外毒素 外毒素の概要

外毒素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/26 22:37 UTC 版)

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特徴

外毒素は毒性が内毒素に比べて強く、熱には不安定な場合が多い。つまり、熱やホルマリンで毒性を失わせ(不活化)やすく、その無毒化された物質(トキソイド)を動物へ接種すると高い免疫原性を獲得する。このトキソイドは破傷風ジフテリアなどで実用化されている。

分類

統一された分類基準はないが、特異的な作用に基づいて、神経毒素、壊死毒素、溶血毒素、腸管毒素などと[1]、また、毒素作用機序や標的分子の違い、影響を受ける臓器・器官に着目した分類が行われる[4]

神経毒素[4][2]
破傷風菌 Clostridium tetani、ボツリヌス菌 Clostridium botulinum
壊死毒素
Edwardsiella 属細菌[5][6]
溶血毒素[4][2]
腸炎ビブリオ(耐熱性毒素を産生)Vibrio parahaemolyticus、コレラ菌 Vibrio cholerae、化膿性レンサ球菌 Streptococcus pyogenes、黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus、セレウス菌 Bacillus cereus、エロモナス・ハイドロフィラ Aeromonas hydrophila、リステリア Listeria monocytogenes、ビブリオ・バルニフィカス Vibrio vulnificus化膿レンサ球菌 Streptococcus pyogenes (猩紅熱)
腸管毒素(エンテロトキシン)[4][2]
スーパー抗原(T細胞活性化毒素)[4][2]
黄色ブドウ球菌#毒素性ショック症候群の原因物質[7]

病原性

下記の実験結果を満たしている時に外毒素が病原因子として働いていると考えられる。

  • 毒素産出量と細菌の病原性の強さが比例する。さらに毒素産出能が脱落した変異株は病原性が消失するか減弱する。
  • 精製された毒素が、個体・細胞・分子のいずれかのレベルで作用を発揮し、細菌の病原性を説明できる。
  • 抗毒素血清で病原性が抑制される。

外毒素の作用の多くは症状との関連を説明することができる。ジフテリア破傷風ボツリヌス中毒などのように単一の毒素で症状が説明できる場合と、ブドウ球菌レンサ球菌による感染症のように、数種類の毒素の共同作用で病原性が説明できる場合がある。

遺伝子

外毒素遺伝子の多くは染色体上にコードされているがファージプラスミドにコードされているものもある。ファージやプラスミドにコードされている外毒素遺伝子は、毒素非産生株に、ときには種を超えて移動できることが特徴である。またファージやプラスミドを失った細菌は毒素を産出できなくなり病原性を失う。


  1. ^ a b c 鈴木潤、細菌毒素と健康 (病原因子の解析) 生物物理化学 2006年 50巻 2号 p.67-70, doi:10.2198/sbk.50.67
  2. ^ a b c d e f g 西渕光昭細菌毒素あれこれ 化学と生物 2001 年 39 巻 7 号 p. 448-453, doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.39.448
  3. ^ J.E. Alouf : ‘Bacterial protein toxins’, in “Bacterial Toxins: Methods and Protocols”, ed. by O. Holst, Human Press, 2000, p. 1.
  4. ^ a b c d e 永宗喜三郎、本田武司、細菌性食中毒と毒素 日本食品微生物学会雑誌 1996年 13巻 2号 p.55-61, doi:10.5803/jsfm.13.55
  5. ^ Arshad ULLAH, 新井俊彦、Edwardsiella tardaが産生する外毒素性物質 魚病研究 1983年 18巻 2号 p.71-75, doi:10.3147/jsfp.18.71
  6. ^ 飯田貴次、坂井貴光、高野倫一、エドワジエラ症 魚病研究 2016年 51巻 3号 p.87-91, doi:10.3147/jsfp.51.87
  7. ^ 三好・秋山徹、内山竹彦、スーパー抗原活性を有する細菌外毒素群 日本細菌学雑誌 1995年 50巻 2号 p.501-508, doi:10.3412/jsb.50.501


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