高分子無機ポリリン酸塩
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/06 03:18 UTC 版)
「ポリリン酸」の記事における「高分子無機ポリリン酸塩」の解説
高分子無機ポリリン酸塩(こうぶんしむきポリリンさんえん、英: high-polymeric inorganic polyphosphates)は1890年に生物から L. Liberman によって発見された。その化合物は直鎖のポリマーでエネルギーに富むリン酸無水物結合によって結合した数個から数百個のオルトリン酸残基を含んでいた。 以前は、この化合物は「分子化石」またはただのリン酸塩であり、極限環境下で微生物が生き残るためのエネルギー源を供給しているに過ぎないと考えられていた。この化合物は現在、調節の役割を持ち、すべての界の生物で見られ、代謝の補正および遺伝子と酵素のレベルでの調節に関与している。ポリリン酸塩は、対数増殖期のバクテリアに特徴的な遺伝子プログラムを、定常状態下での細胞の生き残りに関するプログラムに変える機構に直接関わっている。ポリリン酸塩はバクテリアにおいて次に示すような多くの調節機構に関与している。 ポリリン酸塩は rpoS(定常期と多くの有害な薬剤への対応に関与する、大きな遺伝子群の発現の原因となるRNAポリメラーゼのサブユニットをコードする遺伝子)の誘導に関与する。 ポリリン酸塩は細胞の運動性、バイオフィルム形成および感染性にとって重要である。 ポリリン酸塩とエキソポリホスファターゼはバクテリアの細胞内の情報伝達因子である緊縮応答因子(グアノシン四リン酸 (ppGpp))の量の調節に関与している。 ポリリン酸塩は生物の細胞膜を貫くチャネルの形成に関与する。上で述べたチャネルはポリリン酸塩、ポリヒドロキシ酪酸塩、および Ca2+ からなるが、様々な生物での輸送過程に関与している。 微生物-原核生物と下等真核生物-におけるポリリン酸塩の重要な機能はリン酸とエネルギーの貯蔵庫として働くことで変化する環境に適応することである。ポリリン酸塩は動物細胞にも存在し、発生の過程の調節や、特に骨と脳における細胞の増殖と分化に関与する多くのデータがある。 ヒトでは、ポリリン酸塩は凝血に重要な役割を持つことが知られている。血小板によって産生され、放出されたポリリン酸塩は、血餅形成に不可欠な第XII因子を活性化する。さらに、血小板由来のポリリン酸塩は、フィブリン形成を開始する血液凝固第XII因子(ハーゲマン因子)や前炎症性メディエータの生成、および血管や血栓症からの滲出に寄与するブラジキニンを活性化する。
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