月型の長盾、背中に二本の曲刀を装備。また指先から鋼線を繰り出し、気をこめることで操兵の機体を両断することもできる。狩猟機型であるが、機体構造はやや華奢で呪操兵寄り。搭乗者のスキルに拠らず月門の練法を行使することができる。仮面の人格は女性格で、アビ・ルーパの話をすると嫉妬心にも似た感情を見せたちまち機能を低下させる・ジュレには心を開き素直に言うことを聞くなど、アヌダーラ同様極めて強い個我を持つ。ストーリーの中軸に絡むために活躍も多く、3巻に渡って異なるデザイン画が掲載された。 アビ・ルーパはアルタシャールの適格者を探すための機体でもあり、アビ・ルーパを乗りこなしたクリシュナに渡されたが、当時のクリシュナは覚醒していないため仮面に認められず完全に起動させることができなかった。ダロトの発案により練法によって仮面を騙す胸当てを装備して起動させている。これはクリシュナに「黒き血」を注入するための罠であり、血の覚醒の結果、新たに格闘腕が形成される等、大幅な形態変化を遂げる。この形態でアシュギニー、さらに「黒き僧正」との戦闘に勝利するも、「僧正」本体に憑依され依代となって更なる形態変化を遂げる。最終的に「僧正」からは解放され、ヴァルダ・カーンの再封印後はア・ゴーン城内の駐機場でジュレから治療を受けていたため約一年後のヴァルダラーフ戦の時点ではほぼ完全に本来の性能を取り戻している。 フェノ・タイクーン・ロウ・ブライマ(風狼の操兵) ゾマのかつての修行地で、カルラの菩提とともに終焉の地に選んだジンバーの遺跡に眠っており、ダム・ダーラの結界により隠されていた。ゾマが月門門主ソティスの呪操兵により危機に陥った際に目覚め、ゾマを主とする。 腰にプレ・ヴァースキンと色違いの黒い太刀と錫杖を装備しており、太刀を取ると兜と面覆いが降り、外套を肩装甲に巻き上げてマントにしてタイクーン・ロウと呼ばれる狩猟機形態に、錫杖を取ると面が露出し、マントが全身を覆う外套となってロウ・ブライマと呼ばれる呪操兵形態に、それぞれ変形するハイブリッド型。状況によって形態に応じた能力を行使することができる。狩猟機型になると手足の太さが二倍に膨れ上がり装甲も増厚するなど、機械的な変形の範疇を逸脱しており、変形というよりは変身といった趣である。 操手槽に心肺機を流用した操手向け自動治療装置が備わっており、ゾマはそれを用いて延命を図っている。 登場が早く活躍も多いが、全身のデザインは第四部に至っても公開されていない。 パフォーマンス的にはタイクーン・ロウ形態のほうが総じて強力となっているが、操手にかかる負担も大きいため、創造者の設計限界を超えて生き延びているゾマはロウ・ブライマ形態を多用する。 シュノ・ヴァルダラーフ・シャンパオ(水虎の操兵) アヌダーラ同様にバクル老の責任下でクランド家が厳重に管理していたはずだが、なぜかダム・ダーラ麾下のカイユがレプリカを乗機としていた。狩猟機型でシィフ・バイロンを初めとする「ラーフ」種の原型である。機体色は透き通った湖水を彷彿とさせる青となっている。操手にこだわりがないためか、水門の練法も剣技と併用する。 聖樹「参」ではカイユ自身から彼が操るのは代わりがいくらでもある模造品であることが明言された。 ツォノ・パドゥマ・クベーラ(土虎の操兵) バール・デンドルの操兵マ・ソウグ・シーカの真の姿。四足歩行の胴体に人型の上半身が乗った半人半獣型の異形の操兵。呪操兵として脚だけでなく腕も二対備えており、他の操兵の倍にもなる体積および重量を持つ超大型重操兵である。 パドゥマ・クベーラ自体は元々上半身が失われた状態で発見されており、ダム・ダーラが操手共々自陣にとどめておくためにツォノ・マ・ソウグに改修し、適格者である(自覚していないが)バールに与えていた。 偶然にもバールがもとの愛機ケイマン・シーカの上半身を結合してマ・ソウグ・シーカとしたことで本来の姿を取り戻し、ヴァルダ・カーンと八機神が次々に覚醒したことに触発されて覚醒、即座に元の姿へと再生した。設定画では長柄の大鎌を携行する他、両肩に鎌状の刃を備える。マ・ソウグ同様直接戦闘にも長けた操兵だが、機体分類はあくまで呪操兵型とされている。 本来の力を取り戻したことにより、呪操兵にしては練法増幅能力が低かったマ・ソウグとは一線を画した強力な増幅力を備えるに至り、さらに機体の重量を生かした殴打をも得意とする、ダロト向きの機体となっている。 第四部では《黒き血》の発作に侵されたメルをア・ゴーン城にいたジュレの元に届け、さらにメルを拉致しようとしたカイユのヴァルダラーフと交戦。いまだヴァルダ・カーン戦での損傷から完全回復していない状態ながら奮闘、左腕と結印用右腕を失いながらもクリシュナのアルタシャールの救援もありなんとかメルとともに離脱したかに見えたが、ミカルドのレイヴァーティンに捕獲され、残る六本の手足をすべて破壊されて人質にされてしまう。 リィノ・クワルタク・アバスターク(陽鳳の操兵) 聖刻1092本編の前史にあたる外伝「北方の傀儡師」に登場。その時点で稼働状態にあった唯一の八機神で、「東門」を守護する機体。 赤目族(キリト)と呼ばれる古代人の末裔によって管理されていた。 飛行能力を有し、ティン種の原種であることを思わせる描写がある。 フェノ・タイクーン・ロウ・ブライマ同様、狩猟機と呪操兵のハイブリッド型とされているが、形態チェンジするかどうかも含め、詳細は不明。 キノ・アウラ・レイヴァーティン(金鳳の操兵) 狩猟機型で、ティン種の原型機の元となった。飛行能力に加え、金剛石の強度と黄金の展延性を兼ね備えた、八機神でも随一の強力な装甲を備える。
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