1986年 - 1990年の北米統計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 00:07 UTC 版)
「解離性同一性障害」の記事における「1986年 - 1990年の北米統計」の解説
一時期の北米での報告には患者のほとんどが幼児期に何らかの虐待、特に性的虐待を受けているとするものが多い。こうした統計で有名なものはパトナムやロス(Ross,C.A.)らの報告がある。ただしこれらの統計は北米に限れば1986年から1990年までで、その後はこうした統計は少なくとも日本には聞こえてこない。 パトナムによる1986年のアメリカの統計報告:調査人数100人、女性92%、児童虐待体験97%(性的虐待83%、近親姦68%、身体的虐待75%)、死の目撃45% クーンズ(Coons,P.M.)による1988年のアメリカの統計報告:調査人数50人、児童虐待体験96%(性的虐待68%、身体的虐待60%、ネグレクト22%) ロス(Ross,C.A.)の1989年によるカナダの統計報告:調査人数236人、女性88%、児童虐待体験89%(性的虐待79%、身体的虐待75%) ロス(Ross,C.A.)の1990年のアメリカとカナダの統計報告:調査人数102人、女性90%、児童虐待体験95%(性的虐待90%、身体的虐待82%) これら北米統計での児童虐待、特に性的虐待の多さに、日本の治療者には疑問をもつ者も多い。何故そうなるのかについては様々な意見がある。例えば北米では日本以上に児童虐待が多いからという見方。そして北米での児童虐待、特に性的虐待に対する関心の高さである(「多重人格概念の復活」の3点の「社会的背景」参照)。 一方で、催眠により回復された記憶は信頼性に問題があり、睡眠療法を行う者の先入観がこれほどの性的虐待症例を生み出したのではないかという意見もある。この意見は日本よりも実はアメリカで強かった。日本の精神科医らが北米統計の取り扱いに慎重なのは次のような一連の騒動の影響もある。日本の感覚では医師が悪魔的儀式虐待などというそんな非科学的な騒動に巻き込まれるはずがないと思うが、当時第一線のDID治療者であったアリソンは『「私」が私でない人たち』の「日本語版あとがき」で、1980年以降15年間のDIDをめぐる精神医学界内部での三大論争に、多重人格障害から解離性同一性障害 (DID)への名称変更とともに、以下の「悪魔的儀式虐待論争」「偽りの記憶論争」をあげている。
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