テヘラン協定

石油/天然ガス用語辞典

テヘラン協定

読み方： てへらんきょうてい
【英】: tehran agreement, teheran agreement

1971 年 2 月 14 日に、ペルシア湾岸産油 6 カ国とこれらの国で操業している石油会社 13 社グループとの間で締結された、原油公示価格の値上げ、その 1975 年までの年度ごとのエスカレーション並びに所得税率の引上げに関する協定である。OPEC が設立された 1960 年以後も 10 年間にわたって原油価格の引き上げは実現しなかったが、1970 年には米国を始めとして重油供給が逼迫したなかで、5 月にはシリアで TAP ラインが破壊され、一時的に原油需給が逼迫した。この機に乗じ、1970 年 9 月に産油国政府側としては初めて、リビアが原油公示価格および所得税率を引き上げた。それをみて 11 月にはペルシア湾岸諸国も重質原油の公示価格を 9 セント／バーレル引き上げたが、このような情勢のなかで、同年 12 月にベネズエラのカラカスで開かれた OPEC の第 21 回総会においては、原油公示価格の大幅な引き上げ、所得税率の引き上げ、インフレこう進による産油国の購買力の低下を補償するなどの方針が決議された。これを受けてペルシア湾岸産油 6 カ国が、国際石油会社グループとの交渉に入り、その交渉の結果、テヘラン協定が締結された。その内容の概略は次のとおりである。(1) ペルシア湾岸原油公示価格を一律に 1 バーレルあたり 35 セント引き上げる。(2) 税法上従来認められていた公示価格からの諸控除の完全撤廃。(3) 公示価格を毎年 2.5 ％プラス 5 セント／バーレル引き上げていく。(4) 6 カ国は、本場定期間中は、他地域の産油国において本協定と異なる事項を適用した場合でも、本協定を上回るものは求めない。(5) 所得税率を 55 ％に引き上げる。このテヘラン協定の最大の意義は、OPEC が国際石油市場における価格管理の一方の当事者として認知されたということである。またその具体的成果としては、OPEC は石油収入を大幅に増加させたし、一方石油会社にとっても中期的な市場の安定を保証されたということが重要である。テヘラン協定は 1975 年までの公式価格を固定させようというものであったが、1971 年 8 月以来のドル切り下げ、国際通貨変動に対処して、1972 年 1 月 20 日にテヘラン協定の補正としてジュネーブ協定、新ジュネーブ協定が結ばれ、国際通貨の変動に伴ってドル表示の公示価格を変動させることになった。また、1972 年からの産油国政府による操業会社の利権に対する事業参加。国有化の動きや、さらには 1973 年秋からの第一次石油危機時の公示価格の大幅値上げにより、テヘラン協定は完全にほごになってしまった。