ヨーロッパ中心主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/30 18:47 UTC 版)
概説
R.B.マークスは、ヨーロッパ中心史観の本質を次のように述べる[2]。
「ヨーロッパが歴史を作る。世界のその他の地域の場合は、ヨーロッパがそこと接触するまで歴史はない。ヨーロッパが中心である。世界のその他の地域はその周辺である。[3][2]」
しかし、歴史学者羽田正は、ヨーロッパと非ヨーロッパを区分し、ヨーロッパの絶対的な優位性を強調するような歴史の見方は、もはや支持されないと述べる[2]。
歴史学者エンリケ・デュッセルによれば、ヨーロッパ中心主義は、ギリシア中心主義(Hellenocentrism、ヘレノセントリズム)に始まる[4]。
ヨーロッパ中心主義の内容としては、次のようなものがある。
- 哲学の始まりをギリシャからとし、それ以外の地域の哲学は傍系のものとする。
- 欧州文明を西洋として、それ以外の文明を東洋としてひとまとめにする。
- 欧州の技術、科学が全時代にわたって他文明のそれに対して優位にあったと見なす(必然的にイスラーム黄金時代は過小評価されている)。
- 欧州文明は合理的であるとし、それ以外の文明は非合理的であるとする。
ヨーロッパ中心主義の発生
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ヨーロッパ中心主義は、15世紀から17世紀の大航海時代に始まる。西欧諸国は大洋に乗り出し、アメリカ大陸や東南アジア島嶼部、北アジアなどの植民地化を進め、文化が世界各地に伝播する。ただし、トルコ支配下の東欧・中東・インド・東アジア・東南アジア大陸部においては在来文明の勢力が強く、当時は西欧文化があまり浸透しなかった。
当時の西欧は戦乱が相次いでいる有様であったが、18世紀から19世紀にかけて西欧の経済発展および技術革新の速度は、他の地域のレベルや学問レベルの発展を大きく上回り、技術的、軍事的な西欧の優位が確立した。中国やインド及びその周辺にも列強の勢力が浸透し、西欧文明は世界を席巻する。この過程で植民地になった諸国や、西欧にならった近代化を目指した地域では、自国の歴史、技術、文化を劣ったものとみなし、西欧文明を普遍のものとする価値観が広まった。
現代のヨーロッパ中心主義
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第二次大戦以降も欧米の技術的、政治的、経済的優位はしばらく変わらなかったものの、二度の世界大戦でヨーロッパは疲弊し、ドイツ語圏やフランス語圏はかつての影響力を失い、東欧はソ連が強大な勢力を有したものの経済政策に失敗し、1970年代のソ連の停滞以降は英語圏、特にアメリカ合衆国が圧倒的な影響力を持ち、西洋文明の代表を自認するようになった。このため、「欧米」とひとくくりにされているが実際はそれがアメリカ文化であることも多い。
20世紀後半以降東アジア諸国、21世紀以降はそれに加えインド、ラテンアメリカの経済発展が著しく、欧米の経済的・政治的な地位は低下しつつあるが、これらの国々でも日常的にアルファベットや外来語が使われるなど文化的・技術的な影響力は今なお大きい。
現在では欧米の大衆文化にも非欧州発祥の文化的要素が少なからず取り入れられているが、ヨーロッパ中心主義の下での文化の盗用とする見方もできる。
注釈
出典
- ^ Hobson, John (2012). The Eurocentric conception of world politics : western international theory, 1760-2010. New York: Cambridge University Press. p. 185. ISBN 978-1107020207
- ^ a b c d 羽田正「新しい世界史とヨーロッパ史」パブリック・ヒストリー 7 1-9, 2010-02,大阪大学西洋史学会
- ^ Marks, R. B., The Origins of the Modern World. A Global and Ecological Narrative from the Fifteenth to the Twenty-first Century (Second Edition), Oxford, Rowman & Littlefield Publishers, 2007(First Edition 2002), pp. 8-9.
- ^ Dussel, Enrique (2011) Politics of Liberation: A Critical World History London: SCM Press p.11 ISBN 9780334041818
- ^ カール・マルクス『経済学批判』序文
- ^ a b c d e f グッディ 1998, p. 4-5.
- ^ a b グッディ 1998, p. 6.
- ^ a b c d e グッディ 1998, p. 7-8.
- ^ グッディ 1998, p. 9.
- ^ グッディ 1998, p. 10.
- ^ グッディ 1998, p. 11.
- ^ a b c d グッディ 1998, p. 12-3.
- ^ a b c d グッディ 1998, p. 14-5.
- ^ a b グッディ 1998, p. 18-9.
- ^ 2013年9月8日 日経新聞「日曜に考える」
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