計算言語学
【英】Computational Linguistics
計算言語学とは、言語学をコンピュータ科学からアプローチすることにより生まれた自然言語処理に関わる研究分野のことである。
コンピュータで処理可能な膨大なテキストが増え続けている時代背景からも、内容を素早く知りたいという要望に応えるための自動要約技術や、異言語コミュニケーションに欠かせない機械翻訳技術なども計算言語学の一分野である。
情報工学: | フリクションドライブ フィンテック カオス 計算言語学 ナレッジエンジニア 人間型ロボット ノイマン型コンピュータ |
計算言語学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/09 06:18 UTC 版)
言語学 |
---|
![]() |
基礎分野 |
言語の変化と変異 |
理論 |
応用分野 |
関連項目 |
計算言語学(けいさんげんごがく、英: computational linguistics)または計算論的言語学とは、形式性を重視する言語学の一分野である[1]。自然言語処理と共に「理科系言語学」と称される[2]。
類似名称の言語学分野に計量言語学があるが、計量言語学は統計的な手法により自然言語を研究する分野であり、計算言語学の関連分野ないし下位分野である。
概要
定義
本稿冒頭で述べたように計算言語学は形式性を重視する言語学の一分野であるが、計算言語学と隣接分野、特に自然言語処理、の境界線は曖昧である。計算言語学と自然言語処理の差異については、専門家から次のような指摘がなされている。
言語に関する情報科学的な研究の目的は,人間の言語処理過程の科学的な究明や,ワープロや機械翻訳などの工学的な応用を含み,きわめて多岐にわたる。 …中略…「自然言語処理」はどちらかというと工学的な応用を指向した言い方であり,「計算言語学」にはもう少し基礎的・理論的なニュアンスがある — 松本ほか[2000:p.80]
計算言語学は他に自然言語処理、理論言語学、数理論理学からなる数理言語学の一分野とされる[3]場合もあるが、ここでも理学系の「計算言語学」、工学系の「自然言語処理」と位置付けられている。

一方で、計算言語学と自然言語処理が同義で用いられることもしばしばある。実際、この分野で最も権威ある国際会議計算言語学会(英語: Association for Computational Linguistics)は計算言語学(computational linguistics)の国際会議を自称するものの、現在では自然言語処理を指向した研究が多くを占めている[1]。
主な領域
畠山雄二 et al. (2013)によれば、計算言語学は次の領域からなる。上述のように境界の連続性から「計算言語学で扱われそうな項目が自然言語処理で扱われていたりする」[4]ため、適宜同書を参照されたい。
学会
日本
脚注
注釈
出典
- ^ a b 戸次大介 (2010), まえがき
- ^ 戸次大介 (2010), pp. 1–2
- ^ 畠山雄二 et al. (2013), p. ⅳ
- ^ 畠山雄二 et al. (2013), p. 172
参考文献
- 図書
- 戸次大介『日本語文法の形式理論』くろしお出版、2010年3月。ISBN 9784874244685。
- 畠山雄二、本田謙介、今仁生美、松崎拓也、宮尾祐介、但馬康宏、田中江扶『数理言語学事典』産業図書、2013年7月。 ISBN 978-4-7828-0176-5。 OCLC 857931876。
- 松本裕治、今井邦彦、田窪行則『言語の科学入門』岩波書店〈言語の科学1〉、2004年4月。 ISBN 978-4-00-006901-4。
- 論文
- 吉田将「辞書構築における諸問題」『情報処理』第27巻第8号、情報処理学会、1986年8月、933-939頁、 ISSN 04478053。
- 窪田悠介 著「計算言語学と言語類型論」、窪薗晴夫、野田尚史; パルデシ・プラシャント ほか 編『日本語研究と言語理論から見た言語類型論』開拓社、2021年2月、261-284頁。 ISBN 9784758922982。
- 郡司隆男「句構造文法」『情報処理』第27巻第8号、情報処理学会、1986年8月、868-875頁、 ISSN 04478053。
- 佐藤理史「事例を利用した自然言語処理」『言語』第22巻第3号、大修館書店、1993年3月、117-120頁、 ISSN 02871696。
- 山梨正明「計算言語学の基礎領域:推論と発話の慣用性の問題を中心に」『情報処理』第27巻第8号、情報処理学会、1986年8月、862-867頁、 ISSN 04478053。
- 首藤公昭、吉村賢治「日本語の構造とその解析」『情報処理』第27巻第8号、情報処理学会、1986年8月、947-965頁、 ISSN 04478053。
- 松本裕治「知識表現、理論的アプローチに焦点を当てて」『情報処理』第27巻第8号、情報処理学会、1986年8月、915-923頁、 ISSN 04478053。
- 西田豊明、堂下修司「計算言語学と論理学」『情報処理』第27巻第8号、情報処理学会、1986年8月、876-886頁、 ISSN 04478053。
- 石崎俊、井佐原均「文脈処理技術」『情報処理』第27巻第8号、情報処理学会、1986年8月、897-905頁、 ISSN 04478053。
- 中野洋 著「計算言語学」、玉村文郎 編『新しい日本語研究を学ぶ人のために』世界思想社、1998年10月、277-288頁。 ISBN 4790707261。
- 長尾真「計算言語学の歴史と展望」『情報処理』第27巻第8号、情報処理学会、1986年8月、855-861頁、 ISSN 04478053。
- 辻井潤一「文解析方式」『情報処理』第27巻第8号、情報処理学会、1986年8月、924-932頁、 ISSN 04478053。
- 辻井潤一 著「コーパスと計算言語学」、前川喜久雄 編『コーパス入門』朝倉書店〈講座日本語コーパス1〉、2013年7月、32-61頁。 ISBN 9784254516012。
- 田中穂積「コンピュータとの対話をめざして:計算言語学のすすめ」『数理科学』第27巻第3号、サイエンス社、1989年3月、5-11頁、 ISSN 03862240。
- 田中穂積、新田義彦「ロジック・プログラミングと計算言語学」『情報処理』第27巻第8号、情報処理学会、1986年8月、940-946頁、 ISSN 04478053。
- 白井英俊「状況意味論の立場から」『情報処理』第27巻第8号、情報処理学会、1986年8月、887-896頁、 ISSN 04478053。
- 野村浩郷、内藤昭三「自然言語理解における意味表現」『情報処理』第27巻第8号、情報処理学会、1986年8月、906-914頁、 ISSN 04478053。
関連項目
外部リンク
- ACL Anthology 計算言語学の論文をまとめたサイト
「計算言語学」の例文・使い方・用例・文例
- 計算言語学
- 計算言語学のページへのリンク