山形新幹線
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機能強化構想
酒田延伸
2000年の第42回衆議院議員総選挙で庄内地方を地盤とする加藤紘一が「庄内にミニ新幹線を通す」ことを公約に掲げ、さらに当時の高橋和雄山形県知事が庄内延伸構想を明らかにした[新聞 17]。2002年2月には酒田商工会議所会頭であった新田嘉一らが中心となり庄内延伸促進期成同盟会が結成され[新聞 18]、県やJR東日本に対し積極的な陳情を開始し、同年4月の定例会見で高橋知事が庄内延伸を「本腰を入れ研究する時期が来ている」と述べ、県が設置した山形新幹線機能強化検討委員会などにおいて検討していく方針を示した[新聞 19]。
県は2003年度から3カ年計画で山形新幹線の庄内延伸と板谷峠のトンネル化の検討を始め、2005年2月には県は機能強化検討委員会に庄内延伸の終着駅は酒田駅だけと報告し、新庄駅 - 酒田駅間55.2キロメートルにミニ新幹線を走らせると、酒田駅 - 東京駅間は18分短縮され3時間43分。費用は350億円。年間の経済波及効果は10億4千万円。福島駅 - 米沢駅間の板谷峠にトンネルを抜くと、840億円かかり、16分の短縮ができると試算した[新聞 20]。県では、置賜地方から庄内地方までを1本の鉄路で直結することによる県土軸の構築が図れるとして推進する意見が強かった。しかし、2005年1月の山形県知事選で高橋を破り初当選した斎藤弘は酒田延伸について「費用対効果から判断する」としていたため、酒田ではこの時点でほとんどの人が庄内延伸は棚上げとなったと受け止めていた[新聞 20]。
2006年3月6日、県は山形新幹線の庄内(酒田)延伸と羽越本線高速化についての調査結果を山形県議会に報告し、時間短縮、費用対効果の観点から新幹線延伸より、羽越線高速化が有効と結論づけた[新聞 21]。これによって県は事実上庄内延伸を断念した[新聞 22]。
その後、2012年10月の酒田市長選に高橋県政下において県総務部長などを歴任した本間正巳が、新幹線庄内延伸を公約として出馬し、初当選した。本間は2013年3月に国立社会保障・人口問題研究所が地域別将来推計人口を公表した際に庄内の人口が大幅に減るとの指標を示すと、以前にも増して事あるごとに庄内に新幹線を延伸する必要があると唱え始めた。他方、庄内地方のもう一つの拠点都市である鶴岡市は、羽越本線経由の上越新幹線延伸(羽越新幹線)または軌間可変電車導入、在来線改良に積極的であり、両市の意見は対立していた[新聞 20][新聞 17][注 15]。
しかし、2015年5月14日に庄内地域の市町、議会、経済団体等で組織する庄内開発協議会は、吉村美栄子知事に対する要望の席で、会長であった榎本政規鶴岡市長が「域内交通を考えた時に陸羽西線高速化(山形新幹線の庄内延伸)もまた重要である」と吉村知事に説明し、副会長であった本間も「2市3町が整備(羽越新幹線)、羽越線高速化、山形新幹線の延伸でまとまってがんばろうとなった」と述べ、庄内が一体となり協調して高速交通網の整備促進に取り組む姿勢を表明した[新聞 23]。また、同年9月には酒田市の強い要望で2008年5月から活動を休止していた陸羽西線高速化促進市町村連絡協議会が、病死した本間の後継として酒田市長に当選した丸山至が会長に就き再開され[新聞 24]、新幹線庄内延伸を目指し吉村知事らに働きかけを行っているほか[新聞 25]、講演会を開くなどしている[新聞 26]。
大曲延伸
新庄駅から大曲駅までの延伸が沿線自治体の一部で論議されており、山形、秋田両県で組織される山形新幹線延伸早期実現期成同盟会と2001年に結成された湯沢市(秋田県)を事務局とする山形新幹線大曲延伸推進会議が実現を訴えている[注 16][新聞 27][新聞 28]。
秋田県が2003年3月に策定した「あきた21総合計画」第2期実施計画では新幹線延伸について、沿線市町村の積極的取り組みを前提に、JR東日本、山形県との協議を踏まえ2010年までに着手すると謳ってはいたものの具体的な道筋は示していなかった[新聞 27]。秋田県南では地元自治体主催の山形新幹線大曲駅延伸の集会などが開かれているが、秋田県建設交通政策課では新庄 - 大曲間の事業費を概算で1300億円以上と見積もっており、2003年12月に秋田県議会建設委員会に置いて秋田県はJR東日本秋田支社からの意見を聴衆した際に「採算性を確保できるかどうかの見極めが大切。行政側から黒字化が見込める枠組みの提示が必要だ」との回答があったことを報告し、多額の費用負担を伴う鉄道整備の早期実現は難しいため高速交通網の整備は高速道路を優先したいとし、国に対し新たな建設手法の構築を求めて行きたいとしていた[新聞 29]。
また、改軌延伸を困難にしている一因として軌道連続更新機(愛称:ビッグワンダー)が秋田新幹線の開業工事に次いで、新庄延伸工事で使われたあと、必要性がなくなったためJR東日本がタイ国有鉄道へ売却し、日本国内には無いという事情も挙げられる[報道 17][新聞 30]。
新トンネル整備構想
安全・安定輸送の実現を図るため、板谷峠に21.9kmのトンネルを掘って短絡路線を新設するなどの改良計画がある。2002年の山形県議会における政策提言では、事業費を840億円と見込み、所要時間が16分短縮されるとしている[23]。
2015年5月の山形県知事とJR東日本の社長との会談で、JR東日本は山形新幹線の運休や遅れにつながる大雨、豪雪対策について、2017年までの2年間で福島 - 米沢間の抜本的な対策に向けて調査すると表明し[新聞 31]、その結果がまとまり、2017年11月29日、JR東日本が山形県に概要を説明した。それによれば県境部にトンネルを掘削する場合、地形や地質などを考慮し、現在の山形新幹線を前提とした事業費を1500億円と見積もり、吉村美栄子知事が要請していた将来のフル規格新幹線に対応可能なトンネル断面に広げる場合は120億円の増額と試算した[新聞 32][新聞 33]。これを受け、12月1日に吉村知事がJR東日本本社の冨田哲郎社長を訪ね、トンネル整備の早期事業化を要望した[新聞 34]。
こののち、県とJR東日本はトンネル新設について協議を重ねてきたが、2021年、JR東日本は急カーブを緩やかな曲線に変え、直線に近いルートを想定することで、東北新幹線などのフル規格新幹線仕様と同じ平均時速200キロ以上の走行を可能とするなどの新たな提案を示した。この提案はトンネル内で減速の必要がなくなり、フル規格実現を目指す県の意向と合致したことから、県は県議会9月定例会にトンネル新設に関する調査費2200万円(限度額)を債務負担行為として盛り込んだ2021年度一般会計補正予算案を提案した。補正予算案が可決されれば、両者が共同して同年度中にも調査準備に入る[新聞 35]。このトンネル新設について、9月30日の定例会見でJR東日本の三林宏幸仙台支社長は「地元の理解、協力を得ながら事業化を進めていきたい」と語り、多額の事業費については「県、国に説明しながら、どういう(負担の)形になるかを含めて検討し取り組みたい」と述べた[新聞 36]。
注釈
- ^ 大宮駅 - 小山駅間で古河市を通過するが駅はない。
- ^ 宇都宮駅 - 福島駅間の東北新幹線列車には320 km/h運転を行うものもあるが、山形新幹線列車はE8系の場合最高速度300 km/h、E3系の場合最高速度275 km/hで運転している。
- ^ 東京、上野、大宮の3駅では誤乗防止のため、発車標で6方面の新幹線(東北・山形・秋田・北海道・上越・北陸)を識別する色を独自に用いており、山形新幹線ではオレンジ色(■)を採用する。なお、フルカラーLED式の行先表示器を採用する車両(E3系2000番台、E2系1000番台J70番台編成、E5系、E6系、E7系、ならびにJR北海道所有のH5系、JR西日本所有のW7系)では、行先表示器の列車名もこれらの路線色で表示される。
- ^ 10駅ともあくまで在来線にある新幹線直通列車が停車する駅であり、他の都道府県とは単純比較はできない。
- ^ 福島駅 - 庭坂駅間、米沢駅 - 大石田駅間[報道 6]および新庄駅付近は、2018年12月17日のJR東日本による公表時点で、携帯電話の利用が可能とされている[報道 7]。
- ^ 新庄延伸時は新庄駅を6時21分に発車していたが、2001年12月のダイヤ改正以降は現在の5時40分前後の時刻になった。
- ^ 北陸新幹線(当時は長野新幹線)は2005年から全面禁煙化済。
- ^ 50キロ以遠はA特急料金より割安
- ^ 仙山線の終点は羽前千歳駅であるが、列車は全て山形駅へ乗り入れる。
- ^ 左沢線の起点は北山形駅であるが、列車は全て山形駅へ乗り入れる。
- ^ 湯沢駅 - 東京駅間は秋田新幹線利用で647.5 km、山形新幹線利用で483.2 km。
- ^ 大曲駅で秋田新幹線への乗り換えは必ず階段利用となる
- ^ 東北新幹線を含めたフル規格新幹線は、騒音問題や保守時間確保のため通常は6時〜24時の間にしか運行されないが、在来線特急扱いのミニ新幹線はその制約を受けない。
- ^ このとき東京便は1日5往復あった。
- ^ 新庄駅から陸羽西線を経由して庄内地方に進入する場合、陸羽西線は酒田市へ至り、鶴岡市へは途中の余目駅で羽越本線にアクセスする必要がある。即ち、陸羽西線経由で酒田・鶴岡の両市へ向かう場合、「二股化」が起こり、両都市を一筆の路線で直結しにくい状況となる。また、地理的歴史的経緯からも、奥羽本線及び並走する国道13号線に沿った奥羽新幹線の代替としての機能から、奥羽本線沿いへの延伸案がより自然であるとの見解もある。前述の県土軸構想も、あくまで山形県内での交通網の完結に基づく発想であり、他県との連携や国土軸構想上の視点では羽越本線高速化の案が理に適うとする意見もある。
- ^ 秋田湯沢市・雄勝郡、横手市・平鹿郡、大曲市・仙北郡の当時の28市町村の関係202団体で結成時は構成されていた。
出典
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