高LDL-C血症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/22 15:34 UTC 版)
HMG-CoA阻害薬であるスタチン系の使い方を中心に述べる。まずは高LDL血症をみたら、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、ステロイドの使用の除外を行う。これらによる二次的な増加は原疾患のコントロールが優先される。特に甲状腺機能低下症に注意が必要である。高LDL血症の治療方針は急性冠症候群の一次予防か二次予防か、冠疾患のリスクファクターの該当数によって大きく異なる。一次予防で考慮する冠疾患リスクファクターは6つある。加齢(男性ならば45歳以上、女性ならば55歳以上)、高血圧、糖尿病(耐糖能異常を含む)、喫煙、冠動脈疾患の家族歴、低HDL-C血症(HDL-C<40mg/dl)がリスクファクターである。リスクファクターの該当数が0個ならばⅠ(低リスク群)となりLDL<160mg/dl、2個以内ならばⅡ(中リスク群)となりLDL<140mg/dl、3個以上ならばⅢ(高リスク群)となりLDL<120mg/dlにコントロールする。すでに急性冠症候群を起こしている場合は主要冠危険因子数に関係なくLDL<100mg/dlにコントロールするようにする。一般に血清LDL-C濃度は食事時間に依存しないため随時採血で十分である。まずは生活習慣の改善を行い、目標値よりも50mg/dl以上大きければストロングスタチンと言われるリピトール (Lipitor)、リバロ、クレストールといったものを用いて、目標値より30mg/dl以下の場合はスタチンであるメバロチンやリポバスを使用する。薬物相互作用が気になる場合はメバロチン、リバロが選択されることが多い。相互作用はマクロライド系抗菌薬、アゾール系抗真菌薬、カルシウム拮抗薬など多岐にわたる。 物質名商品名用量(mg/day)性質腎排泄半減期(hr)チトクロムP450薬物相互作用強度プラバスタチン メバロチン 5~20 水溶性 60% 1.8 なし 少ない 弱い シンバスタチン リポバス 2.5~20 脂溶性 13% 2 CYP3A4 多い 弱い フルバスタチン ローコール 10~60 脂溶性 6% 0.9 CYP2C9 多い 弱い アトルバスタチン リピトール 5~40 脂溶性 2% 13~16 CYP3A4 多い 強い ピタバスタチン リバロ 1~4 脂溶性 <2% 10 CYP3A4(ごく軽度) 少ない 強い ロスバスタチン クレストール 2.5~20 水溶性 10% 20 なし 少ない 強い スタチン単独で目標のLDL値に達しない場合は併用薬を用いる。小腸コレステロールトランスポーター阻害薬であるエゼチミブ(ゼチーア)10mg 1×やレジン(陰イオン交換樹脂)であるコレスチミド(コレバイン)などが用いられることが多い。レジンを使用する場合は併用薬の吸収を阻害するため、併用薬はレジン内服の1時間以上前または4時間以降に内服となる。スタチン内服後も高TG血症がある場合はイコサペント酸エチル Ethyl eicosapentaenoic acid (EPA)であるエバデールS600 3C3×を使用する。 重大な副作用としては肝障害と骨格筋障害が知られている。筋肉痛といった症状が出現することが多く、筋炎や横紋筋融解症は極めて稀である。筋疾患や甲状腺機能低下症が認められる場合は横紋筋融解症のリスクが高まるため注意が必要である。高齢者や肝機能障害、腎機能障害がある場合も注意が必要である。
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