1990年アメリカグランプリとは? わかりやすく解説

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1990年アメリカグランプリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/02 16:19 UTC 版)

 1990年アメリカグランプリ
レース詳細
日程 1990年シーズン第1戦
決勝開催日 3月11日
開催地 フェニックス市街地コース
アメリカ合衆国 アリゾナ州フェニックス
コース長 3.798km
レース距離 72周(273.456km)
決勝日天候 曇り(ドライ)
ポールポジション
ドライバー
タイム 1'28.664
ファステストラップ
ドライバー ゲルハルト・ベルガー
タイム 1'31.050(Lap 34)
決勝順位
優勝
2位
3位

1990年アメリカグランプリ(1990 United States Grand Prix)は、1990年F1世界選手権の第1戦として、1990年3月11日フェニックス市街地コースで開催された。

概要

フェニックス市街地コースでは2年連続2回目の開催となったF1アメリカグランプリはスケジュールが前年の第5戦から開幕戦に変更となり、時期も6月から3月へと約3ヶ月前倒しされた。また前年のレースが、晴天にもかかわらずレース時間が2時間を超える異例の事態となったことから、決勝の周回数が81周(307.638km)から72周(273.456km)に減らされた。

GPウィークに入ってから、ティレルは使用タイヤをグッドイヤーからピレリに変更すると発表した。ティレルはピレリタイヤのテストをすることなくシーズンに臨むことになった。

日本の自動車メーカーとしてはホンダヤマハに続き3社目となるスバルが参戦開始。コローニ水平対向12気筒エンジンを供給する。また、運送会社フットワークアロウズを買収し「フットワーク・アロウズ」として参戦。名門ブラバムもミドルブリッジに買収され、レイトンハウス、エスポ(ラルース)を含め日本人オーナーチームが4つに増えた。

予選

金曜日の予選1回目はマクラーレンゲルハルト・ベルガーが暫定ポール。2位はミナルディピエルルイジ・マルティニ、3位にはスクーデリア・イタリアダラーラ)のアンドレア・デ・チェザリス、4位はティレルジャン・アレジ、8位はオゼッラオリビエ・グルイヤール、10位はブラバムステファノ・モデナと、ピレリタイヤユーザーが上位に並んだ。フェニックス市街地の荒れた路面では、ピレリがグッドイヤーと互角以上のパフォーマンスを発揮したため、普段は中位・下位に位置するチームがタイムを伸ばした。

予選7位のアラン・プロスト

土曜日の予選2日目は降雨のためタイムが更新されず、ベルガーがマクラーレン移籍初戦でポールポジションを獲得した。マルティニはミナルディチーム設立以来初めての予選最前列を勝ち取った。日曜日の決勝はドライが予想されたため、多くのドライバーがコースに出ず、予選1日目に伸び悩んだマクラーレンのアイルトン・セナが5位に、フェラーリアラン・プロストが7位、ナイジェル・マンセルが17位に沈んだ。オニクスのJ.J.レートは両日ともにタイムを記録することなく予選不通過となった。

前年、ザクスピードで全戦予備予選落ちした鈴木亜久里はラルースへ移籍し、スポット参戦でF1デビューした1988年日本GP以来久しぶりに決勝に進出した。

予備予選結果

順位 No ドライバー コンストラクター タイム
1 33 ロベルト・モレノ ユーロブルンジャッド 1'32.292
2 29 エリック・ベルナール ローラランボルギーニ 1'32.711
3 14 オリビエ・グルイヤール オゼッラフォード 1'33.181
4 30 鈴木亜久里 ローラランボルギーニ 1'33.331
DNPQ 17 ガブリエル・タルキーニ AGSフォード 1'35.420
DNPQ 18 ヤニック・ダルマス AGSフォード 1'35.481
DNPQ 34 クラウディオ・ランジェス ユーロブルンジャッド 1'37.399
DNPQ 39 ゲイリー・ブラバム ライフ 2'07.147
DNPQ 31 ベルトラン・ガショー コローニスバル 5'15.010

予選結果

順位 No ドライバー コンストラクター タイム
1 28 ゲルハルト・ベルガー マクラーレンホンダ 1'28.664
2 23 ピエルルイジ・マルティニ ミナルディフォード 1'28.731 +0.067
3 22 アンドレア・デ・チェザリス ダラーラフォード 1'29.019 +0.355
4 4 ジャン・アレジ ティレルフォード 1'29.408 +0.744
5 27 アイルトン・セナ マクラーレンホンダ 1'29.431 +0.767
6 20 ネルソン・ピケ ベネトンフォード 1'29.862 +1.198
7 1 アラン・プロスト フェラーリ 1'29.910 +1.246
8 14 オリビエ・グルイヤール オゼッラフォード 1'29.947 +1.283
9 5 ティエリー・ブーツェン ウィリアムズルノー 1'30.059 +1.395
10 8 ステファノ・モデナ ブラバムジャッド 1'30.127 +1.463
11 3 中嶋悟 ティレルフォード 1'30.130 +1.466
12 6 リカルド・パトレーゼ ウィリアムズルノー 1'30.213 +1.549
13 25 ニコラ・ラリーニ リジェフォード 1'30.424 +1.760
14 24 パオロ・バリッラ ミナルディフォード 1'31.194 +2.530
15 29 エリック・ベルナール ローラランボルギーニ 1'31.226 +2.562
16 33 ロベルト・モレノ ユーロブルンジャッド 1'31.247 +2.583
17 2 ナイジェル・マンセル フェラーリ 1'31.363 +2.699
18 30 鈴木亜久里 ローラランボルギーニ 1'31.414 +2.750
19 12 マーティン・ドネリー ロータスランボルギーニ 1'31.650 +2.986
20 10 ベルント・シュナイダー アロウズフォード 1'31.892 +3.228
21 9 ミケーレ・アルボレート アロウズフォード 1'31.948 +3.284
22 19 アレッサンドロ・ナニーニ ベネトンフォード 1'31.984 +3.320
23 7 グレガー・フォイテク ブラバムジャッド 1'32.398 +3.734
24 11 デレック・ワーウィック ロータスランボルギーニ 1'32.400 +3.736
25 15 マウリシオ・グージェルミン レイトンハウスジャッド 1'32.904 +4.240
26 16 イヴァン・カペリ レイトンハウスジャッド 1'33.044 +4.380
DNQ 35 ステファン・ヨハンソン オニクスフォード 1'33.468 +4.804
DNQ 21 ジャンニ・モルビデリ ダラーラフォード 1'34.292 +5.628
DNQ 36 J.J.レート オニクスフォード
EX 26 フィリップ・アリオー リジェフォード 1'31.664 +3.000
出典[1]

決勝

スタート

決勝も曇天で寒い中、路面温度が上がらないコンディションでスタートした。ポールポジジョンからスタートしたベルガーは、2番手スタートのマルティニを牽制するラインを取った。その間にアウト側から4番手スタートのアレジが伸び、1コーナーへの侵入でベルガーのインを突き、先頭に躍りでた。2台に続く3番手にはポジションをキープしたデ・チェザリスが続き、4位にはマルティニをかわしたセナがついた。

セナは間もなくデ・チェザリスを抜き3位にポジションを上げた。デ・チェザリス、ピケ、ブーツェン、プロストらが4位集団を形成し、ペースの上がらないマルティニは中段バトルの中でタイヤを酷使し、さらに順位を下げることになった。

中盤

アレジはパワーが無いエンジンでも差が付きにくい市街地コースのレイアウトと、低い路面温度にコンディションがマッチしたピレリタイヤの助けもあり、2位ベルガーとの差を広げてトップを快走した。9周目、ベルガーがタイヤバリアに衝突しストップ、レースに復帰するも最後尾まで順位を下げた。ブレーキを踏んだ際、ブレーキとアクセルのペダルの間に足が挟まるという珍しいミスが原因だった。ベルガーは34周目にファステストラップを記録するも、クラッチの不調により44周目にリタイアした。デ・チェザリスもエンジントラブルで25周目にリタイアし、久しぶりの表彰台獲得はならなかった。

プロストはマシン後方から薄い煙を吹きながらブーツェンをかわし、4番手までポジションを上げるも、セミATギアボックスのトラブルで21周目にリタイアした。チームメイトのマンセルも49周目にクラッチトラブルでスピンし、フェラーリのシーズン開幕戦は良いところもなく終わった。

セナとアレジのバトル

ベルガーの自滅により2位に浮上したセナは、8秒開いていたアレジとの差を徐々に縮めていき、30周目を過ぎるあたりで射程圏内に捉えた。34周目、セナはホームストレートでアレジに並び1コーナーでパスしたが、ライン取りがきつくなり、続く2コーナーでアレジが差し返して首位を死守した。35周目の1コーナー、セナは同じパターンでアレジをかわすと、なおも食い下がるアレジを抑えて首位に立った。

市街地コース特有の直角コーナーで演じられたふたりのバトルは、ホイールとホイールが触れんばかりの接近戦ながら、お互いのスペースをきちんと残したクリーンな競走であった。アレジは切れ味鋭い走りで評価を高め、その後モナコGPでも2位を獲得する。

結末

セナはアレジとの差を8秒あまりに拡げ、1位でチェッカーフラッグを受け優勝。前年の日本GPの失格騒動やスーパーライセンス発給問題で、シーズン前に溜めこんだストレスを晴らす1勝となった。2位は大健闘のアレジ、3位には中盤のプロストやピケとのバトルを制したブーツェンが入った。

4位は前年型B189Bで走ったピケ。5位は予選10位からピケや中嶋とのバトルをかいくぐり、ブラバムのステファノ・モデナがこの年唯一のポイントを獲得した。ティレルに移籍初戦の中嶋は、予選11位から果敢ながら安定したドライビングで6位に入賞しティレルのダブル入賞に貢献した。

予選2位に入り、あわや優勝かと思われたマルティニは結局入賞圏まであと一歩の7位に終わった。8位にはラルースのエリック・ベルナール、9位にはウィリアムズのリカルド・パトレーゼ、10位にはこの年からアロウズに移籍したベテランのミケーレ・アルボレートが入った。この年よりラルースに移籍した鈴木亜久里は終盤7位まで浮上したが、残り20周でブレーキトラブルでリタイアした。出走26台中、完走は14台だった。

決勝結果

順位 No ドライバー コンストラクター 周回 タイム/リタイア グリッド ポイント
1 27 アイルトン・セナ マクラーレンホンダ 72 1:52'32.829 5 9
2 4 ジャン・アレジ ティレルフォード 72 +8.685 4 6
3 5 ティエリー・ブーツェン ウィリアムズルノー 72 +54.080 9 4
4 20 ネルソン・ピケ ベネトンフォード 72 +1'08.358 6 3
5 8 ステファノ・モデナ ブラバムジャッド 72 +1'09.503 10 2
6 3 中嶋悟 ティレルフォード 71 +1 Lap 11 1
7 23 ピエルルイジ・マルティニ ミナルディフォード 71 +1 Lap 2
8 29 エリック・ベルナール ローラランボルギーニ 71 +1 Lap 15
9 6 リカルド・パトレーゼ ウィリアムズルノー 71 +1 Lap 12
10 9 ミケーレ・アルボレート アロウズフォード 70 +2 Laps 21
11 19 アレッサンドロ・ナニーニ ベネトンフォード 70 +2 Laps 22
12 10 ベルント・シュナイダー アロウズフォード 70 +2 Laps 20
13 33 ロベルト・モレノ ユーロブルンジャッド 67 +5 Laps 16
14 15 マウリシオ・グージェルミン レイトンハウスジャッド 66 +6 Laps 25
Ret 24 パオロ・バリッラ ミナルディフォード 54 体調 14
Ret 30 鈴木亜久里 ローラランボルギーニ 53 ブレーキ 18
Ret 2 ナイジェル・マンセル フェラーリ 49 クラッチ 17
Ret 28 ゲルハルト・ベルガー マクラーレンホンダ 44 クラッチ 1
Ret 7 グレガー・フォイテク ブラバムジャッド 39 アクシデント 23
Ret 14 オリビエ・グルイヤール オゼッラフォード 39 接触 8
Ret 22 アンドレア・デ・チェザリス ダラーラフォード 25 エンジン 3
Ret 1 アラン・プロスト フェラーリ 21 オイル漏れ 7
Ret 16 イヴァン・カペリ レイトンハウスジャッド 20 電気系 26
Ret 11 デレック・ワーウィック ロータスランボルギーニ 6 ギアボックス 24
Ret 25 ニコラ・ラリーニ リジェフォード 4 スロットル 13
DNS 12 マーティン・ドネリー ロータスランボルギーニ 0 ギアボックス 19
出典[2]

レース後の選手権順位

  • 注記:ランキング上位5位まで記載。

脚注

  1. ^ ICEBERG USA Grand Prix - OVERALL QUALIFYING”. Formula1.com. 2020年5月6日閲覧。
  2. ^ ICEBERG USA Grand Prix - RACE RESULT”. Formula1.com. 2020年5月6日閲覧。
  3. ^ a b United States 1990 - Championship STATS F1”. www.statsf1.com. 2020年5月6日閲覧。

参考文献

外部リンク

FIA F1世界選手権
1990年シーズン
次戦
1990年ブラジルグランプリ
前回開催
1989年アメリカグランプリ
アメリカグランプリ 次回開催
1991年アメリカグランプリ



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